第4話『学校の屋上』 『時計』 『穿つ』
学業という生業には必ず、集団が求められる。
自己の行動一つにも注意を払わなければ、明日にも私の居場所はなくなるであろう。
まだ大人でもないのに将来のことを考え、選択し、無難な生き方を教え込まされるこの時間が
私の今後にとってどれくらいの価値があるのだろうか。
そんなナイーブな感情のためか、教師の言葉が多国語に聞こえてくる4時限目の最後。
終業後に行われるであろう、クラス内でのやり取りを予想し『時計』を見ながら静かに待った。
チャイムが鳴ると案の定複数の友人(仮)が声をかけてきたが適当な理由を着けて笑顔で断る。
理由もなく断ると今後に支障が出る、正直めんどいが疎かにするともっとめんどいことになる。
早く一人になりたいという気持ちを抑えつつ私は教室を後にした。
最近では昼休みに一人でふらつくことが多くなり、おかげで学校の設備が詳しくなった。
決して孤独というわけではなく、私は定期的に他人と距離を取らないといけない体質なのだ。
そのため行先は決めずに、思いついた場所へ向かうのが最近の決め方。
(今日は晴れだから・・・・・・屋上にいってみようかな?)
入学して半年、実は屋上へはまだ訪れたことはなかった。
小中学校の校舎には設置されておらず、正直に言うと少し期待している自分がいた。
階段を昇り入口に到着。しかしドアノブを回すが残念ながら扉は開かなかった。
差し込み式の鍵で付近に窓もない。
おそらくだが、教員がカギを管理しており普段は立ち入り禁止なのだろう。
私は教室に戻ろうとしたが、今日は少し気分が違った。
再度ドアノブをつかむと瞳を閉じて小声で
『穿つ・・・・・・』と一言。
そしてノブを回すと閉まっていたはずの扉が開いたのだった。
扉を開くと冷たい風が肌に触れた。
秋の気候へ変わりつつあるこの時期、外へ出るのは億劫なはずだが
『学校の屋上』という特別感に、ワクワクしていた。
屋上へ出るとそこはフェンスで囲まれた狭い印象を与える空間。
特にオブジェクトは無く、思いのほか殺風景に感じた。
グラウンドが見下ろせる箇所まで移動すると、数人の男子学生が元気に走り回っていた。
思った以上に何も感想がないことに少し落ち込んだ私。
ちょうど予鈴が鳴り、自分の割り当てられた教室へ戻るためは屋上の入口へ向かった。
すると、1人の男子学生が大きなあくびと共に入口上から姿を現した。
そして体を起こすと、少し高い場所から飛び降りたところで私と目が合った。
「え?」
「え?」
互いに驚いた表情で固まる。
私は考えた、(なぜ鍵の閉じていた場所に人がいるのだろう?)
そして同時に焦りを感じ、背中に嫌な汗をかき始めていた・・・・・・。
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