第10話 赤坂

一瞬目が醒めるとそこはいつもの朝ではなかった。さっきと同じ場所だ。

やけに意識がはっきりしている。遠くで声が聞こえる。何だか騒がしい。


怪獣から伸びた数十本の触手に女の子たちが吊るされている。みんな我を忘れたように絡み合っている。いや、よく見るとあれは男なのか。性別はよく分からない。中にはバス停で会った子や昼間騒いでいた女子高生たち、ジムで見かけた子もいた。

触手は羽毛のようなひだのようななんとも気持ちの良さそうな形状をしている。縛られた女の子たちは身動きが取れないのだろう、体をうねらせて逃れようとしているが抵抗できないみたいだ。触手の先が口の中やももを這ってモゾモゾと動いている。声が脳に直接響いてくるようだ。声の中にやめて、助けて、小さく聞こえる。なんてこった。


このままでは落ち着いて家で寝ることができない。何だか怒りが込み上げてきたぞ。俺はこの日のために鍛えてきたのかもしれない。ジムで鍛えた下半身に力が宿る。シコを踏むようなポーズで呼吸を整える。手刀を二発、怪獣の両側に放つと触手が切断された。触手から逃れた女の子はスヤスヤと眠りについた。あとは怪獣がここからいなくなればいいんだな。



霞ヶ関まで吹っ飛ばしてやる!



怪獣めがけて全力で駆け出した。全身に力を込めると何やら体が光っている。質量×速度が力である。体は鋼鉄のように重く、速度は光のように速い。

その勢いのまま、体を投げ出し両足を放つ。ドロップキックだ。強烈な衝撃波で壁が振動する。

怪獣はいくつかのビルの間をピンボールのように跳ね返りながら、はるか遠くのビル群に消えていった。


僕は全身から力が抜けていくのを感じた。深く呼吸し、そのまま眠りについた。あの女神様は一体誰だったんだろう。

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