第11話 代官山
朝になって目が覚めると、チュン、チュン、スズメが鳴いている。いつも早口で急かしてくる小鳥たちはどこかへ行ったようだ。朝日がカーテンの隙間から差し込む。ベッドから起きると軽く背伸びをした。
それからいつものように、トーストを焼いて、卵を茹でる。コーヒーを入れるためにお湯を沸かす。
お湯が沸くまでの間、自然と体が音に合わせて陽気に動く。ぼんやりと周りに影のような存在を感じる。救われた労力たちが一緒に踊っているのだろう。
不思議とコーヒーはいつもより薄い味がした。
あれ以来、悪夢を見ることはなくなった。
実はあのあと仕事に行くと、上司から職場の異動を告げられた。会社のプロジェクトは一定の成果を得たので取りやめになったらしい。
僕は次の出向先が決まったのでしばらく待機している。そうだ、久しぶりに映画でも見に行こうかな。それからオープンカフェに行って映え映え写真でも投稿しよう。スタンドタイプのシックな石造りのカフェの隅っこでパソコンを開いて作業するのだ。イケてる観葉植物を愛でるのだ。僕のリア充を最大限にアピールしてやる!そう唱えるとテンガロンハットと縞模様の綿シャツ、それからカシミアのカーディガンを取り出し、色眼鏡をかけて街にでた。
今僕はバスを降りて、キラキラと輝く朝日の中を歩いている。
psycho-battle @darefumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。psycho-battleの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます