第3話 写真を撮ってツブッターに上げてみよう

学校に行く時間だ。

朝食を食べ終わった俺は、妹と一緒に登校していた。


「まさか由愛にフォロワーが5万人もいるなんてなー」


「お兄ちゃんが少ないだけだよ。5年もやってるのに776人って。毎日つぶやいてたら、普通に増えるよ」


毎日か。

俺がつぶやくのはごく稀にだ。

よっぽどの事がないとつぶやいていない。


「それでも5万は多すぎだろ」


「まぁ、クラスでも多い方だけど、それでも毎日やってたら1万は超えるよ」


そんになにか!


「そんなにやってない友達でも5000とかかな」


「まじか・・・」


「まじだよ!」


由愛はまじめな顔で言った。

すると由愛は立ち止まった。


「せいぜい頑張りたまえ!」


そんな言葉を残して、由愛は中学に向かうべく、別の道に別れた。

日頃からツブッター使うの意識した方がいいのかな。

今まで、そんな積極的につぶやいたことはないが、これからは細かいことでも頻繁につぶやいていこうかな。

そんなことを考えてると、猫がとぼとぼ歩いており、こちらに警戒の目を向けている。


「よし・・・!」


すぐに実践してみよう!

そう思い立った俺は、スマホで猫の写真を撮り始めた。

飼い猫だろうか、スマホを向け近付いてもビクともしない。


カシャッ


(この角度違うな・・・こうか!)


カシャッ


(いやいや・・・こうだ!)


カシャッ


静かな道に、異常なほどのシャッター音が鳴り響く。


「ちょっと、何あれ?」


「異常じゃない?」


おばさん連中がこっちを見てひそひそ話をしている。

うん・・・丸聞こえ!

むしろひそひそ話の方が響いてよく聞こえる。

それでも気にしない。

自分が納得する1枚を撮るまでは。

そうしていると、猫はこちらに近付いてきて、横になりお腹を見せてくる。


これだ!


カシャッ


納得の1枚を手に入れることができた。

そんな写真を提供してくれた猫にはご褒美だな!

愛情たっぷりで撫でまわしてあげることにした。


「よ~しよし!おかげでいいのが撮れたぞ!」


するとなぜか猫は飛び起き、走り去ってしまった。

・・・なぜなんだ!

すると後ろから声がかかる。


「よお!山田!!」


俺はビクッとした。


「なんだ・・・須藤かよ」


彼は須藤すどう 隆司たかし

髪は赤色で身長は高めだ。

彼は、高校1年の時に出来た話し相手だ。

友達というものかもしれない。


「お前さっきから何やってるんだよ?思いっきり不審者だぞ?」


ちょっとひくつきながら笑っていた。


「もしかしてお前・・・盗撮か?」


「なんでだよ!」


俺は盛大に突っ込んだ。


「猫がいたから写真撮ってたんだよ!」


するとがっかりした様子で


「なんだ猫かよ・・・」


「俺が猫撮っちゃ駄目なのか?」


「駄目じゃねえけど・・・かわいい女の子撮ってたんなら写真送ってもらおうと思ってたのによ」


とてもがっかりした様子だった。


「俺はお前が怖いよ・・・」


「なんだよ!彼女出来ないんだから、かわいい女の子写真に収めて画面越しに愛でる何がいけないんだよ!女の子に迷惑かかってないだろ!!」


・・・普通にやばい奴じゃん!


俺は無視して早歩きで学校に向かうことにした。


「って、ちょっと待てよ!置いていくなよ!」


「友達と思われたら嫌だからな、置いて行こうと思ったんだよ!」


「ひでえ~」


俺は歩きながら、先ほどの猫の写真をツブッターに上げようとしてた。


「お!なんだよ山田もツブッターやってんのかよ!」


「え?須藤もやってんのか?」


「当たり前だろ!今の時代、みんなツブッターやってるぜ!やってないのはお前ぐらいだと思ってたわ」


まぁ確かにそんな人前でツブッターやらないけど、そうか・・・ツブッターやってるのは当たり前か。

そして恐る恐る聞いてみた。


「なあ・・・須藤」


「なんだ?」


「お前フォロワー何人よ?」


俺はお前を信じてるぞ。

俺より少ないと!


「まぁざっと8000かな」


俺は膝から崩れ落ちた。


「おいどうした?」


俺はこんな奴にも負けたのか・・・。


「なんでそんなにフォロワーいるんだよ?」


「はまってるスマホゲームのチームに入ったら、これぐらい普通にできるぜ?」


なるほど、そんなフォロワーの作り方もあるのか。


「おまえ、ゲーム好きだもんな」


「おうよ!ガチャ回してレア出たりなんかしたらもう祭りだぜ!」


なるほどね~

でもまぁ


「俺そんなにスマホゲームしないしな~」


「まぁ、少なくてもいいんじゃね?大事なのは質だぜ!」


まぁ、それは俺も同意見だけどね。

俺は、猫の画像と一緒にコメントも上げることにした。


【妹と友達に朝から心ズタボロにされちゃったにゃ~】


よし・・・これで上げよう。

投稿ボタンを押す。

今までこんな投稿をしたことがなかったから新鮮だ。

するとすぐさま、いいねがつき始めやがて、コメントも入ってくる。


【ヤマキさんがこのような投稿されるなんて、心境に変化でもありましたか?】


【相談に乗りますよ?】


【猫の写真朝から癒されました。頑張ってください。】


など、心温まるコメントがすぐに来た。

あぁ、ちなみに俺のツブッターで使ってる名前はヤマキだ。

自分の名前の前と後ろを取って付けた。

山田 和樹→山樹→ヤマキ。

実に安直だ。

だがそれがいいと俺は思って付けたのだ。

おっと・・・またコメントが来た。


【なんですかそれ?久しぶりに投稿したかと思えば、キモイですね。】


お手厳しい。


「そんで、いいね!は、いくつ来たんだよ?」


須藤は楽しげに聞いてくる。


「そこが重要っていう人達もいるぜ。画像付きならなおさらいいね!率高いだろ?」


まぁ、それもそうだろう。

えっと・・・

画面を操作していいね!の数を確認する


「1000ぐらいかな」


須藤はずっこけた。

そして


「えっと・・・お前フォロワー何人だっけ?」


「700だけどそれがどうした?」


俺は疑問に聞き返した。


「いやいやいや、おかしいだろ。なんでこの数十秒でフォロワー以上の数のいいね!がつくんだよ!」


そんなこと言われてもな。


「まぁ、いいね!ってボタン押すだけで簡単だし、こんなもんでしょ!」


俺は簡単に答えてみせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る