第7話
俺達は戦闘が終了したので、パペットの乗っている乗り物を検分しはじめる。パペット達が操縦する事を前提に作られた兵器なので、大きさは軽自動車より小さいが、レーシングカートより少しだけ大きめと言った感じだ。
装甲も確りしており、実際の106SPより装甲が厚いのかもしれなかった。96式装輪装甲車の装甲も厚めで確りした作りをしている。両方の車両の上には旋回砲塔が載っており、360度の回転が可能である。特に目を見張るのは106SP車体だ。サスが74式戦車の油気圧式サスみたいになっていたりと、無茶苦茶な仕様であったが74式戦車の油気圧式サスの特徴はなんと言っても姿勢変化を自在に行なえる事である。
この油気圧式サスが搭載された106SPに死角と呼べるのは、もう頭上しかなかったからだ。87式自走高射機関砲みたいな作りで、左右に106mm無反動砲が付いており、その発射速度は機関砲と同じ速さであった。(意味不明)
まさに……小学生が考えた最強に強い106SPが此処に……爆誕したのだった……(俺が考えたと思わないでよね!)
それと89式装甲戦闘車に付いている35mm機関砲みたいな奴は、弾が炸裂弾である事に、またしても驚愕してしまっていた。おやっさん曰く、弾を見せて貰ったらHEAT弾の形をしていたと言っていた。
HEAT弾なら装甲が厚めの魔物を相手にしても通用するレベルではないだろうか?俺達は、それぞれが見た物を報告しあいながら、パペット達の運用方法を模索して行く事にした。
「内竈、この乗り物って私が乗っても動くと思うか?」
「「えっ!?」」
このゴリラは……いきなりとんでもない事を言い出していた。
「いや……この乗り物を見ていたら、乗りたくなったのだ……」
顔を少し紅潮させて別府隊長は、
口が裂けても「隊長が載ったら106SPが潰れてしまいます」とは言えなかった俺は、愛想笑いを浮かべて明後日の方角を向くと、軽装甲機動車に乗り込み発進準備をしはじめていた。
顔を俯かせて車内に乗り込んだ隊長を確認すると、俺は次の獲物を求めて車を発進させてしまった。
+-+-+-+
それから一時間が経過した頃だろうか、前方で戦闘の音がしはじめると、銃座で警戒をしていたおやっさんが叫びだしていた。
「11時の方角、距離2000、友軍と魔物の戦闘を確認」
「内竈、速度上げ、おやっさんは敵を視認し次第攻撃を開始。友軍には無線で私が連絡を入れておく」
隊長の命令が即座に下ろされると、俺はアクセルを踏み込み戦闘が行われている場所に急行していた。
丘陵の頂上に布陣を敷き魔物に包囲されている状況で、同じPMCの部隊は奮戦していたが、徐々に魔物の数に押されていた。
「此方BTC、此方BTC、貴軍の援護をする。其方から見て1時の方角から接近する。誤射に注意されたし」
「此方ATC、貴軍の援護に感謝する」
ATCだと……綾小路探索会社……この業界で最大手の民間軍事会社だ。最大手と言うだけあって、社員は特殊部隊の出身者で固められている会社である。特殊作戦群・第1空挺団 ・水陸機動団・中央即応連隊 ・特別警備隊などの人材が集まるのがATCである。
ATCは近年に出来たばっかりの会社であるが、社長が元統合幕僚長の綾小路敬三氏が起こした会社である。まだ数年の実績しかない会社だったが、元統合幕僚長であった強みを生かして特殊部隊の人員をリクルートしていた。その甲斐もあって、瞬く間に業界最大手にまで上り詰めた会社である。
だが、ATCにはスキル持ちはおらず、別府テクニカルと同じで前回のダンジョン暴走で大半の人員を消失していた。綾小路探索会社は以前の勢いは無くなったと風の噂で聞いていた。
「隊長、ATCが使っている車両を見て下さいよ。ありゃ最新型のストライカーですよ」
おやっさんは機関銃を撃ちながらでも隊長に無線で呼びかけていた。
「米軍の払い下げではないな……これだから金持ちは嫌いだ」
隊長何か仰いましたか?
「何でもない……」
俺達が乗る軽装甲機動車が、後方で指揮をしていた魔物を叩いたからか、魔物の勢いは止む。
「相変わらず無茶苦茶な火力ですな隊長」
「うむ……」
俺達の乗る軽装甲機動車と並走していたパペット達が、敵に楔を打ち込むと敵の陣形は、意図も簡単に崩れさり、残されたのは指揮官不在の烏合の衆と化した魔物だけであった。
「此方BTC、残敵を掃討されたし」
「……此方、あ、えっ……ATC……貴軍の援護に感謝する……えっ?……」
俺達は、車を止めると下車戦闘とを開始して、魔石の回収を始めだしていが、その間にもパペット達の苛烈な追撃は止まずに、敵である魔物は逃げ惑うがかりであった。
魔石を回収し終わる頃になると、ATCの車両が自分達の居る場所に来ると、一人の人物が車両から躍り出る感じに登場したのである。
「貴方達の中にスキル持ちが居るわよね。私の会社に入りなさい。私の部下になる事を許可してあげる」
「「「はっ!?」」」
俺達3人の口から出たのは、その言葉だけであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます