第25話 南の街道整備 22キロ地点
27キロ地点の第五拠点に戻ってきた。三本足に乗って。いやいや、これはお買い得だ。すっかり気に入ってしまった。俺が尻から先に降り、怜奈を抱きかかえるように降ろした。
そのあと早速、小屋と水場を作った。餌場は西側に広めに拡張して野草を食べることが出来るようにしようと計画、リアの承認も得て、取り掛かった。デカい樹々を【水弾Ⅲ】で薙ぎ払い、根っこ部分は【土弾Ⅱ】で掘り起こし、10m×10mを西側に拡張出来た。新たに広げた北、西、南の敷地に木の柵で拡張した。木製品が有り余っている。ヒトカドの資産家気分だ。服も増え、衣裳ダンスが好評だ。まあ、それはいい。
◇
34キロ地点で採取した、麦の実、ソバの実を回収手帳の中で、粉状にして、麦の実は土色、黄色の魔石と再度、回収手帳の中でブレンドをした。ここから先は自動化されるだろう。特に、麦の実は狂ったように1キロ範囲に渡って採りまくったので、大量の麦ができるだろう。魔石の在庫事情で、大麦3:小麦7の配分となった。
大麦は今のところ、夏用麦茶とビールの予定だ。小麦は麵とパン、お好み焼きにタコ焼きに作りたいものが多すぎる。ただし、具がない。気分だけで盛り上がれると確信する。塩と水、ハチミツがあればだいたい何とかなるだろう。
「パンを焼く窯、ピザ、ナン用の窯、大きな鉄板と鉄板を取り出す機器、製麺棒に水切りザル、ああ、どんぶりがいるな」
「まずは、どれか一つに絞ったら?改良も必要だから」
俺の独り言に、怜奈が笑いながら突っ込みを入れる。確かに一度で上手くいくわけもない。まずは蕎麦から作ることにしよう。そば粉と小麦粉を取り出して、鉄で作ったボールに水を入れた。あとの力仕事はリアに任せよう。怜奈が、そばの作り方を知っているようだ。どうやら、リアは手紙を読んでいる。小屋に残されていたようだ。
「どうした、リア、誰からの手紙だ」
「ロンバルディの誓のジャスミンって覚えている?彼女から」
「ああ、何だって?」
「ダニエルが動けるようになったから、お礼がしたいって、まだ20キロ地点の第二拠点にいるみたい」
沿道の道は27キロ地点を起点に北に5キロ、南に5キロ延長している。南には、あと22キロ延長して、カノッサ村の自宅に繋げる予定だ。三週間も家に帰っていないな。谷底経由なら今からでも行けるが、できればクロエに乗って行きたい。三本足を谷底に下すには、デカくて緩やかな坂道を作るのは難儀しそうだ。それなら、南の沿道をぶち抜く方が早いか。俺はその案をみんなに話した。
ティアラもピエロに乗りたそうにしていたので、二人で乗って行って、ティアラが【風刃Ⅲ】と俺の【水弾Ⅲ】で伐採、俺が【土弾Ⅱ】で整地すれば、最悪、整地は後回しでも視界が広がれば、伐採後の道なら、三本足たちは歩けると云う。2キロなら、遅くとも二日で開通できそうだということになり、明日、出発することになった。
◇
錬金レベルが上がったこと、麻の実、綿の実が入手できたことで、いろんな合成や応用ができるようになった。白茶と緑のワンピースタイプは怜奈に。リアは赤と茶色のツナギタイプが気に入ったようだ。
ティアラは上下不揃いのセパレートタイプがいいらしく、ミニスカートを何種類か作った。タイトなやつから、フレアにミニまで。あるいは後ろスリットや横スリットの入ったロングタイプのものまで。横から怜奈があれもこれも、と注文をする。履くのはティアラなのだが、スレンダーで足の長いモデル体型なので、どれを履いても良く似合う。そのうち、ヒールを作れないかと怜奈が云い始めた。靴って作れますかね、魔女様。作れるようだ。怖いな。魔女様の才能が。
ピンヒールではなく、パンプスのような形にした。裏地には滑り止めの一角ウサギの角の粉末をブレンド。緩衝ゴム素材には、スライム素材がヒット。あとオークの外皮が分厚く、ゴムに類似している。防腐処理をしてカラフルなオーク各種のパンプスが出来た。笑うわ。赤、緑、深緑、黄色、土色、水色、さらに色を合成できるようだ。紫にオレンジ、それこそ絵の具のように混ぜることができる。不思議すぎる。ただ、戦闘中には、それはダメだぞ、ブーツにしておけよと、念を押した。
最近、三人の彼女たちのイメージカラーが固定化しつつある。リアは赤系を好み、ティアラと怜奈は緑系を好む。ティアラは明るい緑。怜奈は深い緑だ。俺は残った不人気の色を使う。黄土色系統だな。意外と悪くないのだがやはり若々しさはないな。
彼女たちはこの世界で異質のファッションだ。外見の美しさも、化粧品類がないにもかかわらず、天然素材で美しい。怜奈いわく、剃毛クリームと剃刀のお陰だという。ムダ毛処理で美しさアップなのか。
季節は夏になっている。このため風呂よりもシャワーで十分なのだが、遠征帰りだと、全身浴をしたくなる。久しぶりに浴槽に温めの湯をはった。ピエロとクロエも物珍しそうに近づいてきた。モフモフだから暑いのだろうか。鞍を外しているので、そのままシャワーのように放水してやると、嬉しかったのか、目を細めて水を楽しんでいる様子だ。絵になるな。満足したらしくブルブルっと全身を身震いして水を弾いたあと、西側に草を食いに行った。
俺は風呂から上がると、キノコで出汁づくり。今日は天ぷらそばにしようと思い、たくさん採れた油の実も使う。エビの代わりに山菜がメインだが、イエロ・オークが豚より鳥に近い肉質だったので、そちらを使ったら、唐揚げの方が美味い、というかもうトリカラでいいんじゃないだろうか。怜奈に味見させると「トリカラだ、塩が合う」と好評だった。リアとティアラの口にも味見用のトリカラを入れ込んだら、全部食べやがった。まあ、肉は余りあるほどの量があるので、再度、多めに揚げた。これは久々の食文化の前進と言える。
「アレックスといると、喰い逸れなくていい」
「美味いな、これ」
俺の感動を他所に、パクパクとリアとティアラが凄い勢いでトリカラを口に放り込む。そして、締めの天ぷら蕎麦。
「・・・まじか」
「これは・・・」
これは絶品!言葉を失くしそうだ。欲を言えば、ピリ辛が欲しい。毒耐性があれば毒キノコでもいいが。次の遠征では、香辛料を探そうぜ、怜奈とハイタッチした。
その夜は慎重に、結合試験を行った。結果は都度ではなく、3か月に一度程度鑑定することにした。当面の目標は成功回数50なのだ。
◇
翌日 森の入り口から22キロ地点
ティアラとピエロ、俺とクロエで5キロ南下した。谷沿いの道を幅3m間隔で、一気に伐採をしていった。スキルレベルⅡで樹木一本、スキルレベルⅢで樹木30本と言いたいが、実際には30本も倒れない。せいぜい、9本くらいだ。貫通して次の木を倒すほどの威力はない。ゴブリンなら20匹は倒せるが、この太い相手だと、ムリムリ。しかし、スキルレベルももうすぐ上がりそうな予感がする。
迅速の腕輪の効果と連射機能もあり、毎秒平均7本程度を伐採していく。1分間に400本ほどを倒しては回収する。一時間で進めるのは200m弱だ。想像通り大変な作業となった。午前中の5時間で予定の半分の1キロを進んだ。
ティアラが伐採してくれている間に、俺は、3m幅の中央1mの目立つ切り株を【土弾Ⅱ】で、掘り出していった。一つ掘り起こすのに、10秒はかかる。中央付近の切り株は、10mの距離に一つから二つなので、1kmの間に、160本の切り株があるが、午前中に取り除けたのは30本分の切り株だ。これは伐採以上にきつい。怜奈を呼ぼうかと思ったが、自分で頑張れば土弾ⅡもⅢにあがりそう気配なのだ。是非とも頑張りたい。
三本足も、木の根は食べない。斬り落としたあとの枝から葉っぱを食べている。
この根っこは、椅子や、訓練場の的として利用している。枝や根の部分は薪になる。無駄なく資源を使わせてもらう。
昼飯は、パン・モドキのナンを作ってくれた。塩とハチミツ少量がはいっており、滅茶苦茶美味い。ティアラも美味しそうに食べている。絵になるな。見惚れてしまった。午後からは、伐採をティアラに頼み、俺はひたすら根っこ掘りだ。結局、午後からは60本の切り株を取り除いた。90/160である。しかし、嬉しいことに土弾がⅢにあがった。明日は加速するだろう。ティアラは、午後から500m進んでくれた。全体2キロのうち、四分の三進んだ。明日は開通予定だ。
予定の時間になったので、二人はピエロとクロエに乗って帰った。わずか6キロの散歩だったが、彼らも好きなだけ食べ、心なしかにっこりしていた気がする。
▼【魔女鑑定】――――――――――――
アレックス レベル25 土弾Ⅲ(+1)
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