第8話


「内竈、あの基地外キチガイの相手は私がする。お前はスキル持ちだと覚られない様に振舞えいいな」


 別府隊長は、俺にそう言うと俺たちの前に仁王立ちしている基地外キチガイの前まで行くと名刺を差し出し名乗っていた。 


「私は別府テクニカルの部隊長をしている別府皐月だ。貴社は初対面の相手に対して露骨な引き抜きをするのが慣わしなのか?もしもそうならば、我が社から抗議を貴社にする」


「あら失礼しましたわ。私とした事が興奮し過ぎて舞い上がってしまったのです。別府隊長さんや部下の方々に失礼な言葉使いがあった事をお詫びしますわ」


「謝罪を受け入れます」


 別府隊長が謝罪を受け入れると、相手も名刺を差し出してきていた。


「先程は名乗るのを忘れてしまいましたが、私は綾小路美花あやのこうじみかと言いますの以後お見知りおき下さい」


 綾小路美花と名乗った女性の名刺には、第1実行部隊指揮官と書かれていた。この人も女性で実行部隊の隊長なのだろう。うちの隊長とは正反対の容姿であるが、身のこなしが訓練された動きであった為に、戦えるだけの実力はあるのだろう。


 綾小路美花の容姿は、長髪の髪を後ろで纏めていたが邪魔にはならない様にしていた。そして顔立ちも町ですれ違えば二度見する程に整った容姿をしている。体形もゴリラ皐月と違いスレンダーでありながら、筋肉は確りと付いている感じがする。胸もゴリラのGカップには劣るが、それでもEはありそうだった。


 ゴリラは、着痩せするがTシャツなどになるとパツンパツンになる程に鍛え上げられた肉体を持ち、だが、容姿が善い為に見た目は美人である。


「BTCさんは、スキル持ちの方がいらっしゃるみたいで羨ましいですわ。是非とも我が社と業務提携して欲しいと思ってますの。いかがかしら別府さん」


「スキル持ちは私だが、私には現場の指揮権しか与えられていないので、そう言うお話は会社同士でして貰いたいですね。私の一存では今直ぐに返答はできかねます……でも、我が社にメリットがないなら、この場で断るかもしれませんがね」


「そうですか、それならば上に報告して、後日改めてお話し合いをさせて貰えれば、此方としても悪くない話ですし、そちらの会社としても悪くない話だと思いますわよ」


 少し別府隊長は考えだしていたが、直に綾小路氏に返答をしてしまう。隊長の一存で判断できないと言ったのは、あれは嘘だったみたいだ。


「やはり、我が社と貴社が業務提携共闘してもメリットがまったくない話ですので、この場でお断りさせてもらいます……」


「なっ……何って傲慢な態度ですの!我が社が共闘して戦いましょうって言っているのに、それを検討もしない内に断るって、話す前から決まっているかの如く話をする何って……」


「我が社は今現在の戦力でもダンジョンの攻略が可能だと判断しいる。それも単独の会社で攻略したとなれば宣伝効果も抜群ですからね。貴社も会社を立て直そうと必死なのは分かりますが、我が社としても単独攻略と言う宣伝文句があれば、どれだけの費用対効果が見込めるかに我が社の未来が懸かっているのですよ。そこをご理解いただきたい」


「ぐっ……分かりました。ですが、共闘要請は出させてもらいます。単独攻略を成し遂げた後でも善いのでご検討をしてくださいませ」


 別府隊長は、綾小路氏を見やるやニヤリと笑みをこぼして会釈をすると、直に全員乗車と命令をしATC実行部隊から離れて行ったのだった。




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 スキル持ちは表向きは別府隊長だとしたが、詳しく調べれば直に俺だと気が付くと思う、それまでは俺の周りは静かでいられるであろう。もしも、業界全体に知られてしまえば死に体の会社からの勧誘合戦になってしまうだろうな。


 そんな事は俺は望んでいないから、別府隊長が俺を庇ってくれたのは有難い。


そして、居間居る場所と言えば、物語とかで出てくる場所でお馴染みである場所である。そう、ダンジョンボスのボス部屋と言われる場所だ。


 今回のダンジョンアタックで、東京都下にあるダンジョンの1つである三鷹の森ダンジョンを攻略する予定なのだ。このダンジョンは大型平原ダンジョンで都内で残っているダンジョンでは一番古いダンジョンであった。


 そして、俺が3ヶ月前に大怪我をした場所でもある。


 今回の本当の目的はダンジョン攻略では無く、ダンジョンボス部屋までのルートの確認とトラップの解除だけであったが、隊長が106SP60式自走106mm無反動砲96WAPC96式装輪装甲車を見て性能を確認した事で、隊長の野望に火が付いてしまい社長に許可を取ってから、急遽このダンジョンの攻略をする事になってしまっていた。


「内竈、いよいよだ。気を引き締めてかかれ!」


 俺は笑顔のまま頷くとアクセルをゆっくり踏み込んでラヴ軽装甲機動車を前に進めだすと、併走していたパペット達の操る車両もゆっくり歩を進めだしていた。


 史上初の少数精鋭だけでのダンジョン攻略が、こうして幕をあけた。




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