第3話 旅立ち
やがて夏休みに入り、波照間島へ出発する日がやってきた。
この日はお父さんも仕事が休みだったので、お母さんと弟と、家族全員で空港へ見送りに来てくれた。空港までは自宅から約1時間。行きの車中から、私はわくわくが止まらなかった。
「凪ちゃんが一人旅するって、大人になったね」
「もう、志人くんが泣きそうになってどうするのよ!」
お父さんは涙声で言った。私まで、何だか泣きそうになってしまう。
「お昼はどうする?」
「ちょうど羽田に着くのがお昼くらいだから、着いたらお弁当でも買おうかな」
「その後、那覇空港行きの便に乗り換えがあるから、時間に気をつけるのよ」
「わかった」
空港に到着し、まだ少し時間があったので3階の屋上送迎デッキで飛行機を見ることにした。初めて見る飛行機に大興奮の弟。
「ここで、飛び立つのを見てるからね」
「うん、行ってきます」
家族に別れを告げ、一人、2階の出発ロビーへと向かう。
ここからは本当に一人きりだ。
時間が来て、保安検査場を抜けて、搭乗口へ向かう。
7月末の飛行機は、夏休みの帰省のためか混雑していた。チケットに書かれた自分の席に着き、窓の外を眺める。3階の屋上送迎デッキに、家族の姿が見えた。
窓から家族に向かって手を振る。
いよいよ、出発の時がやってきた。
グンとした大きな力が体全体にかかり、機体は勢いよく滑走を始めた。
機内の角度が少しずつ上っていく。ふわりとした感覚が体を包む。
飛行機は空へと舞い上がった。
羽田空港に到着した後、私はお弁当を買おうと思い、空港内を散策した。
いくつかのお店が立ち並ぶエリアに、お弁当屋さんを見つけた。
2色弁当を購入して、近くの休憩コーナーで昼食にした。
それから、今度は那覇空港行きの飛行機に乗り込む。
東京の滞在時間は空港だけで2時間ほどだったが、色々なお店を見て回るのは楽しかった。
那覇空港に到着した頃には、夕方になっていた。
まさに、南国といった雰囲気に私は思わず圧倒された。
歓迎と大きく書かれた看板をくぐり抜け、空港内へと入っていく。
おみやげも見たかったが、荷物になるので帰りにゆっくり見ることにした。
この日は、那覇市内に一泊することになっていた。
空港近くのホテルに到着した私は、大きな荷物をベッドの脇に置いて、
ふーっと息をついた。
晩ご飯、どうしようかなと思った。鞄から携帯電話を取り出し、検索をする。
すぐ近くに全国チェーンのお弁当屋さんがあるらしい。少し休憩してから行ってみようと思った。
お弁当屋さんには様々な種類のお弁当があった。どうせなら、沖縄らしいものが食べたいと思い、私はゴーヤーチャンプルー弁当を注文した。部屋に戻って、お弁当を開く。初めて口にしたゴーヤーは思ったよりも苦くて、びっくりした。
ホテルの部屋から窓の外を眺める。那覇の街は都会で、私は小さい頃に住んでいた街のことを思い出していた。
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