第二章 ラブレターと告白の行方
第一話 なんて話したもんかなぁ
「うーん……なんて話したもんかなぁ……」
スマホで、龍宮寺さんとデートした時の写真を眺めながら、ずっと考えていた。デートに行ったのが土曜日。日曜日の間、家でずっと考え続けていても、出てくる答えは一つだった。
正直に告げて、謝罪することだった。
こんな一方的な関係はよくないに決まっている。
それでも、正直に話せば龍宮寺さんを傷つけてしまう可能性が高くて、正直に話すのをためらわせた。何より、龍宮寺さんの悲しんだ表情を見たくもなかった。そんなぐらいには、俺だって龍宮寺さんに心を許していた。
あそこまで一途に思っている子はいないに決まっている。
それでも、いい答えが出なくて、やっぱり正直に話すしかないと思っていた時。
「ヤッホー、西島君」
頭上から、楽しそうな声が降ってきた。
顔を上げると、そこにいたのは竜崎さんだった。
「どしたの西島君?」
可愛らしく首を傾げる竜崎さんだけど、今はそんな姿を見ても、不思議と以前のような燃え上がるような気持ちにはならなかった。
むしろ、冷静な自分がいた。
「あ、ああ……いや別に……」
気持ちが幸せにならないというか、上手く言葉にできないんだけど、この状況を龍宮寺さんに見られたくなかった。罪悪感のような物がより一層、強くなっていくような……。
「こーら! そんなしょぼくれた表情のままじゃ、良い事なんて起きないよ。なんちゃって」
俺の鼻を指で優しく叩きながら、恥ずかしそうにチロッと舌を出す竜崎さん。
今までの俺なら、赤面して、挙動不審になって、たどたどしい言葉になっていたはずなのに、今は何も思わなかった。
むしろ──
「およ? ほんとにどうしたの? 調子悪いなら保健室にでも行って来たら?」
「いや、悪い……そうじゃないんだけど」
「そう? じゃあさ、西島君が暇なら週末に二人でさ、どっかに遊びに行かない?」
「いや……遠慮しとくよ」
「えっ!? あ、ああ……う、うん……分かった」
何やら過剰なほどに竜崎さんが反応していたが気のせいだろう。
チャイムの音と同時に、竜崎さんは自分の席に戻って行った。
「最低だ俺は……」
最初は竜崎さんが好きだったはずなのに、たった一回、デートに行っただけで心が簡単に動いてしまうような、自分の軽さがひどく嫌になった。
だから思わずにはいられなかった。
一体、俺は何様なんだろうかと……。
※
「よぉ、伊織! ラブレターの結果はどうだったよ?」
昼休み。
背中を叩きながら、声をかけてきたのは泰我だった。
「何すんだよ。泰我(たいが)」
この学校で唯一といっても過言ではない友人の泰我に文句を言う。
「何って、伊織が無視するからだろ? そんなことよりもだ。金曜日のはどうなったんだよ? まぁ、この大恩人たる俺様のおかげで、無事に告白くらいはできただろ?」
「なーにが、大恩人だよ。こちとら、すっごい大変だったんだからな」
「大変って、振られたことがか? そりゃあ、伊織みたいな根暗系陰キャに、竜崎さんなんて高嶺の花だが、行動しないことには、何も変わらないだろ?」
「いや、そうじゃなくてだな……」
むしろ、俺は竜崎さんに告白すらできていない。
「けど、この俺様がいなかったらお前は竜崎さんに告白すらできてないんだからな。もう少し、俺に感謝してくれてもいいんだぞぅ?」
泰我の言い方にイラッとしないわけではなかったが、引っ掛かることがあった。
「うん? どういうことだよ?」
泰我の言い方を踏まえるのなら、俺は泰我のおかげで竜崎さんに告白できたことになるんだが……。
「なんでって、お前……あのラブレター、俺の靴箱に入れてただろ? そりゃあ、いくら緊張していたからって、普通、間違えるか?」
「…………え? 今なんて言った?」
「だーかーらー。伊織は、俺の靴箱に手紙を入れてたんだよ。そりゃあ、俺の靴箱は、竜崎さんの下だけどな? その辺は、俺がしっかりと竜崎さんの靴箱に入れてやったから感謝してくれてもいいんだぜ?」
俺の書いたラブレターが、泰我──
……なんでだ? いや、そんなことよりもだ。どうして、龍宮寺さんはラブレターを持っていたんだ?
一応、竜崎さんが龍宮寺さんの靴箱に入れ替えた可能性もあるが、俺にはどうしてもその可能性が考えられなかった。それは龍宮寺さんと出かけた時に、話を逸らされた違和感があったからだ。
それに、竜崎さんはそんなことをする子じゃない。
「けど、伊織のリアクションを見る限り、振られたみたいだな。今から学校をさぼって、一緒に遊びに──」
「あ、いお……西島くーん! 昨日の写真なんだけど──」
その時。
写真を持った龍宮寺さんがやってきた。
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最後まで読んでいただきありがとうございました~
二章開始です、最初からクライマックス全開です(笑)
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