026話 みんな被害者なんだけど
時は少し遡り希更がデートに出かける頃の真治のバイトをしてるファミレスである。
兎田友梨の百合百合し隊と、虎井遥輝の彼氏になり隊を中心に安倍真治のデートを邪魔する気だった者達が全員集まっている。
「この前迷惑かけたから、ファミレス貸し切りで大食い大会するわよ」
何故か大食い大会を開催する兎田友梨である。
「仕方ないよな。迷惑かけたし。とりあえず食うぞ〜」
「「「「「おーー!!」」」」」
何故か同意する虎井遥輝である。
名前が登場する気配のない店長は、それよりも普通に営業したかっただろうが、現実は無情である。
でも兎田警備保障の社員が貸し切らせて欲しいとやって来て、断る勇気も大きな収入を断る権限も店長になかったから仕方ないだろう。営利組織である会社は利益を追求しなければ、倒産するから仕方ない。
「ご注文はなんになさいますか?」
「メンマラーメン!!」「サンマ定食」「カレーうどん」「ハンバーグセット」「チーズチャーハン」「ラーメンから丼ぶり除いたやつ」「カツ丼をカツ抜きで」「ツインハンバーグ」「フリスビー丼」「卵かけ御飯」「ツインチョコレートパフェ」
「ドリンクバーは貸し切り特典としまして無料飲み放題ですのでご自由にお使い下さい。料理は定価ですので改めましてご注意ください。それではお待ち下さい」
食べ放題にはならないのはファミレスなので仕方ない。
「ところでさお代は誰が払うんだ?」
「そりゃもちろん負けたほうよ」
「まさか兎田警備保障の社員も参加者か?」
「もちろんよ。運動部男子に文化系女子なのよハンデつけて丁度良いのよ」
明らかに食いそうなガタイに虎井遥輝は表情を引き攣らせつつ払えないので、負けは許されない。
「そうか、お前ら食うしかないぞ!!遠慮なく注文しろよ」
店の奥から店長の叫びがする。
「嬉しいけども!!今からバイトの大学生が勝手に休んでワンオペなんだよ!空気読め!」
接客業なのだが、お客様が神様的扱いを受けたいならそれなりに金を払えという事だ。貸し切りも結局は格安しかもドリンクバーをサービスしている。利益率の高くない飲食業なので店長の魂の叫びを誰が否定できるのだろう?いないはずだ。
ちなみに料金が高い店はその資金を、社員教育や清掃要員などなどあらゆるサービスと教育に、資金を振り分けても利益が十分残る。だからこそサービスの質が高いのだ。
安いということは、そういったサービスも材料費も、安全性などなどあらゆるコストカットした結果でもある。安さは企業努力の成果なのだが高い質まで求めてはいけない。
「その苦労実によく分かる!!急病とかご不幸とかで人が足りないときに、仕事が忙しくなる」
「あるある、警備アラーム鳴ったり、出動要請が重なったりな」
「身体は1つしか無いのが偉い人には分からんのだ」
コストカットとブラック企業は別なので、払うべき残業代を払わない、労働基準法違反の長時間労働などをさせることは犯罪である。
「労働者仲間よ!!せめて配膳くらい貸し切りなのだセルフにしようではないか?」
「いいけど、社長令嬢の私に対する文句なのかしら?」
黒スーツに黒サングラスのガタイが良い男達が立ち上がり、頭を下げる。
「「「「「いえ、文句など何一つございません」」」」」
この時何故か、ファミレスの店長とヤクザファションの男達は心が通じ合った。ブラック同志となったのだ。
食器に料理を盛り付けると、黒スーツ達が率先して配膳していく。
間違いだらけだが、そっと入れ替えて特に大きな問題はなく大食い大会は進んでいった。
いくらハンディあるとはいえ、食べ盛りのしかも運動部男子は脂っこさもものともせず、食べまくった。
百合百合し隊は、そもそも文化系で食は細いし、黒スーツは量は食べれてもそこは大人というかおっさんなので、ファミレスのハンバーグや揚げ物に胸焼けで、お冷を飲んでいる。
「どんな胃袋してるのよ?こうなれば仕方ない!やってやりなさい」
「「「「「目が回れ!!」」」」」
百合百合し隊は禁断の奥の手、魔法を使って彼氏になり隊を壊滅させようとする。
「チッ止めるぞ、式神起動」
虎井遥輝だけ紙ナプキンなのは、自前の紙を節約なのか、凄い技術の無駄遣いなのか難しい事だ。
目が回る呪いを肩代わりした式神はあっという間に、ファミレスをグッチャグチャにする。
「やばっ、普通のファミレスで2回目はばれる!!」
流石に兎田友梨もファミレス破壊2回目は、まずいと攻撃の手を止める。
しかしもう遅く、営業に支障があるレベルで破壊済みである。
その音に何事かと店長が厨房から顔を出す。
そして目撃する惨状に貸し切り後の営業を諦めたのだった。
「あのーそれだけやったならしっかりと、売り上げに貢献だけはお願いします」
「仕方ないわ。チョコレートケーキをホールで持ってきて」
「ラーメンを追加よろしく」
こうして大食い大会はかなりの売り上げに貢献して終わったのだった。
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安倍家の三人が、陽子のお弁当を食べながら真相を話していた。安倍真治がケンカする直前である。
「なんでお兄ちゃんのクラスの人がほとんどいないのかな?」
安倍典子は集めてこそいないが、確実にデートに邪魔が入ると思っている。
「あらあら、真治の事を考えてお父さんにお願いしてわファミレスで大食いしてもらってるわよ」
「マジ!?」
さすがの天使ちゃんもドン引きである。
「はーははは、記憶の操作くらい簡単だからな」
「そんな簡単に記憶を書き換えていいの?」
安倍家は両親の倫理観が終わってるようだ。
「私の真治ためよ?何も問題ないわ。男なんだし沢山の女の子と遊ばないと人生つまらないでしょ?そのためにわざわざ呼んだのよ」
どうやらマリオネット魔法で、生徒の記憶を改ざんするために晴人を呼んだらしい。夫婦で楽しそうに遊んでるので、夫婦デートでも、あるのは間違いないけども。
「なーに困っても魔法協会は俺達に勝てないからな、誰も止められないのさ」
入院生活が長くて、更に親父は出張が多かった事、真治の前では割りと普通の人だった事もあり天使ちゃんはここまでヤバい人と知らなかった。
「ねぇ、もしかして産みのお母さんが消えたのって・・・」
「俺は悪くないぞ。あいつと来たら、何しても俺が揉み消してくれると好き放題して放置してたからな。物事は限度があるだろ?」
「そうよ。やるときは証拠も残さず、タイミング良くやらないとね」
「全くだ。魔法使いが現代で生きるには要領良くないとな」
「そんな上手くやる方が難しいと、思うのだけど」
ドン引きしつつも天使ちゃんはハーレムしてる兄を見る。家族になるとかとは別として、遊ぶだけなら確かに楽しそうとは思う。
「魔法使い犯罪者を自浄する仕事やってるからな楽勝さ」
「そうよ。いざとなれば揉み消す伝手あるのよ」
Sランクの魔法使いでしかも戦闘系能力の二人は汚れ仕事も行うようだ。そりゃ非合法に人を消すこともあるので、倫理観がちょっとズレても仕方ないかもしれない。
「陽子と初めて仕事したときは、ビビッと来たな」
「私もよ。あんなに固有魔法は噛み合うし、ぶっ殺しても引かれないし楽しかったわ」
惚気け始める夫婦なのだが、言ってる事が物騒すぎる。
「あ、うん、良かったね」
天使ちゃんはドン引きもドン引きである。知らない方が良かったと心から後悔してる。
「ちゃんとぶっ殺すのは極刑になるような犯罪者だけよ。ちょっと刑法に触れたとかなら半殺しだからね」
「それよりも、陽子はよくフェスティバル中なのにチケットあったな?」
「このフェスティバルは地元の新聞社が協賛して、新聞勧誘のときに配ってるのよ。ちょっと巻き上げたわ」
「さすが!!安心して、家庭を任せられるな」
全く安心出来ないけども、天使ちゃんは相槌をいれながらやばい人達の話しを聞くのだった。
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