第2話 相談
その日の夕方、私は旭川のおばあちゃんに電話をかけた。
一人旅のことを相談したいと思ったからだ。
「もしもし、おばあちゃん?凪だけど」
「あら、凪ちゃん。久しぶりね」
私は最近の学校のこと、友達とのこと、それから、一人旅に行きたいことを話した。
「あのね、私、夏休みに一人旅がしたいの」
「一人旅?どこまで行くの?」
「波照間島」
そう答えた途端、電話口のおばあちゃんの声がしなくなった。
「もしもし?おばあちゃん…?」
「ああ、ごめんなさいね」
「波照間島って、知ってる?日本の一番南にある島なんだけど」
「わかるわよ。でも、どうしてそこへ行きたいの?」
私は、お母さんの鏡台に眠る綺麗な海の絵葉書の話をした。
小さい頃から、その場所に行きたいと憧れていたことを。
「…まだ、大事に持っていたのね」
「えっ?」
「なんでもないわ」
おばあちゃんはそう言って、電話の向こうで笑った。
「凪ちゃんが決めたことだものね。おばあちゃんは賛成よ」
「やったあ、ありがとう!」
「お母さんには、おばあちゃんから話しておくわね」
「うん。また今度、遊びに行くからね」
「待ってるわね」
そう言って、電話を切った。
その夜、お母さんとおばあちゃんは長い時間、電話をしていた。
翌朝、起きてきた私にお母さんは言った。
「一人旅、行ってもいいよ」
「えっ、本当に?」
「うん。昨日ね、おばあちゃんから電話もらったの。凪がどれだけ行きたいのか、おばあちゃん、色々話してくれたの」
お母さんは絵葉書を手に持っていた。
「これ、お母さんの宝物なの」
「綺麗な海。お母さんは行ったことがあるの?」
「ないの。でも、いつか行ってみたいな」
「そっか…私もこの場所を自分の目で見たいの」
「うん。お父さんは心配するかもしれないけど、本当に一人で大丈夫?」
「不安だけど、やってみる」
「よし、そうと決まったら準備しなくちゃね!」
そう言って、お母さんはまず飛行機のチケットを手配した。
旅好きのお母さんは結婚前はよく日本国内だけでなく、海外にも旅をしていたらしく、旅の手配はお手の物だった。
あっという間にチケットを購入し、次は宿の手配に入った。
波照間島にはホテルや旅館、民宿が数件あるようで、ホームページを見比べて、
しばらく考えていた。
「凪は、どこがいいと思う?」
「あの海の近くがいい」
「ニシ浜の近くか…。やっぱり、ここかな?」
お母さんは、民宿西浜というサイトを見せてくれた。
決して綺麗とは言い難い外観だったけど、味があって一人旅って感じがする。
離れの個室もあったので、ここに決めることにした。
こうして、私は夏休みに2週間、波照間島への一人旅をすることになった。
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