第28話 エレンの訓練



「…………そんな事があったのか」


「うん。そうだね」


一瞬コイオスの転生先は俺かと思ったが、よく考えたら、俺日本人なんだよな〜。やっぱ違うのか。

……エレンに意外と悲しい過去があることにビックリした。

いつもの笑顔の裏側を知ったような気がした。


「まぁ、でもそんな暗い顔しなくても大丈夫さ。…………アイツらは生きてる。必ず生きてる。少なくとも俺はそう思う」


「…………そうだな」


俺は100%死ぬと言われているのに何故そんな事を確信できるのかと疑問に思った。

でも、そんな事は言わなかった。

いや、言えなかった。


この事を話しているエレンの背中がとても、たくましいように、悲しいように見えた。


「なあエレン?」


「ん?どうした?」


「俺もエレンの仲間を探すの、手伝ってもいいか?」


「…………勿論さ!!」


俺は初めて、エレンの心からの笑顔が見れたような気がした。


「じゃあ特訓しなくちゃね!今の君にできることは僕にもできるからね」


「悲しいことに、そうだな」


「じゃあレオン?いつまでここに居れる?」


「う〜ん…………家に帰るまでの時間をあわせて、明日の夕方までかな」


「明日の夕方までか……じゃあ今日は簡単なヤツをしようか」


「簡単なヤツ?」


どんなやつだ?フフッ、イオさんの訓練に耐えた俺に不可能は無いぜ!


「じゃあレオン、さっき覚えた『鬼炎化』やってみて」


「わ、分かった」


鬼炎化メッチャしんどいんだけどな……ちょっと気が緩んだら肌が燃えるというか…………まぁ、気が緩まなくても一分弱経てば強制的に体が燃えるんだけどな。


鬼炎化 発動


「…………発動させたぞ」


「オッケイ。いい感じだね。……じゃあ追加で身体強化を掛けてみようか」


追加で身体強化!?


「え〜と…………流石に死ぬんですが?」


「頑張って!」


「いや、でも死ぬ「頑張って!」…………はい」


魔法を同時に使うとか精神をメチャクチャすり減らすし、今までできた事も少ない。


「大丈夫。鬼化と火魔法を合体させた魔法を使えれるんだから簡単さ!」


…………本当か?


身体強化 発動


「――――ウグッ!!」


ヤバい、魔法を同時に使うなんて感覚が掴めない……!

体が燃える様に熱い…………


そして俺は意識を失った。




ーーーーー





「ウッ…………ここはどこだ?」


確かキチガイイケメンに虐待を受けて……


「誰が虐待だよ……そんな事が考えられるようなら大丈夫だね」


「何で俺が思ったことがバレたんだよ……次は何をするんだ?ちょっとは休ませてくれよ?」


何度やっても燃やされる感覚には慣れないな。


「何言ってるのさ?さっきのをずっと繰り返すんだよ?」


「…………へ?」


何言ってるんだこいつ?


「大丈夫!やれば、できる!」


必ずしもやればできるわけではないんだよ!

……全く。どこの芸人だって言うんだ。


「じゃあ早速やってもらおうか」


「……できるわけねぇだろ!!」


「まぁまぁ、燃えても回復ぐらいはしてあげるから」


「……お前マジで性格悪いな」


なんでこんな性格悪いやつがイケメンなの?


「いや〜ね?僕も心苦しいんだよ?……はぁ、心苦しい」


「その割には満面の笑みなんですが!?」


ホント最悪だぁぁぁ!!


(君は気絶した時に直前の記憶が吹き飛んだかも知れないけど、気絶するまで、鬼炎化と身体強化、どっちも二分間保っていたんだよ?……これからが楽しみだ)


俺の知らない間にエレンは密かにこう思っていた。





ーーーーー





「凄いね!よく訓練に耐えたよ!実際、半日で辞めるぐらいのメニューを組んだのに、まさか一日以上続けるなんて」


「そうだな」


ヤバい。訓練のし過ぎで頭がおかしくなりそうだ。


「大丈夫。安心して。流石に次からの訓練これほどしんどいやつはやらないから。すぐ体が壊れてしまうからね」


「そうだな」


あ〜。早く帰りたい。


「おし!じゃあもう帰って、2日後、また来て」


「そうだな」


…………帰ろ。





ーーーーー





「ご主人さま。大丈夫です。多分私達でも退治できますゆえ」


「大丈夫だ。ちょっと体を動かしたかった気分でな」


こんな会話が家の前から聞こえてきた。


「ん?どうしんたんだ?」


「…………お前、レオンか?」


「正真正銘レオンだが?」


「……使用人たち。俺の勘違いだったみたいだ。仕事に戻る」


「「「「は!」」」」


ん?何があったんだ?


「なぁお前ら。何があったんだ?」


「いや、それが、ケイン様が突然「もしかしたら盗賊が来たかもしれん」と言い出しまして。最近港で盗賊の噂が立ってまして。それで気が立ってるのでしょう」


ふ〜ん。そうなんだ……もしかして俺のことを盗賊と同じぐらい強いと思った?

それだったら嬉しいな。


「使用人たち。もう眠いから就寝の準備を」


「「「「分かりました」」」」



「おいお前ら!また準備室に大量の💩があるぞ!!」


「なんでなんだよ!」


やっべ。消すの忘れてた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


これにて一章終わり!!

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