第24話 お前は……



あのゴブリンキングから棒をこちらに振ってくる。

今来ている棒の攻撃を避ける。

すると、また次の攻撃がくる。


まずいな……このゴブリンの攻撃が早すぎて、避けきれず、少しずつHPが減っている。


万全の状態なら避けられなくもなかったが、さっきのゴブリンの攻撃で体に力が入りにくくなっている。

無理して避けようとすると、反動で次の攻撃を食らってしまう。

そうなったら死しか待っていない。


今までで魔物相手に感じた事がなかった、人と戦う感じ。

幸い、ゴブリンは俺ほど頭は良くないため、相手の裏を取ってちょっとした反撃ならできるが、そんな事相手に取っては些細なことでしかない。


相手は反撃を食らっていてもピンピンしているが、俺は相手の攻撃を一発でも食らうと死ぬ。このパワーバランスを崩してはならない。


「ファイヤーランス!」


十個発動して、集中放火!


「ウグゥ……」


クソッ!全然攻撃が効いていない!


「――――ッ!!ウゥゥ……」


ヤバい!MPの使い過ぎで頭が痛い。


「ファイヤーシールド!」


危ない……もうちょっとで頭を潰されているところだった。


ファイヤーシールドは効果が切れるのが早い。それが強敵相手だったら尚更だ。


うお!急に棒が飛び出してきた。


さて、どうしようか。

反撃の狼煙になりそうなものは…………


《熟練度が一定に達しました。思考加速が5⇨6になりました》


よし!相手の動きが少しゆっくりに見えてきた!

これなら………………切り札を!


鬼化発動!


「ウオオオオォォォォォ!!」


相手は俺の突然な素早い動きに対応できなかった…………………………はずだった。


「嘘……だろ……?」


そこには少し腕が切れていたゴブリンが居た。


「あの攻撃でその程度だと………………ハハッ、勝てないに決まっているだろ……」


あの攻撃でその程度なら、もう勝てるはずがない。


「殺せよ…………早く……」


もう負けだ。


「グフォォォォ!」


じゃあな、皆。


……そこは、轟音が鳴り響いた…………

















「………………なんて言うと思ったか?」


俺は自分の左腕にファイヤーボムの術式を張っていた。


「いや〜賭けだったがな。上手く行ってよかった」


俺の魔法の腕はまだまだ未熟で腕に魔法の術式を、相手との攻撃にピッタリ合わせて張らないと、腕が勝手に爆発して終わる。


…………まぁ、成功してもファイヤーボムの術式なので爆発して、もう左腕が使い物にならないけどな………………


「俺はもう虫の息だ。………でも、お前もだろ?」


なぁ、ゴブリン。


…………俺はスキルを解いて近寄った。


「グヲヲヲオオォォォォォォォォ!!!」


「―――――ッ!!」


……なんだこの威圧感は?お前はもう、ボロボロのハズだろ?


種族 ゴブリンキング

レベル 24

HP  183/3420

MP  1700/1700

筋力  3965

耐久  3640

魔力  1350

速さ  2950

知力  1640

精神力 2850

1

状態異常 王の意地


スキル

棒術|5

土魔法|4

王の覇気|6

HP自動回復|9

MP自動回復|1

ゴブリン|7

土耐性|6

火耐性|2

気配隠蔽|2

打撃強化|4

王|4


称号

『ゴブリンを統べる者』


状態異常 王?何だそれは?



状態異常 王


自分の命と引き換えに力を引き出す能力


自分のMPを全部HPに変換。

自分のステータス1.5倍



こいつ、もう死ぬ気なのか?


…………まぁいい。こいつのMPを全部削り切ったらいいだけの話だ。



身体強化

思考加速

視覚領域拡張

感覚領域拡張

鬼化      発動



さぁ、最後のバトルだ。




ーーーーー





あれからどれほどの時間が経っただろうか?


一時間?

十分?

又はそれ以上かも知れない。


ただ分かるのは、俺達の攻防にはもうすぐ終幕が来そうだということ。


両者もう満身創痍だ。


俺はこの戦いで魔法のコツが上がった気がする。

なんだろうな。

今なら何でもできそうな気がする…………





……凄い。身体能力が格段に上昇した気がする。

でもこの技は体が耐えれそうにない。

今ならせいぜい…………一分弱といったところだ。


………ゴブリンの棒を軽々と避けれている。反撃したら明確に相手にも効く。

でも、体が焼けるように痛い。


「じゃあなゴブリン!お前は強かった!」


今の俺の全身全霊の一撃を!


「鬼炎斬!」


「グヲオオォォォォ!!」


……やっと勝てた。


…………今が喜ぶ体力もなく、ただただ勝った事実を噛みしめるだけだった。


「ミゴトダッタ……」


「――――ッ!!」


……ゴブリンが喋った?


もしかして、『王』の効果で知力が上がっているおかげなのか?


「サラバ、キョウシャヨ……」



……もしかしたら、使がある。


「成功してくれ…………」


頼む……



「従魔化」



《ゴブリンキングを従魔化しました》


よし!


《名前を付ける事ができます。名前を付けますか?》


…………そうだな……名前か……


そうだ。


「お前は戦車の様に固く、力強かった。だからお前の名前は『ルーク』だ」


《ルークを従魔化しました。》


よろしくお願いな、ルーク。


「……ココロエタ…………」


そしてルークは塵の様に消えていった。


「……でも、お前を召喚する機会はもう無いと思うけどな…………」


「ギビッ!」


「ギュルルゥ!」


「ギャラギャロッ!」


俺はゴブリン達に囲まれていた……


「じゃあな現世」


来世でもまた、この世界に生まれますように…………



「「「ギュギャアアアァァァァァ!!」」」


…………なんだ?


「凄いね。呪いがかかっている状態で、しかも五歳でゴブリンキングを倒すなんて。でも、現世を諦めるなんてナンセンスだよ」


「……誰だ?…………いや、もしかして…………」


お前はあの時、俺を男!!


「エレン!!」


「ヤッホ〜。元気にしてた〜?」


さっきまでの殺伐とした空気に似合わない声がした。

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