第27話 エレンの過去 2



「何!?ディオネが邪神の所え行った!?」


この豪華な部屋に僕の尊敬する者の大声が響いた。


「は、はい!私達が止めようとしたのですが、私の部下が半壊しまして……」


「クソッ!こうなるのが嫌だからここまで帰ってきたのに!」


僕達がいるここは英雄の街と呼ばれる所にある、大きな城だ。

数日前まで、邪神と戦っていたが、…………いや、戦いとは言えなかった。アレは虐殺だ。

それほどの事をいえるまで、完膚なきまでにやられた。

そのせいで、俺達の軍は半壊。

俺達の仲間も何人かが散っていった。


「おい!お前ら!準備をしろ!……邪神の所に行くぞ!」


「……今すぐ行くんじゃなくて、もうちょっと準備してから行ったほうがいいんじゃない?」


「だめだ!今すぐ行かないとアイツが死んでしまう!……もしかしてお前、アイツの事がどうでもいいのか?」


コイオスが怒鳴るように言った。でも、それは悪手だった。


「そういうことじゃないよ!…………どうしたんだコイオス。邪神に負けてからここ最近、ちょっと様子がおかしいぞ?」


そう。最近、コイオスの様子がおかしい。よく目にクマができ、よく一人でブツブツと呟いている。

しかもディオネと喧嘩をしているときた。


「コイオス。俺もお前は最近おかしいと思う。それでも行くなら俺は全力で止めるぞ」


…………今のは誰かというと。……僕だ。

まぁ誰にでもそういう時期はある。


「ハッ。お前に俺が負けた事があるか?お前に全力で止められても、俺は行くぞ」


「クッ」


そうだ。僕は今までコイオスに勝てた事がない。


「そこまで言うなら!私も連れて行け!!」


そこに、一人の科学者が口を挟んだ。


「……じゃあ皆で行こうか。ディオネを助けに」


「は?お前みたいなただの科学者が来れるわけねぇだろ」


「あっれれ〜?その科学者に勝てた事が無いクソ雑魚さんはどこのどいつでしたっけ?」


「クソッ」


……僕は今まで、この科学者に勝てた事がない。…………僕戦闘員なんだけどね。


「…………よし、行くぞ。邪神を殺しに」


「「「「おう!」」」」


……僕達はまだ楽観視していたんだ。魔王の強さに。たった一人の女性の弱さに。





















「…………どういう事だ…………邪神!!」


「どういうこういうも無いだろう?ただ俺に襲いかかってきた虫を殺しただけだろ?」


そこには、邪神と…………胸にぽっかりと穴が空いた勇者がいた。


「いや〜想像以上の強さだよ勇者は。つい最近あった時より強くなっている。……………でもね、俺が君のについて話したらすぐ動きが鈍くなってね?そしたらこのザマさ。いや〜面白かった」


「お前……どこでその情報を!!…………ぶっ殺してやる」


「コイオス!少し冷静になれ!また立て直して挑もう!邪神の力は想像以上だ!…………おい、待て!コイオス!」


コイオスはアステリアの話に見向きもせず、邪神に向かっていった。


「……仕方がない。俺達も腹をくくるか」




ーーーーー




戦いは激戦を極めた。…………が、


「う〜ん。君たちは想像以下だね。まだまだ弱いよ」


もうすぐ、決着がつこうとしていた。


僕達の死という結果で。


…………でもまだ僕には秘策があった。


「クソッ!!……でもまだ俺は戦うぞ!これじゃあアイツが報われない!!」


「なぁコイオス?」


「なんだエレン!?…………もしかしてこれ……やめろエレン!!」


「無理だコイオス。は俺の制御下から外れている。……もう変えれない」


「何故だ?お前にを使える魔力がなかったはずだ」


「……今、邪神が膝をついているのが見えるか?」


「クッ…………どういう事だ?俺が膝をつくだと?」


「お前を倒し切れないのは残念だよ。でも、お前の魔力をすいとってを作らせてもらった。これ程の魔力を吸い取ったんだ。さすがのお前も封印を余儀なくされるだろう?」


「でもそれは一時期の平和だけだ!」


「その一時期の平和が確保されるんだろう?俺達の勝ちだ。……そろそろ魔法を発動させるか」


「やめろエレン!この魔法、を止めろ!」


「無理だね。今お前にこのまま戦わせるよりか、未来に託したほうがずっといい」


「……ハハッ。コイオスだけじゃなく、アステリアと、ガスティア、俺さえも転移転移させるとは。こりゃあ戦うよりこっちのほうがまだ現実的だ。でもこの魔法は100%失敗すると言われた魔法だけどな。コイオスも冷静になれ」


「黙れテセウス。…………エレン。俺に一方的にこんな事をしたんだ。ちょっとぐらいの意地悪は許されるよな?」


「なんだ?」


コイオスは意地の悪い顔をしながら言った。


「なぁに、ただお前が俺が言っても意地でも聞かない事をやってもらうだけさ。

お前の口調を俺から僕にして、柔らかい口調にしろ」


「はぁ?なんで俺が?」


「俺じゃないだろ?」


「分かった。俺の口調…………の口調はこうするよ」


「そっちのほうが気が抜けていてよっぽどいい」


この時はホント最悪だと思ったよ。


「……邪神。直接お前に手を下せずに残念だ。でも必ず、お前の事を倒してみせる。来世の自分がな」


「させるか!お前を転生なんかさせるか!」


「リディアァ!俺が必ず、お前の事を助けてやる。何百年、何千年かけても…………そして邪神。お前事は必ず、殺す」


そう言って、コイオス達四人は消えていった。

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