13





















 真っ白な部屋だ。夢の中で、おれたちは手をつないでいた。ゴリマッチョはブログで見た写真の姿に変わっていて、田舎の弱っちいヤンキーみたいだった。幸輔が笑うと金色の髪がふわふわ揺れた。なつかしいようなにおいがした。

 頬を舐められて、犬みたいだなあと思っていたら幸輔はゴールデンレトリバーだった。頭を撫でたらごめんと鳴いた。

「やっぱりおれ、ほんとうの幸輔じゃなかったみたいだ」

 でもおれは、おまえと話すのが楽しかったよ。犬はしっぽを振り、おれたちは船に乗った。一本釣り漁船だ。ぬいぐるみをたくさん釣った。ホッキョクグマだけ刺身で食べて、残りは全部クール便で家に送った。バイト先に差し入れとして持って行くと、先輩が炭火で全部焼き鳥にしてしまった。

 おれと犬は一枚の布団でいっしょに眠る。実家暮らしのころ、いつもそうしていたからだ。おれが横になるとすかさず隣に寄り添ってくれる、賢くてやさしい犬だった。おれがいなくなるとさみしがって餌を食べないと母が愚痴をこぼしていた。

「おまえのことが好きだったんだよ」

 そうだな。でも犬は三か月前に死んでしまった。母が死んだ犬の写真をLINEで送ってきた。おれはもう生きていてもしょうがないなと思った。

 それで、やっぱり泣いてしまった。幸輔もいっしょに泣いてくれた。おれたちは犬と人のかたちで抱き締めあい、互いの気持ちなんかわからないまま、心細さにびょうびょう泣いた。部屋は水浸しになっていた。



 そしてインターホンが鳴り、でかい段ボール箱いっぱいに詰め込まれた大量のぬいぐるみが家に届いたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る