第23話 魔女様の力の共有 結合回数

 27キロ地点の拠点を整備し始めてから二週間が経った。朝食の火入れをしている時にリアが俺に言った。


「アレックス、これを見てみろ」


 ガスバーナーのような青い炎を剣に纏うリア。指先からも青い炎を5本立てている。俺は、リアの腰に手をまわして鑑定した。


 ▼【魔女鑑定】――――――――――――

 リアナ レベル27(+3)、火弾Ⅲ(+1)


「おめでとう、リア、ついに【火弾Ⅲ】になったな」

「えへへ、もっと褒めてもいいんだぞ」

「えらいえらい」


 俺はリアの尻尾と尻を盛大に撫でまわしてやった。


「こ、こら、そこはダメだ、く、腰が抜ける」


 へたり込んでしまったリアの両脇を、子どもをあやすように『高い高い』をしてやって、くるくるとその場で旋回した。


 あはは、原始の世界も楽しい、最高だ。と、不意に思える瞬間があるが、たいていはこの三人がいるときで、しかも自分が作った拠点の中で思うことだ。

 一歩、外の世界に踏み出るといつも「クソッタレ」と悪態をつくことが多くなった。相当、大自然に対して、というよりも大自然に対する自分の無力感にストレスを感じている。拠点を切開いていくことがまるで贖うような、抵抗の証を手に入れたのだという気持ちになる。それもこの三人の強力なサポートがあってこそだ。

 だからこそ、三人のスキルレベルが上がることは、我がことのように嬉しい。


 先日、探知の気配が分かるかもしれないと云っていた怜奈は、【鑑定】が出来ている節がある。それを尋ねてみると、明確に鑑定が出来ているわけではないが、食材なら食用可・不可、魔獣ならレベルが自分より上、下というのがなんとなくわかると云う。怜奈が云うには俺との接続回数が更に増えれば、出来ることが増えるはずだと奇妙な論理展開をする。

 

 もちろん、そんな論理を無視してでも俺は抱きたいからウェルカムだぞと答えているのだが。彼女の中で、魔女に近づいている感覚。魔女に拒絶されていない感覚があるのだと云う。オカルトで済ませるには根拠もなく、ただ、日々肌を重ねることが多くなった。

 

 だいたい、目を離すと始めている時はいつもレナからだ、とリアに突っ込まれて心当たりがありすぎるのだ。万が一にも、怜奈が魔女との契約ができて、その力を得られるものなら、大歓迎なのだ。そんなことを考えながら、怜奈をハグして鑑定した。


 ▼【魔女鑑定】――――――――――――

 怜奈 レベル26(+3)、土弾Ⅲ(+1)

 状態:魔女の力の目覚め、一部分を共有している。その効果は、結合回数に比例する。


 ▼結合回数効果(現在、結合レベル1『6/10』)

 定義:結合は互いの魔力交換を体内でした回数をカウント。

 10回未満、うっすらと認識できる。

 20回達成、なんとなく意識して共有できる。

 30回達成、明確に意識して共有できる。

 50回達成、回収手帳の任意の3頁を共有可能。

 100回、互いの能力を一部、利用できる。

 150回・・・何回までボーナスがあるのだ、今日明日に達成できる目標ではないな。しかし笑いが込み上げて止まらない。


 あはははは、思わず吹き出し笑ってしまった。


 三人が振り返って、どうしたと尋ねてきた。俺は回収手帳に結合回数が記録されていることを伝えた。そして、体内での魔力交換とは何かを三人に尋ねた。出し入れ、抜差しするだけだと不可、一方的に魔力を流し込むだけでも不可。互いに流しあうことでカウントされると伝えた。

 

 リアの予想では、男が行く瞬間の白い液体に魔力があるはず、残量を鑑定してみろと云われた。合理的だ。女はどうなのだと聞くと、オーガズムに達した時に鑑定してみようと云うことになった。互いに呼吸を合わせるしかないな。

 

 6回どころか、それ以上、怜奈の中で果てたことを考えると、判定がかなりシビアなのだとわかる。三人には、10,20,30,50点で得られるボーナス効果について説明をした。


「現時点の三人は、何点なのだ」


 三人に触り鑑定をする。


 ▼【魔女鑑定】――――――――――――

 クリスティアラ レベル26(3UP)、回復Ⅱ(+1)

 結合回数:1 


 怜奈が6,リアが2、ティアラが1だ。


「レナ、やりすぎ」

「ち、違うもん、プレイ回数はみんな一緒のはず」


「タイミングの問題なのか」

「ぐぬぬ、行く宣言をするのは恥ずかしい」


「アレックス、お前、無駄撃ちが多いからだ」

「無駄撃ち、言うな」


「しかし、魔女様とやらの能力を共有できるなら、恥ずかしさに勝るな、私は宣言するぞ、アレックス今日から呼吸をあわせろよ」

「俺が合わせるのか、まあ、努力する、リアが気持ち良すぎて止まらない時があるのだが」


「お、おい感想を言うな!反則だ」


「私は、なんとなくわかるかな」

 

怜奈は、俺の世界の果てを理解しているようだ。


「・・・」

 

 ティアラは無言で拗ねる。彼女はプレイ中も無言だから確かに分かりにくいのだが、俺の努力・工夫不足も否めない。


「ティアラ、二人で工夫してみよう」

「アレックスがいつも無言でいく」


「お、おう、みなまで言うな、恥ずかしい」

「私を抱くなら、私を一緒に逝かせるべき、当たり前」


 失礼しました。無賃乗車だからな。申し訳ない。と俺はティアラに俺だけが頑張ってみると宣言した。阿呆だな。判定をもっと緩くしてくれませんかね、魔女様。俺が注ぐだけなら、何杯でも注ぐのに。頭がカップラーメン思考になっている。はあ。


 ▼【魔女鑑定】――――――――――――

 アレックス レベル25(+3)

 スキル:短剣Ⅲ(+1)土弾Ⅱ(NEW&+1)

 ギフト:回収手帳Ⅲ(+1)

 回収手帳内スキル:縫製Ⅲ(+1)錬金Ⅲ(+1)

 生活魔法スキル:浄化Ⅱ(+1)、クリーンⅡ(+1)、水Ⅲ(+2)

 結合回数1回につき1%全体の能力が上がる。


 はあ?


 ▼縫製Ⅲ 

 上下衣類統合:ワンピース型、スーツ型、ツナギ型の上下お揃いまたは上下統合タイプの衣装を作成可能。


 ▼錬金Ⅲ

 鉱物資源由来の素材から武器を作成可能。鉱物素材と魔獣素材の統合武器を作成可能。既存の武器を強化することが出来る。


 なんか、色々と凄いのだけど。女性陣からの衣装要望がさらに凄いことになった。最近の注文はショーツと靴下だ。リアは安定の武器作成希望だが、すでにあるレッド・ボス・ウルフの剣の強化を頼まれた。なるほど、武器強化もできるはずだ。


「結合回数、1回で1%とか、すでに9%アップとか、これは反則級の加護だな、よこせ、私にも寄越せ」

「100回達成で一部共有財産だな」


「遠いなあ」

「あはは、冒険者の目的を忘れるなよ、ボス・リア」


 乙女会議(俺除く)の結果、三人同時プレイではなく、一日一人と決めたようだ。リアのこういう合理性は意外なのだ。


「アレックスに女を増やすのは禁止」

「賛成」


 それでいいよ、俺は何十人も女が欲しいわけじゃない。ただ、凄いスキルを持った人がいたら、共有できたらいいとは思う。スキルが欲しいなら魔石を喰えと云われた。あまり食いすぎると、器用貧乏になるぞ。お前の武器を磨くことを忘れるなよ。ごもっとも。魔女様から事前に頂いた、【水弾】【短剣】【魔女鑑定】【回収手帳】この四つをまずは、スキルレベルを最大のⅤに優先的に意識しようと思う。きっと、その先の展望があるはずだ。


 女性陣には、規定回数に一喜一憂するなよ、相手との差異を騒ぎ立てるのはダメだぞ、とリアがくぎを刺す。流石このあたりはリアだと感心する。いいリーダーだ。二人も頷いている。ティアラは俺を睨んでいるが。ははは。


「しかし、レベル30になるのに、5年はかかると思っていたが私の場合、4年で届きそうだ」

「私は2年、これは異常、アレックスは1年、頭がおかしい」


 いやいやいや、2割は倒したかもしれないが、残りは全部君たちが倒したのですよ。おっと、口が滑った。


「でも、スキルレベルがⅣになったら、レベル上げも加速するわよ」

「間違いない」


 怜奈の指摘に反論の余地はない。


「まあ、レベル30は通過点だから、あまり気にしてもな」

「そこがおかしい、幾つを目指しているの」

「え、ダンジョンに行きたくない?」

「宝箱、ザクザク、大金持ちになる」


 問題は、金を使う場所がないのだ。とんだ原始の世界だな。どこかに大都会は存在しないのだろうか。住みたくはないが。


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