第2話 1日の始まり

朝日が昇り、スズメの鳴き声が聞こえる。

そんな中、大きな声が響き渡る。


「カズ兄~朝だよ!起きて!!」


妹の声が快適な眠りを妨げてくる。

俺は負けじと布団に入り込み、身を丸める。

俺は、朝が弱いのだ。

毎日朝早くに起きる習慣にずっと疑問を抱いてきた。

朝が強い人もいれば弱い人もいる。

それぞれの人間に適した世の中になって欲しいものだ。

すると妹が「もぅ・・・」という言葉を合図に、階段を上ってくる足音が聞こえ、足音が大きくなり近付いてくる。

その音が俺の部屋の前で消えたかと思うと、ドアが開き俺の眠りを覚まそうとしてくる妹の声が俺の部屋に響き渡る。


「学校遅刻しちゃうよ!」


妹はそう言いながら俺の布団を引きはがそうとしてくる。


「カズ兄!そんなんだから1日中だらしがないんだよ!!朝からしっかりしないと彼女なんて出来ないよ!」


朝が弱いのに、朝起こされたらそりゃ1日だらけますよ。

朝が弱い人は朝はしっかり寝て、昼あたりから活動した方が1日がしっかりするものだ。


「あぁ・・・妹よ!俺はもう無理だ、俺を置いて先に行ってくれ・・・」


すると妹はムッとして


「何言ってるの!アニメの見過ぎなんじゃない?いいから起きてご飯食べに来て!!」


朝ごはんなんて朝起きる人が食べるものだよね。


「俺昼に起きてそれ食って学校に行くから、ラップかけて置いといてくれ!」


俺はそう言い眠りの中に再度入ろうとする。

すると、妹の額からピキッと言う音がした気がした。


「カズ兄?このお人形壊すよ?」


その声が聞こえた瞬間俺は布団から顔を出す。

すると妹は、俺の大切なフィギュアコレクションの1つを手に持ち、壊そうとしていた。

俺は慌てて起き上がる。

急に立ち上がったからか、立ち眩みがするが今はそんな事どうでもよかった。

俺は起きたことを伝えるため言葉を口にする。


「待て!妹よ!!兄は今起きたぞ!」


俺は必死に、フィギュアの破壊を止めようとする。

しかし妹の反応は違うものだった。

妹は顔を下に向け、ふっと笑っている。


「ほんとに元気なこと・・・ぷっ」


俺も視線を下に向けると、俺より先に起きていた息子が元気に起き上がっていた。

妹はそれをガン見していたのだ。


「ノーーーーーー!!」


俺はそう絶叫し、布団で隠したがもう遅い。


「早く下りてきてね!・・・クスクス・・っぷ」


妹は笑いを抑えながら部屋から出て行った。

俺の息子はそんなに笑うようなものじゃない!

立派なんだぞ・・・ほんとに。

まったくなんて妹だ。

妹に辱めを受けた俺は、朝から気分は地の底に落とされた。

今日は月曜日。

これから1週間、俺は生きて行けるだろうか。

俺は制服に着替えることにした。


おっとここで自己紹介をしよう。

俺の名前は山田やまだ 和樹かずき17歳、今日から高校2年生だ。

さっきのは俺の妹で、山田やまだ 由愛ゆめ15歳の中学3年生。

肩まで伸ばした黒髪、左サイドで髪を結んでいるかわいい妹だ。


「カズ兄!!!」


おっと、いい加減下りないとやばそうだ。

俺は1階に下り朝食のパンを食べる。

食パンと、ホットミルクの組み合わせ、最高過ぎる。


そんな中テレビを見ると、世界で大人気のSNS、ツブッターのニュースがやっていた。

どうやら、ツブッターを使い女性をさらう事件を起こしている人間がいるらしい。

俺はそのニュースを真剣に見ていたら、由愛は朝食を食べ終わって、スマホを触っていた。

ここは兄として注意しないとな。

俺はそう思い、由愛に話しかける。


「最近ツブッターでの事件増えてるみたいだから気をつけろよ!」


「大丈夫だよ!知らない人とは連絡取らないようにしてるし」


それなら大丈夫か?

変なメールなどが来た場合、基本無視したら事件には巻き込まれないだろう。

俺もそう思うことにした。


「お兄ちゃんも気をつけなよ!」


「・・・何を!?」


「お兄ちゃんがいくらモテないからって、女の子と会おうとして事件起こさないでね!」


俺は口を引くつかせた。

由愛は俺をなんだと思ってるんだ。

そもそも・・・。


「いやいや妹よ!俺だってちょっとはモテるんだぞ!」


苦し紛れのウソをつくと


「あっそっ!まぁ事件さえ起こさなかったらどうでもいいよ」


全然信じてもらえなかった。

まぁ、大器晩成型だからこれからモテるのさ!

苦し紛れの言い訳をして落ち着く。


「そもそもお兄ちゃんって、長い年月ツブッターやってるけど、フォロワー何人いるの?」


ツブッターにはフォローとフォロワーがあり、フォローとは自分が相手に興味があるときにするもので、フォローした相手が投稿すると、自分のトップ画面にその投稿が更新される。

フォロワーとは自分に興味があって相手がフォローした際にカウントされ、自分が新しく投稿した記事が、相手のトップ画面に更新されて投稿を知らせてくれる。

簡単に友達関係でいうと、自分が相手を友達と思っていることをフォロー。

相手が自分の事を友達と思っていたらフォロワーと思ってもいいかもしれない。

そんな俺のフォロワーを聞いてるわけだ。


「聞いて驚け妹よ!」


俺は自信満々で答えた。


「俺のフォロワーはなんと776人だ!!」


場が静まり返る。

どうだすごいだろ!

776だよ?776!

俺に興味持ってくれてる人がそんなにいるってすごくない?

見よ!妹もびっくりして、ポカーンとしていらっしゃる。

今日からお兄様って呼んでもいいぞ!

するとなぜか妹が笑い出した。


「カズ兄、マジで言ってるのそれ!」


「何がおかしい!嘘はついてないぞ!!ちゃんと776だ!」


あまりの多さに、由愛には嘘と思われたか!?


「いやいや・・・少なすぎでしょ!」


・・・えっ?

776人が少ない?

そんなことはないだろう。

もしかしたら自分より多いフォロワー数に、現実を受け止められてないのかもしれない。


「自信満々だからもっといるのかと思っちゃったよ」


妹は笑いながらよほど面白かったのか、笑い涙をぬぐっている。


「そ・・・それじゃあお前は何人いるんだよ!!」


俺ほど多くはないだろうが、少なくても恥ではない。

兄として、自信が付くように慰めてやらないとな!

すると妹は答えた。


「私は5万人かな!」


由愛様!!!!

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