第5話
俺はダンジョン省の東京都下支部である立川まで来ている。
今日はダンジョン内で獲得したスキルを職員に見せて、国にスキルを登録する事になっていたからだ。
「それでは内竈さん、スキルの実演を宜しくお願いします」
その言葉で、俺はスキルを発動させた。
「パペットアーミー召還」
スキル名を叫ぶと俺の体が光だし、光が収まった時には俺の周りにはパペットの集団が武器を持たないで佇んでいた。
パペットが武器を持ってないのは何故だ。
俺は考えたが、何故パペット達は非武装で出現したのか謎のままであった。
「内竈さんの話では、このパペット達は武器を持って召還されるとなってましたが、今回のスキル発動では、非武装なのは何故なんでしょうか?」
俺は自分でも分からないと説明したが、職員は信じてもらえなかった。そして、パペットを一度戻してから、再度の召還をお願いされたので、俺は職員の言うがままにパペットを呼び出したが、またも非武装のままでの召還になってしまった。
これには職員も俺も社長達も困った表情をするしか出来ずにいると、別府隊長が突然の大声を張り上げると何やら捲くし立てる様に話し始めていた。
「内竈、あの時は敵に包囲されていた状況だったよな」
俺は隊長の言葉に頷くと、隊長は仮説を話はじめる。
「内竈が切羽つまった状況や、危険と判断してたらパペットはどうなると思う。もしも、私が言ってる事が正しいならば、パペットは完全フル武装で召還される……っと思うのだが……」
隊長の言葉に、その場に居合わせた者が一斉に賛同しはじめると、俺はパペットを戻して再度の召還を試みようとしていた。
「パペットアーミーしょうか……ん……」
スキル名を唱える最中に、隊長は俺の後ろに回り込んできたので、俺も目で追っていたのだが、いきなり隊長は俺の頭目掛けて拳を振り下ろそうとしていたので、俺はスキル名を唱えながら回避するのがやっとであった。
一瞬の時を置いて俺の体が光りだすと、パペットが慌しく俺の周りを囲ってしまい、そして、別府隊長を脅威と判断したのか、パペット達は武器を隊長に向けていたのだった。
「なるほど。このスキルは、召還した者が危機を感じたりしたら自動的に武装をして現れると、つまりはそう言う事なのですね?」
俺はよく分からなかったが、とりあえず職員の人の話しに合わせておくことにした。
「このパペットの武器の威力は、どのくらいあるのでしょうか?」
俺はパペットの指揮官を呼び出すと、この試験場の的に向って一発だけ撃てとだけ命令すると、指揮官は持っていた20式小銃を単発で発射した。
「なんですかこの威力は、小さいのに実銃と同じ威力ではないですか……どんな原理なんですか……」
職員やダンジョン省に雇われた学者などは、パペットが攻撃した的を繁々と見つめて、何やら言い合っているが俺に説明を求められても困るのだがね。
「今度は連射で的を攻撃して下さい」
職員の要求通りに俺は指揮官に20式小銃を撃たせると、またしても職員や学者達が騒ぎ出していた。
その後はスキルのLVがあり、LVが上がるとパペットの召還数が増えるなどの説明を職員と学者に説明して、スキルの登録を終えたのだった。
「皆、ご苦労だった。特に内竈は疲れただろう。何か食べてから家に帰るか?」
隊長の言動が変だ。
今まで部下の前で優しさを見せる事など無かったのに、ここに来て急な態度の変わり様はあからさまであるからだ。
別府隊長、急にどうしたのですか。今までは食事に誘うなど無かったのに……もしかして、あの時の言葉を……
「そうではない……そうではないが、たまには内竈と食事をしようかと思っただけなんだが……変だったか?」
あの古市さんは食事に誘わないのですか?
俺の言葉を聴いたおやっさんは、俺の横腹に肘鉄を食らわし、俺が沈黙した事を確認すると話を切り出しはじめていた。
「隊長、残念だがワシは所用があってな、皆と一緒に食事には行く事が叶わんのだ。申し訳ない隊長」
「皐月隊長、私も子供を迎えに行かないと行けないから、一緒に食事には行けないわよ」
「神奈社長、先に子供を迎えに行った方がいいのでは、時間も時間ですから」
隊長が社長に告げると、社長はおやっさんを連れて東京都下立川支部を後にすると、残されてしまったのは俺と隊長だけになってしまっていた。
「この近辺は復興が進んでいるが、やっぱり会社の近くまで戻ってから食事をした方がいいかな内竈?」
あれ、隊長の中では俺が既に食事に行く事が決定事項みたいだ。俺はどうしたら穏便に断れるか模索していたが、隊長は折り畳みのスマホを開くと既にお店を検索し始めていた。
その光景を目撃した俺は、猛獣の檻に入れられた気分になってしまったが、でも、隊長の横顔を眺めているとゴリラと一緒に食事するのも悪くはないかと思ってしまう。
スマホから手を離せゴリラ!
とは絶対に口が裂けても言えなかった。
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