第10話 巫女の見つけた古いおふだと悪霊退治

「悪霊退散!」


 このおふだには悪霊を祓う神秘の力がある。私達巫女はこれを使って古くから悪霊の魔の手から町を守ってきた。

 そんなある日、私は家の倉庫から珍しい古いおふだを見つけた。


「これは何かしら。怪しいわね」


 私はつい興味を惹かれてそれに手を伸ばしてしまう。

 すると――

 ――ドカンッ! という音と共に、何かが壊れる音がした。


「……え?」


 私が恐る恐る目を開けて振り返ると、そこには粉々になったドアと、泣きながら抱き合う母子の姿があった。


「これは霊? 何かの霊なの?」


 悪霊では無さそうだ。私は呆然としながらも泣かせたのなら謝ろうと思った。


「……ごめんなさい……」

「いいのよ……。息子が無事で良かったわ」


 そう言って母の霊は子供の霊の頭を撫でた。


「いきなりこんな破壊行為をするなんて、あなたは破壊神なの?」


 何でやねんと突っ込みたくなるのを私は何とかこらえ、巫女らしく楚々として答える。


「私がやったのではないので安心してください」


 そう、ドアを壊したのは私ではない。おそらく古いおふだに溜まっていた霊力が吹き出したせいだろう。

 今はもう全て出尽くしてしまったようで何ともない。


「私は巫女です。悪霊を払う力があります」

「まあ、凄いわね。巫女ということはあなたは結婚せずに生涯を神に捧げて独身を貫くのね」

「くっ……!」


 今すぐ何でやねんと突っ込みたい。だが、私はお笑い芸人ではなく、巫女なのだ。

 どうせこの霊とはこれっきりの付き合いだろうし、我慢して手刀を下ろして答えた。


「はい。私は結婚しませんよ。神様だけが主です」

「それは良かった。なら姉ちゃん可愛いし、わしのアイドルにしてやるわ」

「なんでやねーん!」


 いけない、突っ込んでしまった。私にぶたれた子供の霊は天井を突き破って空のお星様になってしまった。


「何て事するの、あの子は神様なのにーーー!」

「えーっと……」


 とりあえずここにおふだがあるし、私はこの霊を成仏させる事にした。死人に口無しである。


「悪霊退散!」

「ほぎゃあああ!」


 だが、何故か私はその日から町の人達に破壊神と恐れられるようになってしまった。


「ちゃんと成仏しといてよ」


 私は余計な事を吹聴している神から悪霊になり下がった奴を退治する事にする。この最新式のおふだなら古いのより使い慣れてるし効果は覿面だ。


「悪霊退散!」


 こうして今日も町には平和が訪れたのだった。

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