第4話 憧れの場所
次の日の朝、私はいつもより早い時間に目が覚めた。
時計を見ると、時刻は朝の5時を回ったところだった。
眠たい目をこすり、携帯電話を確認する。
昨夜、お母さんに送ったメールの返事が届いていた。
気をつけて、楽しんできてね。と書かれたそのメールに返信をして、
私は身支度を整えた。
ホテルの朝食はバイキングだった。
好きなものを取り皿に載せ、空いている席へと座る。
窓の外の道ゆく人々の流れを見つめながら、黙々と朝食を食べた。
しばらく、部屋でぼんやりとした時間を過ごした後、私は空港へと向かった。
今日は、那覇空港から石垣島へ向かうことになっていた。
石垣島へは飛行機で約1時間ほどの距離だった。
飛行機に乗ってからはあっという間だった。
石垣島に到着した私は、那覇空港とはまた違った南国の雰囲気を味わっていた。
八重山諸島の玄関口、と書かれたその空港は様々な観光客で賑わっていた。
石垣空港から、目的地の石垣港離島ターミナルまでは直行バスで30分ほどかかる。
私はチケットを買い、バスに乗り込んだ。南国らしい景色の中を走るバスは開放感に溢れていた。
石垣港離島ターミナルに到着した私は、波照間島への高速船が出港するまでの間、
ターミナルの中を見て回っていた。たくさんのおみやげ物が並ぶ中、私はブルーシールアイスクリームという名前のアイス屋さんを見つけ、紅イモのアイスを買って食べた。甘くてとってもおいしかった。
「お姉ちゃん、どこから来たの?」
私が椅子に座ってアイスを食べていると、地元のおばあさんらしき人が隣に座り、話しかけてきた。
「北海道です」
「まあ、遠くから」
おばあさんはすごく驚いた様子で言った。いよいよ、一人旅をしているという実感が湧いてきた。しばらくして、波照間島行きの高速船が出港した。
外は雨が降り始めていた。パーカーのフードを被り、船に乗り込む。
高速船は想像の何倍も高速だった。船は、座っているのもやっとなほどのとてつもない速さで海面を走り続けた。中には、気分が悪くなって横になってしまう人もいた。
私も気分が悪くなりそうになるのをどうにかこらえながら、座席にしがみつくようにして座っていた。
やがて、海の色が変わったことに気付いた頃、波照間島へと到着した。雨は上がっていた。虹がかかる空と、キラキラ光る海面が綺麗だった。
港に降り立つと、同じく数名の人々が船を降りてきた。
ようやく着いた。ここが、憧れの波照間島。
港では、地元の子供たちが数人で鬼ごっこをして楽しそうに遊んでいた。
「こんにちは」
ふと目があった女の子に挨拶をしてみたけど、その子は恥ずかしいのかあっという間に走って向こうに行ってしまった。
港から民宿西浜までは歩いて15分ほどの距離だった。私は大きな荷物を抱え、民宿へと歩き出した。
「あの、民宿西浜に泊まる方ですか…?」
後ろから小さな声がして、振り返る。私と同じように大きな荷物を抱えた小柄な女の子が立っていた。年は同じくらいだろうか、少し年上にも見えるその女の子は、色白でまるでお人形さんのように綺麗な顔立ちをしていた。
「はい、そうです」
「良かった…。あ、私、
「三井凪です。15歳です」
「15歳?一人で来たの?」
小夜さんは元々大きくて丸い目を、さらに大きく丸くさせてそう言った。
「どうしても、この場所に来たくて…」
「そっか。私も同じ。よろしくね、凪ちゃん」
「よろしくお願いします!」
こうして私は、この島に来て初めての友達ができた。
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