第12話
社長、お願いです。もう一度だけ共同攻略部隊の編成を各社に打診して下さい。
「もう何度も打診はしてるわ。でもね……綾小路探索会社や他社から良い返事は返ってきてないのよ。特に綾小路探索会社の実行部隊隊長からは抗議がきてる始末なの……こんな状態でボス討伐からの捜索救難なんって無理よ……」
くっ……
「無理にでも捜索したいのなら、私達だけの力で探せって言われてしまったの」
そんな事が出来れば、既にダンジョンで捜索救難をしている。無理だから力添えを頼んでいるのに、こんなに頼んでも無理ならば諦めるしか手はないのか……
「これは噂なんだけど、自衛隊が三鷹の森ダンジョンに機甲科部隊を派遣すると言う風な事が囁かれているのよ」
今更、機甲部隊を入れても遅すぎる……国は何時も後手にしか動かない。
「そうね。でも仕方がないわよ。国だって無限に予算を使える訳ではないのだから、今回の我が社のスキル持ちが敗れる事態を国は重く受け止めたみたいね」
私達がダンジョンから帰って来たのは4日前の事なのに、既に国が動くのは……それだけ三鷹の森ダンジョンを危険視しているって事でいいのよね姉さん……
「そうね。そうでなくては国の動きが早すぎるわね」
それなら、内竈の捜索救難も……
私が話している最中に姉から会話を遮る形で、言葉が発せられてしまう。
「そこまでは無理よ……この噂がもしも本当ならば可能性はあるけど、もしもデマだったら?もしも、国が予定を変更して動かなかったら……」
姉が言いたいのは、国が動かない時は内竈の生存は絶望的だと言いたいのだろうな。
+-+-+-+
国は何時になったら動くんだ。
自衛隊から各社に協力要請がきたのだが、自衛隊から出撃命令が未だに出ていない状況が既に一週間も続いていた。このままだと内竈が持っている弾薬や食料が心もとないはずだ。
私は一刻も早く出撃がでる事を祈るしか手立てがなかった。
無力な私を許してくれ内竈……
「隊長殿、AAV7の整備を完了しました。足回りにガタがきていましたが、何とかパーツがメーカーから届いた事で何とか彼んとか形になりました」
うむ、おやっさん徹夜で整備を続けてくれて有難う御座います。
私達に出来る事はしたつもりだ。後は自衛隊の出撃命令を待つだけであった。
+-+-+-+
「出撃命令が出たわよ」
待ちに待った出撃命令が自衛隊の司令部から届いたのは、それから3日後のことであった。
「社長に隊長、観て下さいよ。最新式の35式中型戦車ですぜ。もしかして、今年の配備分を掻き集めていたから遅くなったんじゃないよな……」
本年度の生産分は10台って言ってたのに、35式中型戦車の数は15台あった。
「もしかして、ダンジョン暴走が原因で急遽増産したのかしら」
姉が言う通りなら、嬉しい誤算ではある。だが内竈のスキルでボスの
「35式の戦車砲は、10式戦車の44口径120mm滑腔砲と違い最新鋭の国産50口径120mm滑腔砲ですよ。このご時勢で戦車砲で何処まで戦えるかは不明ですよね」
狭いボス部屋で戦車を運用するのは、難しいだろうが、そこは自衛隊も馬鹿ではないし考えがあっての事なのだろうよ。
ダンション省には、我が社が三鷹の森ダンジョンのボス部屋での戦闘報告書を提出していたが、あの報告書に自衛隊は目を通しているか怪しいな。もしも、自衛隊とダンジョン省との連携が取れておらずに、今回の軍事行動を起こしたとなると、少しばかり雲行きも怪しくなるはずだ。
「隊長、16式機動戦闘車・改もありますよ。懐かしいな、でもあの16式の砲は105mmではなく35式と同じじゃないですか?」
おやっさんの言うとおり、35式と16式・改が横並びで止まっていると砲身の口径が同じ大きさであるのに気が付いた。
そして、車載装備でPMCで許されているのは40mm自動擲弾銃までである。我が社で40mm自動擲弾銃を装備しているのはAAV7しかないので、今回は我が社の最大戦力の車両での参加であったが、他社と比べると見劣りしていたのは内緒だ。
米軍の払い下げのストライカー装甲車や自衛隊の払い下げライセンス生産のAMVなどに比べると、AAV7など時代遅れでしかない。我が社にも自衛隊の払い下げ装甲車を配備していたが、数ヶ月前のダンジョン暴走で大破して、そのまま廃車になった経緯があるから仕方がない。
そのAAV7も暴走で足回りに負荷が掛かってしまい、帰社した後に動かなくなっていたが、おやっさんが優秀すぎて息を吹き返している。
このまま、何事も無くボスの討伐が終われば、内竈の捜索救難に向かえるのだが、果たして簡単に事が進むかは怪しいしだいだった。
非戦闘員の姉まで、今回のダンジョン攻略に数合わせで付いて着ていたから、私の心配事は減りはしない……
民間軍事会社は今日もダンジョンに挑む ~全滅したPMCを復活させてダンジョン攻略します~ 和蔵(わくら) @nuezou
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