12
「誕生日おめでとう」
「昨日はごめん」
「おれ、ほんとは自分の姿覚えてなくて、っていうか、生きていたころの記憶もなくて」
「だから正直、自分がほんとうに幸輔なのか自信ないんだ」
「ケンが、自分をよく見せようと偽ってるみたいなことを言うから、ついムカッときた」
「ごめん」
「偽ってるわけじゃなく、覚えてなくて。妹のブログで見たことはあるんだけど、実感できない」
「もしかしたらおれはAIかなんかなんじゃないかって、ずっと考えてる」
「なんにも覚えてないんだよ。学生のころなにしてたかとか、なにが好きでなにが嫌いだったとか」
「おまえが好きだっていう記憶しかなくて。でもそれだって、チャット履歴がネット上で全部閲覧できたからそう思い込んでるだけなのかもしれないし」
「おれってなんなんだろうって、ときどきすごく不安になる」
「それで、器があればおれはおれでいられるような気がして」
「だからごめん。ほんとはおれのためだった」
「嘘ついてごめん」
「おまえと話せるの、すごく楽しくて幸せなんだよ」
「でも声かけちゃいけなかったと思う」
「だからおれのこと忘れていいよ」
「ごめん。見たら返事してほしい」
「仕事終わってからでいいから!」
「今って仕事中?」
「うるさくてごめん」
「ねえ怒った?」
「やっぱおれいないほうがいいよな」
「雨大丈夫?」
「ごめん。待ってる」
「はやく帰ってきて」
「ケン」
「戻ってきちゃってごめん」
「好きだよ」
「ごめん」
「ケン、」
「生きてるよな?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます