第14話 魔石レベル 属性スキル
魔石が食べ物だとクリスティから聞いて、思わず体を起こした。子どもを抱きなおすように、クリスティを起こして膝に乗せた。正面で抱き合うような格好だ。
「スキルにどうやって食わせるのだ」
「ん~、レナ、説明してあげて」
魔石を食べることは理解しているようだが、詳しいことをクリスティは知らないのだろうか。レナの話によると、特定の属性魔石を食べると、その属性のスキルが成長するという。勿論、剣や弓、スキルに口が或るわけではない。自分の口で食べると属性が強化されるのだという。俺なら水属性を食べるのか?と半信半疑で尋ねると、そうだと云われた。リアだと、火属性の魔石を食べると剣の斬撃ファイア・ボールが強化されるのか、と聞けばそうだという。
待て、待て、待て、待て。マテ―――――!
全く理解できない、石を喰うのか?
「倒した魔石は、みんな食べたのか?」
「いや、アレックスが全部、食べたのかと思っていた」
「は?そもそも食べるものとは思っていなかったから、全部持っているぞ」
俺はそう言って、回収手帳から、ベッドの上にコロコロ転がして出した。全部で1000個以上ある。
「あれ?」
「ん?」
「アレックスが魔石を食べて強くなったのだと思っていた」
「喰い方も知らないぞ」
レナとの会話も噛み合わない。
「なあ、リア、魔石を喰ってみてくれ」
「いいのか?」
リアは、赤い大量の魔石を見て、目をキラキラさせている。クリスティは緑の魔石を見て、膝をソワソワさせ始めた。リアは、大きな赤い魔石を一つ手に取り、まるで肉饅でも頬張るかのように、むしゃむしゃと食べた。体が赤く光って消えた。
俺は、緑色の魔石を手に取り、クリスティの口にあてた。パクっと美味しそうに食べた。体が緑色に一瞬光って消えた。フォレスト系が多いため、圧倒的に緑色の魔石が多い。レッド・ウルフは赤い魔石だが数が少ない。
リアが残念そうに、赤い魔石を俺に一つ差し出す。
「アレックスが火属性の魔石を食べたら、常時お湯が出るかもしれない。風属性の魔石を食べたら、【水弾】の飛距離が伸びるかもしれない」
俺は、クリスティに魔石を鑑定したことがあるか聞いてみた。有ると云う。俺も一つ手に取ってみた。
▼【魔女鑑定】――――――――――――
ディープ・フォレスト・ウルフの魔石(スキル強化値78)
風属性のスキルを強化する、強化値は魔石レベルに比例する。魔石レベルは魔獣討伐の獲得経験値と合致。
属性のスキル強化、魔石レベルというものの詳細を見た。
▼属性のスキル強化
:使用回数に応じて、スキルレベルの高さが向上。(威力)
:魔石摂取に応じて、スキルレベルの幅が増幅。(範囲)
:他属性の高レベルの魔石を取得すると、新たなスキルを覚える
:稀に「スキル入りの魔石」がドロップする。新たなスキルを覚える。
:他属性の魔石をミックスすることで本来のスキルが変化する。
▼魔石レベル
レベルに依存。魔石を吸収すると、獲得経験値と同じ値のスキルポイントを取得する。高レベルの魔石ほど、摂取効果が効率的。
レベル9までの魔石=レベル×1
レベル10~19の魔石=レベル×2
レベル20~29の魔石=レベル×3
レベル30~39の魔石=レベル×4
・・・
「そんな効果があったのか、もっと早く知れば、いや、今からでも十分か、みんな好きなだけ分けてくれ」
「いいの?」
「ああ」
レナは、どういう属性を摂取するのだと聞いたところ、透明の無属性の魔石には、体力・魔力・迅速・精神・知性・幸運等の基礎数値を上昇させる効果があり、それを食していたと云う。これまで三人で山分けすると、属性が偏るようだ。
目の前の三人が、まず色ごとに魔石を分け、緑、深緑、水色、青、朱色、赤、土色、黄色、無色に分けている。俺も手伝った。
「新たなスキルを覚えるのは、レベルでいうとどれくらい?」
「高レベルの魔石はレベル70以上、それ以下でも稀にドロップすると云われている。このレッド・ボス・ウルフの魔石でファイア・ボールを覚えられた」
「おお、特殊で大型個体がレア魔獣なのか」
「ん、大体あっている」
「ということは、リアも剣技Ⅲと【火弾】でダブルっていうやつ?」
「そうそう」
満面の笑み、リアが頷く。
「あ!」
魔石を鑑定していたクリスティが、大きな土色の魔石を見て声を上げた。俺もそれを手に取って鑑定した。
▼【魔女鑑定】――――――――――――
クイーン・スパイダー・シルクの魔石(スキル:土弾)
これが、スキルの魔石か、これはレナでいいよな、そういってレナに渡した。俺が一番目に倒したスパイダー・シルクが一回り大きかったことを思い出した。なるほど。理解が進んだ。
「え、私が貰っていいの?」
「うんうん、レナも魔法スキルがあると、みんな勢ぞろい」
戸惑うレナに、クリスティも同意した。リアも自分が【火弾】を覚えたので、遠慮するなとレナに勧める。レナも嬉しそうにがぶりと食べた。一層眩しい土色の光が輝きを放った。黄粉饅頭みたいだ。
クリスティが、透明な小さな魔石を鑑定しながら、小さな魔獣は弱いので、警戒や探知、逃げ足や逃走、気配遮断、気配察知のような効果があるらしい。魔石自体が小さく効果が弱いので、スキル自体は取得できないが、少なくない効果を体感できるという。なので、俺が探知のギフトを持っていると云った時に、一角ウサギの透明の魔石を大量に食べていたのだと思っていたようだ。
「こんなにたくさんの魔石を鑑定したら、鑑定レベルが上がりそう」
クリスティも上機嫌だ。
「この情報を知ったからには、レベルを上げて高ランクの魔獣を倒したいよな」
俺が呟くと
「そうやって、毎年何人もの愚かな男が魔獣の餌になっている」
クリスティにクギを刺された。はははとリアとレナは笑う。
「冒険者パーティは、何人くらいで組むのが一般的なのだ」
「初心者は二人から始めて、他と合体して四人とか六人とか、増えていく感じかな、途中で死ぬこともあるから、三人や五人のパーティはそういう意味もある、人数が多いほどやっぱり強い、多くても六人くらいかな」
「盾職や、槍、回復職もいるのか?」
「盾だけっていうのは知らない。片手剣とライトシールドの組み合わせはいる。槍使いもいる。回復職は滅多に見ない。後天的にスキルの魔石で回復スキルを覚える人の方が多いかな、高レベルの魔獣は、自己治癒というスキルを持っている」
「自己治癒か、他人は治せないの?」
「他人を治せる回復スキルもあるみたいよ、この村や街では見たことはないけど、噂程度で聴いたことがある、でも、本人は戦えないから、高レベルのパーティになると、自己治癒の方が人気みたい」
「ああ、戦えないヒーラーの限界か。そういう扱いもあるか」
そんな話をしながら、1000個の魔石を鑑定して、仕分けが終わった。クリスティと俺の鑑定レベルがⅢになった。魔石は250個ずつに分けた。今は現金より、強さが欲しい。みんなも食材と寝床を確保したので同じ気持ちらしい。衣類と武器調達の目途も立ったことと、四人が魔法スキルを覚えたことも大きい。
「やった!【鑑定Ⅲ】になった」
「おめでとう、俺も【鑑定Ⅲ】になった」
「おめでとう、アレックスのスキルレベルが上がるの、早くない?」
「私もそう思う、レベルもスキルレベルも追いつかれ、追い抜かれそう」
それは俺も感じていた。三割くらい早い気がする。根拠はないが、なんとなくこの時はそう思った。
「ねえ、一度に250個も食べられないから、食事の都度、5個ずつくらい出して、小さな魔石なら10個は行ける」
「わかったよ、だいたい二週間分くらいだな」
「うん、楽しみ、強くなれそう」
それぞれ四人に分けた魔石を、15個手元に残して、あとは回収手帳に戻した。まさか、魔石を喰うとか、想像もしていなかったな。拾ったときは固いのに、食べるときは饅頭みたい、不思議だ。ちなみに透明な小さな魔石は饅頭というより、クッキーみたいな食感だった。摩訶不思議だ。これミキサーにかけてプロテインみたいに飲めば一気に摂取できるよな、などとクダラナイ事ばかり頭に浮かぶ。俺の前世はくだらなかったのだろうか。ノーヒント状態だ。
収納が終わると、今度はレナが俺に甘えたように背中に抱き着いてきた。
「ねえ、アレックス」
「早く、訓練場を作ってよ、土弾を打ちたくて堪らないの」
なんか、セクシーだな、そのオネダリの声色。棒が立ちそうになった。あ、声に出た。
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