035話 ジップライン
屍の一歩手前な熊尾龍太が倒れている崖上にはワイヤーが下るように張られている。そのワイヤーに滑車が外れないように取り付けられており、滑車からワイヤーが下に少し垂らしてありハーネスが取り付けられている。
つまりは移動するアクティビティであるジップラインが設置されている。
登って来た崖は渓谷の反対側だったらしく、行き先は反対側の下り斜面の先にある渓谷の下の方だ。
ジップラインが川を渡ってくれてるのと、かなり頑丈そうな新品の落下防止ネットが、設置されているのが優しさなんだろう。
この前の遊園地よりも、安全だとは思う。角度が急なだけで普通なんだけど普通なだけにやっぱり怖い。
「角度が急だし熊尾で安全確認しましょ」
「そうだね。熊尾くん起きろ〜」
返事はない。屍なんだろうか?
「突き落とせば起きるでしょ?よっと」
気絶してる熊尾龍太へ問答無用でジップラインのハーネスとベルトを希更さんがつけるので、俺も手伝う。
「先に行きたくないし熊尾くん、すまん」
装着が終わっても熊尾龍太は起きないので、希更さんがハーネスの締め付けをどんどんきつくする。
「がは!?何か悪い夢をみて空を飛んでたような??」
「それ予知夢よ」
混乱してる熊尾龍太を遠慮なく突き飛ばす希更さん。
「は?え?ノォォーーーーーーーーー!!」
無駄に初速をつけた熊尾龍太が渓谷の奥底へ消えていった。
そしてあっという間に終点にたどり着く熊尾龍太。
「早く滑車とハーネスを外してこっちに戻しなさいよ!!」
手動ハンドルで滑車だけこちらへ巻き上げる仕組みみたいだ。
「そんな口は言うけどこんなに締付けて、本当は嬉しいのだろう?」
熊尾龍太は締め上げられてるハーネスを中々外せないらしい。
「熊尾もう一回全力でイカせてあげるわ!!」
希更さんがキレ気味に熊尾が繋がれたままの滑車を巻き上げ始める。
「あ、激しい!!そんなに激しくしたら、出る!!俺が出てしまう!!」
ハーネスをある程度外していた熊尾龍太は高速で戻ってくる。なぜか希更さんは激怒らしく顔を真っ赤にしてる。
「セクハラ短小は死ね!!」
戻って来た熊尾龍太を希更さんが、さっとそこら辺で拾ったバット風な木の棒でカッキーンと打ち返す。希更さんが単なる悪口って珍しい。
「我が神々よ、我に守護をくださぁいーーー」
太い木の枝は希更さんのフルスイングに耐えきれず砕け散った。
そして熊尾龍太は渓谷の下へ高速で突き進み途中で外しかけてたハーネスから抜け出て、勢いあまって地面に突き刺さってる。
あれは死んだんじゃね?
「いい感じに滑車も空いたし次はどっちが行く?」
「ジップラインは初めてで、何も分からないから希更さんに任せるよ」
安全に下らないと熊尾龍太みたいになりそうだから希更さんに任せようと思う。
「じゃあ私が先に行くわ。最後は安全に受け止めるからしっかりとハーネス固定してから降りて来なさいよ」
希更さんはハーネスをしっかりとつけると、ワイヤーに沿って希更さんが加速しながら下って行く。
「キャーキャー♪」
希更さんは素晴らしい身体能力で楽しみつつ、見事に着地を決める。
「思ったよりも楽しいわよ!!早く来なさい〜♪」
そしてまた滑車を戻して俺もハーネスを着ける。距離は短いけど、やるとなると急角度すぎないかこれ??
熊尾龍太があれだけしてもハーネスしっかりしてれば大丈夫だったし、意を決して俺は地面を蹴って滑り出す。
滑るよりも落ちてる!!頬に当たる風がどんどん強くなって急加速してるのを実感する。そしてみるみる渓谷の底が近づいてくる。
構造的に大丈夫なのは分かるけど、やっぱりぶつかる!その恐怖心から思わず目を瞑る。その時ふわっと優しく静止する。恐る恐る目を開けると希更さんにお姫様抱っこされていた。
「えっと、そのありがとう」
はっこれは希更さんに対するセクハラなのでは!?だって密着してるぞ。まじで殺される気がする。
「ふっふーん♪このくらいは朝飯前よ。それじゃ外して先に行くわよ」
希更さんと、協力してハーネスを外して、進行方向を探すけど・・・おそらく進行方向を示していた看板は熊尾龍太がジップラインから抜けて激突したときのクッションになったらしく、粉砕されてなんと書いてあったか分からない。
「これは誰が悪いのかな?あははは、」
犯人は希更さんだけど指摘する勇気はない。だつて死にたくないし。
「そんなの看板に体当たりした熊尾に決まってるわ。責任取らせましょ」
いやいや、体当たりしたのじゃなくて吹っ飛ばされてたまたま看板があったのが正しいと思う。犯人は希更さんだよね?怖いから言わないけど。
「うーん、それでいいのかなぁ?ていうか看板無いし責任取る方法ないと思うけど」
「そう?熊尾ならなんとかするでしょ」
熊尾龍太と希更さん思ったよりも仲良いのかな?熊尾龍太を信頼してるみたいだしさ。あっ希更さんがドSで熊尾龍太がドM?もしかして俺がお邪魔虫なのでは?
そんな俺の思いを知ってか知らずか熊尾龍太の後頭部を踏んで顔面を地面へ押し付ける希更さん。いくらMでもそれは犯罪じゃね?
「あら?熊尾が起きないわ??」「・・・」
返事もできないで絶句していると、熊尾龍太がモゾモゾ動き出す。どうやら呼吸出来なくて苦しいらしい。
そして苦しんでる手が希更さんの内股へ触れる。このあと死ぬほどな目に合わされるけど、そんなところ触るなるて羨ましい。いやせめて生足じゃないと割に合わないか。
「っ!?死ね!!ヘンタイ」
希更さんが真っ赤になって飛び退くと、河原の石で熊尾龍太を埋め始める。
「水岡!!まじで殺す気しかないだろが!!生き埋めはやめろ」
熊尾龍太は復活して自力で脱出する。いやあれだけやられても無傷なそのブランドぽい登山ウェア凄くね?
「仕方ないわ。進むルート教えてから熊尾くん、死になさい」
希更さんは返事も聞かないで、石と岩の中間くらいな塊を投げつける。
「ギョギョギョ!!」
熊尾龍太はなんか奇声を発しながらも、ギリギリ避ける。
「それはあかんやつ!!当たったらミンチになるからな!!俺でもミンチからは回復出来ん!!というか誰が見ても、一本道!!ちゃんと安全対策バッチリされてるからな」
確かに渓谷から上がるためのルートに落下防止ネットが設置されている。
「ふん、知ってたわよ。真治そうでしょ?」
「えっ、うん、そんな気がする」
気さくには逆らえないからさ。許せ熊尾龍太。
「二人ともぼんく・・・何も言うまい。それよりも俺の話聞くよな?」
これは熊尾龍太の独壇場な演説タイムらしい。
「同志候補達よ!!今日も素晴らしい作品を紹介しよう!!【トマト準也@休止中】様
https://kakuyomu.jp/users/tomato23jun
【敵は夜の憎き蚊なんだけど!?】
https://kakuyomu.jp/works/16817139555457695761
この作品は素晴らしいぞ!!はーははは、思い出しただけでイケそうなのだ」
口を挟めないマシンガントークに、またしてもヘンタイ化している。何か安心感があるしたぶん今の
「本作を知る上で必要なのはエイルとの師弟関係だろう。エイルは自身の技術を惜しみなく公開するからな。時には役に立つこともあるだろう。
そんなエイルが専用のお題を、2つ出してそれぞれ【トマト準也@休止中】様が作品を書いた。その課題は、穴と大賢者だ。それぞれ作品を書いている。
エイルも書いてはいるがそちらはとうでも良いだろう。そしてめんどくなったのか、クロノヒョウ様の二千文字企画から、【眠れぬ夜の出来事】をチョイスして勝手に使っている。
【第5回「2000文字以内でお題に挑戦!」企画】
https://kakuyomu.jp/user_events/16817139554473329322
ここも確認するといい。これも一応エイルも参加はしているな。
本作はこの難易度をクリアしていること、そしてオチとアイディアの独創性は評価に値するだろう。その成長も含めて楽しみたまえよ。
【敵は夜の憎き蚊なんだけど!?】
https://kakuyomu.jp/works/16817139555457695761
ここだからな?いいか?
そして♡は少しでも読んで楽しかったら押せ。できたらコメントも差し上げるんだ。
面白ったら☆も忘れるな。誰かにおすすめするほど面白ければ、☆の後にオススメレビューを書くんだ。無料で楽しめるんだからこれくらいは当然だ」
「おっと本当に良ければ書籍を買えよ。わかったな?エイルとかいう誤字脱字だらけで成長しないおっさんとは違うのだよ」
長い。そして口を挟めない。ひたすら渓谷のそこから登ってるから半ばバックミュージックと化している。
「終わった?でもまだ私に痴漢したのは許してないから。その中身少し壊したほうがまともになるかしら?」
希更さんは鋭く熊尾龍太の頭蓋骨を掴むと握り潰そうとする。これはアイアンクローで物理的に熊尾龍太の脳を壊すつもりらしい。
「ぐっは!!作品を書かない水岡希更を触ったくらいで気にするな。本当の我が愛は【
「うわっ、最低。この
女の子の内股触っておいて、愛はないってクズなのでは?たぶん悪気も性欲もないから事故だと言いたいのだと思うけども。
希更さんにそんな言い訳は通じないで、頭を握られた熊尾龍太はまた俺達の進行方向のそれなりな先へ投げ飛ばされた。
「あれは死んだんじゃないの?」
「ギリギリ生きてるでしょ。あいつなんだかんだと加護ありそうだし」
「そうなのかなぁ?」
加護なんて信じないけども、まぁドMな人は打たれ強いのじゃないかな?
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