Side 龍宮寺さん家のデート前日の夜
「お嬢! この服はどうでしょうか!」
「んー、却下。っていうか、明日着ていく服くらい自分で選べるから! もーう、放っておいてよ!」
「いや……ですが、組長にもお嬢の世話係を任せてもらってる身としては、心配で……心配で……」
私──龍宮寺七海(りゅうぐうじななみ)の目の前で、立花が顔を青ざめさせていた。
立花は、頬に切り傷を付けてるし、スキンヘッドなんだけど、実はとっても優しくて臆病な性格の男性。少なくとも私の前で怒った姿は、一度も見たことがない。
それに、こんだけいかつい見た目のくせに、趣味がお菓子作りなんだから、幼少の頃にお世話係として紹介された時からずっと仲良し。私の中では、もう一人のお父さんっていうのがしっくりくる。
「それに、お嬢の初恋の人なんでしょう? やっぱり、俺としても上手く行って欲しくて……当日はどこを回るんで? 組の者を護衛として、何人か配置──」
「却下」
「じゃ、じゃあ。俺がその初恋のために好きなお菓子を作るってのはどうですか? 勿論、お嬢が作ったことにしても──」
「それも却下」
「何でですか!」
「普通に考えて分かるでしょ!」
それで、伊織君が美味しいって言ってくれも、私は結構複雑なんだよ! そういうのは、やっぱり自分の力で美味しいって言ってもらって、胃袋を掴みたいし……。
伊織君の喜んだ笑顔を見えるだけで、幸せになる私がいた。胸がやさしく、じんわりと広がっていくような、ほころぶような気持ちだった。
「ふへへへ……」
「お、お嬢……?」
「にゃ、ニャニよ……! とりあえず、明日のことは一人で何とかするから放っていて!」
そのままわたしは心配そうな顔をした立花を強引に部屋から追い出した。
「ねぇ、伊織君はあの日の事、覚えてる?」
机の上に置いてる伊織君の写真を指で撫でる。
こんな可愛くない私を、可愛いと言ってくれて、ありのままでいいと言ってくれた人。
でも、幸せな事だけじゃなかった。思い出すだけで、嫌な気持ちも広がっていく。
私は竜崎さんがどうしても許せなかった。だからこそ、絶対に伊織君とのデートは成功させて見せる。
「よしっ! 早く明日に来ていく服を決めないと……うーん、伊織君はどんな服が好きなのかな……」
服選びでさえ、伊織君が喜んでくれるかもって思うと、どうしても頬が緩んでしまうのだった。
明日が楽しみだなぁ。
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最後まで読んでいただきありがとうございました~
流石に短すぎるので、分割で20:24に投稿しますので、フォローしてお待ちいただければと思います!
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