027話 この遊園地を舐めてはいけない

 バイトが、無くなって時間を気にしないで遊園地で遊べる。

 

 いくらなんでも、超速コーヒカップよりキツい乗り物もないと思うし絶叫マシンとか、なんでも来い。

 

 でもさ、変なやつみたいな感じで通りすがりの人に見られるのは辛い。何故かまた4人の太ももに寝かされてベンチを占領してる。

 

 何故か言い負かされて、気がついたら元に戻る事になってしまった。なので何あれ?という他人の視線は痛すぎる。特に希更さんが嬉しそうなので本格的に断りにくい。

 

「次は何がいいかな?海賊船とか?」

 

 俺の頭を撫でながら希更さんが、遊園地の地図を見てる。

 

「きさら、フェスティバルの内容がこの遊園地読めない。一回転どころかグルグル回されても普通な気がする。予想出来なさすぎて怖すぎる」

 

「ならこのハイマウンテンコースターの方が普通なんじゃない?」

 

「ゆきゆき、普通に落差80メートルはヤバい」

 

「ラストはやっぱり夕陽を眺める観覧車だよね?それまでは自分で操作するゴーカートが良くない?」

 

「ゆなちー、さっきのコーヒカップの例もある。爆速カートとかありうる」

 

 真田愛美さんのツッコミが一通り入ったので俺に注目が集まる。

 

「あんたはなにがいいのよ?」

 

 何ってなんだろう?

 

「コーヒカップよりも恐ろしいのはないと思うし、3つ全部行かない?」

 

 というか、早くこの状況から抜け出したい。イジメだよ?

 

「そうね。なら海賊船、ハイマウンテンコースター、ゴーカートの順に行かない?」

 

「真ちゃんがそれでいいなら、フリーパスだし行こうか」

 

 真田愛美さんがまとめて、俺は開放されるかと思いきや、希更さんに片手を引かれて反対の手を武田唯さんと上杉雪菜さんが争ってる隙に、真田愛美さんが握ると歩き出す。

 

 なんだろう、女子高生ってこんなに男にスキンシップするの?これが普通なんだろうか?特に希更さんは男を嫌いだと思うけど、うーん・・・やっぱり何を考えてるのか分からないなぁ。

 

 先ずは海賊船というか大きな船の形をした建物に到着する。

 

「あれ?海賊船って船みたいなのに乗ってブランコみたいに揺られるやつじゃなかったけ?」

 

「普通はそうだけど、やっぱり常識が通用しない」

 

「とりあえず入ってみよう」

 

 希更さんと真田愛美さんが警戒してるけど俺はアトラクションが楽しみだし、どんどん行きたいかな。

 

「ようこそ!!海賊船へ!!それではキャプテン、サンケンジップのお宝を探して下さいね」

 

「サンケンシップ?船長が沈没船って名前って乗りたくないなぁ」

 

 案内アナウンスを聞いて、沈没船って名前の船長という設定の絶叫マシンとか天才かと思う。スリル満載じゃん。

 

「へぇ~、あんた本当に頭良いのね」

 

「簡単な英語をもじってるだけでしょ?」

 

「真ちゃん、希更に勉強を求めたらダメだって、運動は得意だけど勉強は苦手だからね」

 

 上杉雪菜さんが教えてくれる。

 

「ちょっと!?沈没船なんて英語知らなくてもテストで困らないから!!」

 

「それ以前にテストで困ってないきさらを、見たことないなぁ」

 

 武田唯さんが、追い打ちをかける。

 

 ここで俺達の順番がやって来て、進むと薄暗くて細い通路を歩くことになる。

 

「まさかのお化け屋敷??」

 

 真田愛美さんが呟くと、真後ろからギィギィ〜と音がする。

 

「「「「ひぃ~」」」」

 

 思わず振り向くと、土左衛門ような顔色の錆びついたカトラスを振り回す海賊船の船員が襲ってくる。

 

「西洋系のお化け屋敷!?」「きゃー!!」「真ちゃん助けて!」「いっやー!!」

 

 四者四様な反応だけどみんな怖いらしい。俺もビビッた。とりあえず水死体風な海賊から俺達は逃走を開始する。

 

 英語は分からないけど、脚の早くて強い希更さんはこういうときには頼もしい。

 

 走ってると真上から前方を塞ぐように、海賊服を着た骸骨がドッシーン!!と落ちてくる。腕は6本ありカトラスやノコギリ、クラシカルな鉄砲とかハンマーにバール、ムチまで持ってる。

 

「ひやぁ~!?」「きゃー!!」「真ちゃんヘルプ!!」「いやぁ~!!」

 

 希更さん以外の三人は俺へ襲ってくる、じゃなくて抱きついてくる。希更さんは怖いよりもビックリしてるみたいで、きゃーと言ってる。

 

 脇道が真横にあるから、そこへ俺達は進む。もう順路とか分からん。

 

「真ちゃんもう無理!!」「こんなん海賊船違う」「離れないで!絶対に離れないで」

 

「ウボォー!!」

 

 今度はゾンビ化した空中を泳ぐサメが後ろに現れる。

 

「ぴぃぎゃー!!」「マジ西洋系は無理!!」「きゃー!!」「真ちゃんサメ!!」

 

 俺も怖いけど、ここまでみんながめっちゃビビってると逆に冷静になるなぁ。

 

 いきなり真上から紫のイカかタコか触手かそんなヌメヌメベトベトなのが上から、うねうねしながら垂れてくる。

 

「きゅぴぃやー!?!」「キモいキモいキモい」「真ちゃん何!?ねぇ何なの!!」「きゃー真治これは、気持ち悪い!!」

 

 希更さんまで抱きついてくる。俺達は団子になりながら屈んで、後ろから襲ってくるゾンビ鮫からも逃げる。

 

 ゾンビ鮫が触手に絡まり止まる。今うちに走り去ろうとダッシュすると、少し前方右壁がガツン!!と倒れて、槍を持った完全に腐敗した人魚の軍団が現れる。

 

「ぴりゅりゃ!!」「心臓吐く!!怖すぎ!」「きゃー!気持ち悪っ」「真ちゃん、マーメイドが!!なんで!!」

 

 後門の触手、前門の腐敗人魚軍団という状況に追い込まれる。ここで左手壁に扉を見つける。これしかないと俺はドアノブを回して逃げ込む。

 

 ふぅ~、と一息つくとそこはボロボロな医務室だ。ベタすぎる。

 

「あぅ~」「真ちゃん、大丈夫じゃないよね?」「病院はダメ」「今度はなにかしら?」

 

 更に四人ともギュッと抱きついてくる。何も起こらないので、ゆっくり歩き始める。

 

 海賊船モチーフなので歩くだけで、ギィーギィーと音がする。四人のバクバクと鳴る心臓の音と足音しかない静寂のかな部屋の半分を超える。

 

「うらぁーー!!」

 

 突如何もなかったはずの手術台からメスやハサミが大量に突き刺さり、紫に変色した内臓が腹から出てる白衣ゾンビが飛び起きる。

 

「きゅるぁ!?」「きゃー!!グロすぎ!!」「だからダメなんだって!!」「真ちゃん死んでるのに動いてる!!」

 

 死んでるのに動いてるって今更じゃね?ツッコミをいうよりも早く、今度は手術道具とか棚とかが動き出す、ポルターガイストを起こす。

 

「きゅきゅ!!」「きゃー」「病院に行けなる!!」「真ちゃん止めて」

 

 武田唯さんは悲鳴のパターン多いな。希更さんだけ余裕ありそう。真田愛美さんは、ちゃんと喋れてるけどチビリそう。上杉雪菜さんは何故か俺に話しかけてくる。

 

 恐怖もなんかみんなのパニックを見てるお陰で乗り越えたのか、視野が広くなってきた。

 

 怯える4人に抱きつかれながら、医務室の奥へ進み次の部屋に出る。

 

「ひえっ!」「病院はダメなの!!」「真ちゃんベッドたくさん」

 

 今度は休息室というか入院場所というかそんな感じで、ハンモックとベッドがいっぱい並んでる。病院よりは寝室かな。

 

 テ○サみたいな半透明で白っぽくて、丸いちょっとコミカルさもある幽霊が、大量に漂う。

 

「ひゃい!?」「真ちゃんなに!!幽霊じゃん」「もうヤダ、怖い」「きゃ?あれ?」

 

 希更さんだけは、このボケに気がついたみたいだ。

 

 怖くないなーと思って歩いていると、テ○サが停止する。そして全てのテ○サが一拍おいていきなり、女の人それも確実に致命傷な大怪我で内臓が見えたり、首とかが捻れたりする血みどろスプラッタ幽霊に変化する。

 

「きゃー!!なんでよぉーー!!」「ぎゅらゃぱ」「真ちゃんもうヤダぁ」「うぅ怖すぎ絶対に夢に出るやつぅ」

 

 希更さんと俺は油断からの不意打ちをやられた状態だ。武田唯さんはそろそろ発音する方が難しい悲鳴を上げてるし、上杉雪菜さんと真田愛美さんのメンタルは限界が近そうだ。

 

 スプラッタ幽霊の寝室からもなんとか抜け出すとそこは、ボロボロだけど船長室みたいだ。目の前には長いテーブルがあり、ボロボロだけど豪華な椅子がある。

 

 その椅子には身体中を銃で撃たれて致命傷を受けてるような、筋肉ムキムキ眼帯に片手はフック、長い髭を蓄えたスキンヘッドに海賊服を着たおっさんが座っている。

 

『くぅーははは、このサンケンジップ様のお宝は渡さない!!死ね!!』

 

「きゃー!なんでグロいのよ!!」「きゅぅ」「真ちゃんもう無理!!」「ヤダよぉ怖いのヤダ」

 

 なんか武田唯さんは、意識が飛びそうだし、真田愛美さんは泣きそうだし、上杉雪菜さんはギブアップしてる。

 

 希更さんも思いっきり抱きついてて、その締付けダメージが、ゾンビよりも俺は辛かったりする。

 

 まぁテーブルには5丁ほど色々な銃が置かれている。まぁこれで船長退治するのだろう。

 

 俺は迷わず一番大きなライフルを手に取り、船長に向けて引き金を引いた。

 

 すると船長が大爆発して死肉と血をまき散らす。うげぇ、なんでこうなるかなぁ。

 

「ひゅあー!?」「きゃー!あんたいきなり何するのよ!!」「真ちゃん人が爆破!?」「もう船のらないぃ」

 

 なんか希更さんには怒られて、真田愛美さんは幼児退行し始める。

 

 でもゴールポイし四人を連れて進むとそこには、宝箱がある。

 

 恐る恐る開けると中には、ガーリック95%使用による夢のハンバーガー無料券が入っていた。つまりほぼすべてガーリックである。

 

「「「「ばっかじゃないの!!こんなのいるかぁ!!」」」」

 

 四人の声が見事にはもる。これは苦労した割りに合わない。でも四人とも元気になったし良かった。

 

 こうしてお宝が残念すぎる海賊船を攻略したのだった。

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