023話 守るための戦い

 武田唯さんは撃沈した。最強辛味成分のせいか少し痙攣してるけど、椅子に座らさせて放置になる。

 

「ゆなちー、真ちゃんにカプサイシン食べさせるからだよ」

 

 上杉雪菜さんが武田唯にフォロー?をしてるけどたぶん気絶してて聞こえてないよ。

 

「ゆなちーが悪い。次々となんできさらは真ちゃんに餌付けしてる?私は作ったお弁当をあ~んする権利があるはず」

 

 真田愛美さんが、希更さんのあーんに割り込もうとする。

 

「それは真ちゃんが選ぶことじゃない?ね?真ちゃんがゆきゆきがいいよね?」

 

 おっぱいを寄せてアピールする上杉雪菜さんにやっぱり視線は吸い寄せられる。これは男の性として仕方ない。

 

「あー!!ゆきゆきのおっぱいは、座ってると最強か?」

 

 真田愛美さんの気遣いはどこに行ったのだろう?行方不明な気がするけど??

 

「ハッ、しまった!太ももをアピールしないから痛い物を食べる酷い夢をみたのか!!真ちゃんはどっちが好みなん?」

 

 それは夢違うと思う。もう復活って思ったよりも平気なんだ。

 

 そしてやっぱり女の子の太ももにも視線は吸い寄せられる。だって男の子だもん。

 

「そんな、なよなよした奴より俺達と遊ぼうぜ」

 

「君らエロい〜俺達ともっと良い事しようぜ」

 

「こんなやつに四人とかもったいねー。俺は巨乳の娘かな」

 

 いきなりチャラい大学生くらいの3人組が声をかけてくるだけじゃなく、一人は俺の頭に手を置いてバカにしてくる。

 

「皆でこのあと、大人の遊びしようぜ」

 

 これは俺がなんとかしないと、希更さんや親父と義母が出てくる。特に義母がガチギレして危ないと思う。俺の為ならケンカもするだろうけど、そうなると教師だから大変なことになる未来しかないと思う。

 

 希更さんにアスファルトをヤスリみたいにして、こいつらが削られて傷害事件になる方が早いかもだけどさ。希更さんが警察のお世話になっても、こんなところでけが人を3人も作られても困る。

 

 それに何より天使ちゃんが巻き込まれても大変だし。

 

「ケンカ売ってる?無料なら買うけど?」

 

 お金を払ってケンカなんてしたくない。けども俺が買わないとだめなんだろうな。俺は弱いからやりたくないけどさ。

 

「ザコにケンカなんて売らねーよ。ほら早く消えろ」

 

 仕方ないのでケンカを無料で買ってやろう。頭に置かれてる腕を、人間の関節的に曲げられない方向へ捻りながら立ち上がる。

 

「いってぇ」

 

 痛みを和らげるためにバランスを勝手に崩してるから、そのまま地面へ転がして無防備な脇腹に蹴りをくれてやる。

 

 大ダメージを与えたから、よほど格闘技とかやってないと、戦意喪失して退散してくれると思う。

 

「てめぇ、ふざけんなよ」

 

 大ぶりで残りの二人のうち一人が殴りかかってくる。肩の動かし方とかでパンチの軌道までバラしてくれてる。どうやら殴り合いの喧嘩もしたことない暴力の加減も分からないバカらしい。

 

「殴るなら殴られる覚悟もしとけよ」

 

 返事を返してフック気味の拳を少し屈んで躱す。俺はカウンターで鳩尾へお返しのパンチをきっちり当てる。

 

 上手く当たって呼吸困難になり前屈みで動けなくなってるから、ガラ空きの背中に肘鉄を叩き込む。これで二人目もケンカできないダメージを与えたと思う。

 

「うらぁ!!調子に乗るんじゃねーぞ」

 

 どうやらバカすぎてもう勝ち目ない事も分からないらしい。親父はなんだかんだと優しいけども、教えてくれる事はしっかりしてる。

 

 暴力の使い方くらいは教わった。まぁ人はケガしなくても一時的に動けない痛みを受けたら、よっぽど鍛えてないと戦意喪失する。パンチや蹴りで、どこに当たればどのくらいの痛みを与えられて、そして受けるのかそれくらいは小さな頃に何度も教えてもらった。

 

 いざって時には天使ちゃんを守れるように教えてもらった、これが俺のケンカ技術だ。

 

 それでも3人目のパンチは後ろから後頭部への攻撃は避けられなくて、受けてしまう。

 

 3対1だしノーダメージで勝つのが無理なのは仕方ない。でもパンチというよりは腕を振り回してるだけで体重が乗ってないから、衝撃はかなりあるし危険な急所への攻撃だけど、これくらいで負けてはやれない。

 

「おいおい、後頭部は危なすぎだろ?分かってんの?」

 

 無駄に振り抜いてて、次のパンチが出されるまで時間が掛かっており、2発目はなんとか当たらない距離をとって空振りさせる。

 

 なんか、たたらを踏んだので遠慮なく掴みかかり引き倒して、下手くそな受け身でガラ空きになった横っ腹を全力で蹴り上げる。


 希更さんのようにふっ飛んだりはしないけど、それなりにダメージを与えたから、起き上がって起き上がれないと思う。

 

「クラスメートとお弁当を食べたいからこれ以上は邪魔しないでくれるよな?」

 

 ふぅ~、これでなんとか大怪我もなく丸くおさまったと思う。

 

「そこの4人!!動くな!!ちょっと警備室で話しを聞かせてもらう」

 

 遊園地の警備員さんが3人も走って来てた。

 

 逃げようとしてた3人組も捕まるけど、俺も捕まるらしい。結果だけ見ると、遊園地で乱闘して男を3人もノシたらそりゃ警備員さん呼ばれるし放置は出来ないか。

 

 最初の一人をやったところで撤退してくれなかったし仕方ないかな。無抵抗ですと軽く両手を上げて逃げませんとアピールする。

 

「ちょっと!!なんで私達を守った真治が犯人扱いなのよ?そいつらが酷いナンパはするし、暴言は吐くし、手だって先に出したわよ」

 

 希更さんが警備員に食って掛かる。あんまりやると俺の立場悪くならない?

 

「そうそう、正当防衛です!!真ちゃんなんて後頭部を思いっきり殴られてました!!この辺の人見てますから!!」

 

 真田愛美さんはたぶんスタッフさんか警備室に連絡した人も含めて周囲の人を味方につける作戦のようだ。

 

「クラスの友達と遊びに来ただけなのにこいつらゴミのせいで最悪なんです!!人のおっぱい見ながら、エロいこと言ってました」

 

 ん?上杉雪菜さん、そこまでは彼ら言ってなくない?あとなんか発言と意味の乖離が酷い気がする。

 

「私なんて貧乳扱いされて、脚ばっかり見てエロいとかいって言われました。高校生に言っちゃいけなくないですか?そんな人に立ち向かった級友なんですよ?」

 

 武田唯さんも濡れ衣を着せる。流石に女の子4人の訴えに警備員さんも困りつつもまだ反論する。

 

「それが本当かそれぞれに確認するだけだから、その後で対応を判断するのが決まりなんです」

 

「それじゃここで聞きいても良いでしょ?証人はこの周りにたくさん居るからすぐ分かるわ」

 

 希更さんは諦めないらしく、まだ抵抗する。

 

「当事者を隔離して冷静に、話しを聞かないといけないでしょ?別にこれで警察に付き出すとかじゃないので安心してください」

 

「乱闘はしましたし、僕はぜんぜん話くらいかまいません」

 

 この押し問答するより早く処理したほうが結果的に早く終わると思う。そこへやってくるお義母さんに俺は何をする気だろうと内心は心配になる。親バカ過ぎて想像が出来ない。

 

「あのー、その三人組って午前中に私に悪質なナンパしてきて、退園させますって、警備の人が言ってませんでした?」

 

 希更さん達4人を確認するけど、担任の先生とはバレてないようだ。

 

「えっと、すぐ確認します!!」

 

「それって本当なら、そっちの落ち度じゃないです?」

 

 真田愛美さんが追撃ちをする。うん警備員さんも大変だなぁ。周りから急に白い目で見られ始めながらも無線でやり取りをしてる。

 

「コラッ逃げるな!!」

 

 悪くないと騒いでたけど、不利を悟ったのか、痛みが和らいできて逃げられるようになったのかチャラい三人組の男が逃げようとする。もちろん警備員に取り押さえられる。

 

 バカすぎないか?

 

「クレーム3件に、お話し聞く前に脱走2件園外に出すときに脱走1件・・・」

 

 無線で確認した警備員が仲間に伝える。

 

「ボーナスと昇給にガッツリマイナス査定されますよね?」

 

 警備員さんの目つきが変わる。お金が絡むから当然だろう。

 

「すみませんでした。この三人からお話を聞く八つ当たりするだけで十分です」

 

しっかりお話しさせてもらうからなケガさえなければ問題ない覚悟しろ

 

「いでぇ」「離せ、いってぇ」「先に殴ったのは、折れる腕折れるいってぇ〜」

 

 警備室に連行されていった。希更さんに地面でヤスリがけされたり、金的くらうよりは良かったと思う。

 

「青春を邪魔してごめんなさいね。男の子が頑張ってカッコ良かったつい助けちゃった。それじゃね」

 

 お義母さんは案外に普通な対応をして、天使ちゃんのクレーンゲームの景品で出来た壁の向こうへ帰って行った。

 

「真ちゃん凄いね。早くお弁当食べようよ」

 

 武田唯さんは俺を椅子に座らせると自分の椅子を密着させて隣に座る。

 

「その、ありがとう」

 

 なぜか希更さんからお礼を言うと、武田唯さんの反対に椅子をくっつけて俺の腕をホールドする。そしてなぜか反対の腕も武田唯さんにホールドされる。

 

「真ちゃん頭痛くない?ケガ大丈夫?氷とタオルあるから冷やすね」

 

 あっという間に真田愛美さんに後頭部を冷却され始める。

 

「真ちゃんあ~ん」

 

 対面の上杉雪菜さんにお弁当をあーんされて食べることになる。なにこれ?とりあえず自分の手でお弁当を食べたい。周りの目が絶対零度、爆発しろって感じなんだけど、これは俺いじめられてる??

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