第2話 渋谷

家はマンションに住んでいる。9階に住んでいる。家賃は60000円で1LDK。駅近で便利な所だ。家の前に公園がある。場所柄もあり結構夜は騒がしい。騒がしいのは嫌いではないが、公園を走るスケボーの音には辟易としている。


夜になると気分を落ち着けてから眠る。寝る前にあまり激しい音楽やゲームはしない。映画も見ない。ドラマも見ない。アニメを少し見るぐらいだ。性別は男であるが、ボディシートで体を拭いたり、良い匂いのするパックを付けたり、アロマの香りのする加湿器を付けたりしている。これが気分を落ち着けてくれる。


ベッドでは寝るというより、休むといった感覚が近い。睡眠が浅いのである。だいたい夜中の3時ぐらいに目が覚めてしまう。それから寝ようとするが熟睡はできない。朝の5時ぐらいにはもう起きている。それからウトウトとする時間を過ごす。起きているがベッドを出る訳ではない。夢うつつといった感覚か。睡眠と覚醒を繰り返すのだ。その間に悪夢を見る。


毎日悪夢を見る。悪夢というのは見たくもないものを夢で見ることだ。気持ちの悪い生物、行きたくない場所、会いたくない人、強盗や怪人に襲われることもある。


目の前にモヤモヤとしたものが浮かんでいる。ナメクジか、カタツムリか、殻はついていないのか、うねうねと触覚を動かしている。

昼間はものすごく頭が痛かった。まるで鈍器で後頭部を殴られているかのようだった。ハイキックか、延髄蹴りか、頭を蹴られている。重い痛み。このまま痛みが続けば、僕はこの場に倒れて死んでしまうのではないか。そう思わせるほどの痛み。


そんな時はイメージする。手の先から鋭いベクトルを放つ。当たれば相手を斬りつけるようなベクトル。肌を斬りつける。相手の鼻の頭を殴る。何もせずにじっと耐えるよりは幾分かマシなのである。体に力を入れて相手に強くぶつける。そんなことをイメージしつつ、その場を離れる。後頭部が痛い時はよく移動する。これもじっとしているよりマシなのである。


購買にでも行ってこよう。あと二時間で、今日の仕事も終わる。

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