第9話 光線

怪獣は無表情で立っている。


口から何かモヤモヤしたものを吐き出している。

あれは、吸い取ったみんなの労力をいとくずのように吐き出している。


呪詛のような、呪いの力である。


怪獣の光線に周りを囲まれてしまった。全方向からいとくずが飛んでくる。いとくずは脳に入り、体の自由を奪っていく。思ったように体を動かすことが出来ない。何だか呆然とする、体から力が抜けていくようだ。光線の効果は無力化であった。



僕の攻撃は怪獣の胴体を貫き、首をはね落とした。確かに手応えはあったんだけど、じゃあ今立っているのは何故なんだ?


もう一度!


僕は思いっきり力を込めてナイフのように右手を首にぶつける。怪獣の首などはスイカ割りのようにいびつに砕け飛んでしまうだろう。ゴツっと確かに手応えがあった。ダメージはあるはずだ。


しかし、次の瞬間。怪獣の無表情な顔がこちらを見ていた。一瞬で再生した!おそらく簡単に再生できる身体なのだろう。コアがどこかにあるのか、ここではないかもしれない。攻撃のダメージはあったとしても、倒す程あるいはしりぞける程ではなかった。このまま攻撃を続けても同じことの繰り返し、怪獣を倒すことにはならない気がする。あるいは同じことを繰り返すのは危険だと察した。パターンを読まれれば相手の反撃を受けやすい。ここは慎重に行動すべきだ。


僕は距離を置き、ビルの後ろに隠れて相手の様子を伺った。あまり速く動く感じではないし、こちらを追ってくる感じでもない。走れば僕の方が速い。別にこのまま逃げても構わないし、じっとしていればどこかに姿を消してくれるかもしれない。とにかく様子を伺ってみよう。


特に物音もしなかった。ただ動かず静かに時を過ごしていると、段々と体が浮いているかのような、フワフワした感覚に包まれていく。身体から力が抜けて気力が無くなっていくのを感じた。むしろ心地良く、気持ちがいい。もう終わったのか?怪獣はいなくなったかもしれない。このまま寝ていれば朝が来るだろう。僕は考えるのを止めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る