024話 惚れた?マー

 安倍真治の第一印象は名家の1人だ。安倍家と言えば日本の魔法使いでは、戦闘系の双璧だから。

 

 芦屋家と並ぶ直接的に戦争や殺し合い暗殺をやってきた歴史ある者達だ。安倍真治がクラスに編入するまでは、水岡家つまりきさらが一番の名家だった。

 

 水岡家は占いとか、除霊とかジャンルが違うけど歴史も実力もしっかりある。実際に日本魔法協会の会長がきさらの祖父である水岡優人なのは間違いない。

 

 きさらは本家の直系で魔法の才能的にも、跡継ぎになり得るから格では真ちゃんより上。

 

 クラスでも、きさらは魔法使いとしては1人だけAランク。なのに本人は家とか才能とか気にしないから付き合いやすい。

 

 だから安倍真治の第一印象は、顔は悪くないし安倍家の人なら嫌われなければ良い、と思ったくらいだった。

 

 想定外なのは、まさかのきさらが惚れた事だ。世の中は分からないものだけど最初は友達として心の中で応援した。

 

 ところがだ。きさらは思ったよりも奥手で話しかけるところで躓いたし、悩んで結局チャンスを逃してしまう。

 

 そしたら真ちゃんの妹がやってきて、クラスを引っ掻き回していった。これはやばいと私達も力を貸すことにした。きさらがこのままだと可哀想だから。

 

 そのおかげとたまたまきさらが、バイト帰りの真ちゃんを見つけて仲良くなったのもあって、やっとレイン交換も出来た。

 

 真ちゃんが名家とかの変なプライドとかクズ野郎な可能性と、きさらがレイン交換しても友達でそのまま卒業まで終わる事を心配もして、ゆなちーとゆきゆきも巻き込んでいろいろとやってみた。

 

 ゆきゆきは思ったよりも乗り気だったのは真ちゃんが、思ったよりも紳士的だったからだと思う。

 

 それで評価は真ちゃんは悪くない男というか、ちゃんと異性に興味あるけどきさらの想いどころか、妹ちゃんのしたことにも気が付いてなさそう。

 

 ついにきさらは勇気を出して、真ちゃんのバイト出待ちして帰ったらしい。こうなればデートに誘ってしまえばカップルに成れると、一芝居して無理矢理遊園地デートをすれば真ちゃんもきさらの想いに気が付くという作戦。

 

 男は度胸がないから告白出来ない生き物だ。だから確実に成功するとこっちから、それとなーくアピールするのだけど、きさらは自力で想いに気が付いて貰えない可能性もある。

 

 なぜか熊尾のバカがチケット売ってくれというから売ったら、デートに混ざってた。

 

 これはさすがに予想外だけど、元々きさらが浮かれてたしクラスのバカ共が邪魔しに来るのは予想してた。私達でバカ共を排除と、たぶんガーリックフェスティバルに気が付いてないきさらを助けるために、熊尾に売ったチケット代金で豪華なお弁当を用意してみたりした。

 

 私達はあくまできさらの恋を応援してた。ゆなちーはちょっと本気で、真ちゃんを狙ってた気もする。

 

 そんな三人で、遊園地できさら達を尾行しながら邪魔者を探した。なぜか熊尾しかクラスメートが見つからないけど、やっぱりいない。

 

 それならそれで良いと安心したらやっぱりきさらも真ちゃんもお昼ごはんに困りだした。

 

 ここも想定どおりに助けて、後は上手くきさらに真ちゃんとの距離を更に近づけるようにアシストしてみた。

 

 照れてても、最初のあーんさえ乗り越えたら幸せそうにきさらが真ちゃんに餌付けしてて上手くここも芝居出来たと思う。

 

 そんなときに大学生か新社会人くらいの男達がナンパしてきた。ぶっちゃけこっちにはきさらがいるし、適当にあしらうつもりだった。

 

 その前にきさらがキレるかと思ったら、存外に真ちゃんが立ち向かった。

 

 一人目の腕を掴むとあっという間に地面に転がして、情け容赦なく蹴り飛ばした。

 

 ビックリしてたら、残りの二人も真ちゃんに殴りかかけども、いつもののんびりしてて、穏やかな様子とは違って鋭い目つきでパンチを躱す。そして冷静にカウンターを放ちやっつけて、追撃もやってのける。

 

 でもやっぱり3対1は不利すぎて真ちゃんが殴られてしまう。

 

 ものすごく心配したけど、全く動じてない瞳で次の連続攻撃を避ける。そしてあっさりと掴みかかって地面に転がしてしまう。

 

 止めもためらいなくやってしまう。

 

 声をかける暇もないくらい鮮やかに守らてしまった。

 

 これは少女漫画でも見ないカッコ良さだった。あの一瞬で変わった戦う男の顔は反則。

 

 その後に来た警備員にも紳士的な対応をしてて私の好感度は爆上がりした。ヤバイ、ドキドキが止まらない。

 

 連れて行かれそうになったから、なんとか真ちゃんを守ろうと頑張た。そしたらキレイなお姉さんがやってきて、ナンパ野郎達の今日の悪行を暴いてしまった。

 

 真ちゃんをクールにほめて去っていった。なんか山積みなクレーンゲームの景品の向こう側だけど!

 

 あれ?このままだと今日の真ちゃんのイメージがあのサングラスお姉さんにとられるのでは?

 

 そうなると真ちゃんの恋心も奪われてると言っても過言ではないのでは?

 

 そこで私は思い出した。真ちゃん後頭部を思いっきり殴られてる!!

 

 熊尾のバカなら魔法で勝手に治療するからどうでもいいけど、真ちゃんは名家なのに魔法使えない。しかも担任の方針で万が一でも真ちゃんに魔法がバレたら何されるか分かったもんじゃない。

 

 Sランクの凄い先生なんだけど、本来は日本魔法協会の戦力だけあってちょっと倫理観というか常識がズレてる。先生は悪い人じゃなし、すっかり慣れたけど。

 

 だから残念ながら魔法で真ちゃんの治療は出来ない。高度な回復魔法の使い手もいないけども。

 

 それよりも真ちゃんの治療という事で、考えつくのは氷とタオルで冷やすくらい。湿布とかないしこれ以上の治療はやっぱり出来ない。

 

 いつの間にかゆなちーときさらが真ちゃんに抱きついてる。しまったケガの手当ての用意で出遅れた。

 

 ここは優しい女の子として優しさを真ちゃんに売り込むしかない。

 

 よし冷たさで痛みは麻痺してて、回復魔法とか分からないはず。万が一にも脳とか首とかに内出血してたら大変だから、MP尽きるまで回復魔法を真ちゃんに連打する。

 

 効果は私の才能だと気休めよりはマシだけど数やれば良い。熊尾のバカと違って時間はかかるけど、治せると思う。

 

 回復魔法を連打してたらゆきゆきが、私の作ったお弁当を真ちゃんにあーんしてる。

 

 しかも、すっごく良い笑顔だ。なんだかんだとおっぱいトークするけど、ゆきゆきは男のおっぱいへの視線は好きじゃない。真ちゃんは時々やっぱりおっぱいに視線が向かってるけども、ゆきゆきはご機嫌のまま。

 

 これはゆきゆきもゆなちーも惚れてる。

 

 私もこんなリスキーな魔法の使い方をしてるし、真ちゃんへのドキドキと、ちょっとのイライラが治まらない。

 

 そして真ちゃんを独占したいって気持ちがイライラの原因。

 

 他の4人に嫉妬してる。これは正しく認めよう。

 

 私も真ちゃんに惚れたって。キュンキュンしてるって。

 

 きさらごめん。友達は辞めないし真ちゃんが誰を選んでも恨みっこなしなライバルになった。

 

 家柄も魔法の才能も勝てないけど、男女の仲はそういうのだけで決まらないから。

 

 真ちゃんとの仲はきさらが何歩も先を行ってるけど、追いついて真ちゃんに振り向いて貰らいたい。

 

 女の友情が壊れないといいなぁ。男の取り合いとかで親友無くすとか最悪じゃん。

 

 ゆきゆきは分かってそうだし、きさらは手は出ても嫉妬で友情は、壊さないはず。なんだかんだと直情型のきさらは分かりやすくて、信用出来る。

 

 問題はゆなちー。一番の異性に興味あるし彼氏居たことないし大丈夫かなぁ?

 

 今まではこんな時の調整役は私だったけど、今回は恋敵同士だし難しすぎる気がする。

 

 本当に損な性格なんだけど、気になって仕方ない。いろいろと頑張るからさ、真ちゃんと結ばれたいなぁ。

 

 さて残りの半日は真ちゃんと楽しく遊んでその後に悩むとしますか。じゃないと後悔するから。

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