第4話 とんだ化け物が身近にいたものだ

学校に着き、2年生となった俺は指定された教室に入る。

2年4組か。

そして俺は指定された窓際の1番後ろの席に座る。

とてもいい席じゃないか、これ以上の席はない!

そう思っていると、なぜか前の席に須藤も座った。

・・・どういうことーーーー!


「お前自分の教室に戻れよ!もうそろそろチャイム鳴るぞ!」


何やってるんだよこいつ、いつも世話が焼けるものだ。


「何言ってんのお前?俺たち同じクラスじゃん!そして俺の席ここ!!」


俺は絶望した。

何冗談言ってるんだこいつ。

また俺は1年間こいつの話し相手にならなきゃいけないのか。

ぶっちゃけ須藤とは、たまに話す程度が丁度いい。

ずっと話してたら疲れる相手だからだ。

しかもよりによって、前の席と来た。

神は俺を見放した!

俺は机に突っ伏した。


「俺が何したんだよ・・・」


「何、うれしいのか?照れるな~」


「うれしくね~よ!!」


「それに見てみろよ、うちのクラス、かわいい女の子多いぜ!」


こいつは、頭の中には女とゲームしかないのか。

将来が思いやられるぜ・・・まったく。

俺はクラスの女子を見渡すことにした。

まぁ、確かにかわいい子が多いな!!

おっといけない、俺も須藤になるところだった。


視線を戻そうとしたとき、幼馴染の佐藤さとう 里奈りなが目に入った。

髪は栗色の腰までは届かない程度の長さで、両サイド髪を一部束ねていた。

胸は、ここ最近成長し、結構ある。

俺はそんな彼女を見ていると目が合ってしまう。

俺は軽く手で挨拶するが無視された。

なんて奴だ!


そしてチャイムが鳴り、朝礼が始まる。

そのあと、2年生になって初日なので始業式があった。

体育館に1年生から3年生までが集まった。

この学校にはこんなにも学生がいたのかと思う瞬間である。

今年入学してきた1年生が増えたのと同時に、卒業した3年生はいなくなっていた。

今まで、1年生だったので、後輩が出来たことで改めて、2年生になったんだなという実感が出てきた。

そして、こういう式でいつも思う。

なんで校長先生は、あんな長々と話をするんだと。

1分以内でさっと話し終わってほしいものだが、5分以上淡々と話している。

話の内容がそんなに濃くないからだろう。

段々と睡魔がやってくる。

もうすでに校長の声は子守唄となっていた。

その睡魔に耐えながら、考え事をする。

そしたら校長の話が終わり、あとは他の先生による簡単な話を聞いて始業式は終わった。

校長以外の話は早く感じた。

そんなことを考えていたら視線を感じたので、そっちの方を見たら里奈と目が合った。

その瞬間、里奈は慌てて視線をそらした。

まぁ、たまたま視線が合っただけだろう。

そう思い教室に戻った。


学校は、午前で終わった。

その帰り道、俺は須藤と帰っていた。

登校、教室、下校、ずっと一緒である。

たわいもない話をして帰った。

そして須藤と別れた俺は、家に向かい歩いていると、後ろから声が聞こえてくる。


「ねえ、和樹!ちょっと待ちなさいよ!」


振り向くと、そこには里奈がいた。


「なんだ、里奈か」


「なんだじゃないわよ!」


「どうしたんだよ?急に」


「あんた、教室で私見かけたとき手で挨拶してきたでしょ!」


俺は思い出す


「あぁー、したな」


「ああいうのやめてよね!変な噂流れちゃうでしょ!」


幼馴染に挨拶したらこのありさまだ。


「あれぐらい大丈夫っしょ、ただの挨拶だし」


「よくないわよ、まったく!」


彼女はどうやら、俺と知り合いだとバレたくないみたいだ。


「わかったわかった。学校でもう声かけないよ。じゃあな!」


俺は今度こそ帰ろうと歩き出す。

すると、後ろから里奈に服をつままれ引っ張られた。


「なんだよ!引っ張るなよ。帰れないだろ!!」


「今は学校じゃないからいいの!」


「はえ!?」


なんだその理屈は。

今日は早く帰ってやりたいことがあるんだけどな。

仕方ない、一緒に帰るか。

こうなると里奈は、テコを使っても自分の意志を動かさない。

諦めるしかないのだ。


「わかったよ。一緒に帰ろう!」


「それでいいのよ」


彼女はにっこり笑って横を歩く。

俺はスマホを取り出し、ツブッターを見る。

朝の投稿についていたコメントに返事を書きながら帰る。


「ちょっと何やってんのよ!」


里奈の方を見ると、ジト目でこっちを見ていた。


「私が一緒に帰ってあげてるのに、何スマホ触ってるのよ!」


こっちが帰ってあげてるんだけどなー。


「悪い悪い。ちょっとツブッターの返事書いててさ」


「え?あんたツブッターやってんの?」


「昔からやってるって、何回か言ってたと思うけど?」


すると里奈は、そういえばーという顔をし


「冗談と思ってたのよ!あんたがツブッターなんて出来ると思わなかったし、それに・・・」


失礼な奴め!

これは言ってやるしかないな!


「そんなこと言っていいのか里奈?」


「何が?」


その顔、驚きの顔に変えてやる!


「俺、フォロワー776人行ったんだぜ!」


どや顔で言って見せた。

すると、彼女はびっくりした顔をしていた。


「え?それまじで言ってんの?」


お!驚いてる驚いてる。


「そんな少ないフォロワーでどや顔されても・・・困るわよ」


またこいつ強がりを!


「じゃあお前フォロワー何人なんだよ!」


彼女は、しれっと言った。


「100万だけど?」


俺は頭が、後ろに倒れるほどびっくりして、道の真ん中でイナバウアーを披露していた。

とんだ化け物が身近にいた。

どうやったら100万もフォロワーが出来るんだろう。

今度聞いてみたいものである。




****************************************

その日の夜、妹が寝てから静まり返ったリビングで、とある人に電話していた。


「そうですね・・・えぇ」


「はい。それがいいでしょう」


「いつもすいませんね」


「よろしくおねがいします」


そして電話を切った。

電話している間は気付かなかったが、夜中は静かなものだ。

こうも静かだと、この世界には自分だけしかいない錯覚に陥る。

この家は今、妹と2人で暮らしている。


うちには親がいない。

俺が小学6年生の時に交通事故で両親を失い、高校に入学する前まで、親戚に預けられていた。

俺が高校生になると同時に、俺と妹で昔家族で暮らしていた家に戻ってきたのだ。

この家にいると親の事を思い出し寂しくなるが、ここに戻って来れてよかった。

親がいなくなってからの時間が、この家で再び動き出したのだ。

そして俺は、昔ここで家族と過ごしていたことを思い出しながら寝るのである。

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