017話 この遊園地ヤバない?

 お兄ちゃんを隣のきーちゃんが遊園地に誘ってデートするのは阻止出来なかった。

 

 けっこう本気みたいだし家族になるなら、最低ラインは超えたかな?

 

 そしてお義母さんは、担任の立場を利用してデートを察知したらしい。お父さんまで呼んで私も含めて、3人でお兄ちゃんの野次馬というか、家族で遊びに着てる。

 

 お父さんは、まだまだ青いなって見てるし、お義母さんは女の子が足りなくない?って感じなんだけど、お兄ちゃん大丈夫かなぁ?この二人は流石に止められないよ?親バカだから結果は悪いことにならないとは思うけどさ。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 希更さんと熊尾龍太の二人に連れられて遊園地に到着時間すると、何故か天使ちゃんがいる。

 

 そして部活とかあるはずの義母に長距離トラック運転士なので、県外にいたはずの親父もいる。

 

 義母さんは学校とは違って私服だし、サングラスをしてるから希更さん達には担任の先生とはバレないと思うけどさ。

 

 希更さんと熊尾龍太は、ギャーギャーと言い合いをしてるから、俺の家族には気が付いてない。バレたら恥ずかしいけど、天使ちゃんには手を小さく振っておく。

 

 天使ちゃんを置いて遊園地に遊びに行くのは気がかりだったからこれで気兼ねなく遊べるかな。

 

 すぐに熊尾龍太を、暴力で沈黙させた希更さんが、遊園地のチケットを渡してくれたので内容を確認してみる。

 

 フェスティバル期間限定ワンデイフリーパスポート:食事、物品購入を除く園内のサービスをフェスティバル中の1日限定無料で使い放題

 

 これ凄くない?アトラクションまで完全にフリーパスじゃん。

 

「行くわよ!!遊び尽くさないともったいないわ」

 

「早く行こうか」

 

 天使ちゃん達家族がバレる前に俺と希更さんは遊園地のゲートをくぐる。

 

「あれ乗らない?フリーフォール、SとRは任せる」

 

 希更さんが提案してくれる。高さ違いで2つ立ってるタワーがある。これはショートとロングかな?

 

「フリー放おるってやつ?Sにしようか」

 

「ん?絶叫系苦手なの?絶対に長い方が楽しそうなのに」

 

 そう言いながらも希更さんは満更でもない感じで一緒にフリー放おるSに並ぶ。

 

「男のほうが絶叫マシンは苦手なのは常識じゃん(^_-)-☆」

 

 熊尾龍太がいつの間にか復活して割って入ってくる。イケメンの分かってるよ感のウィンクは様になってる。

 

「あーハイハイ、もう乗れるわよ」

 

「「なんでや!!高い方じゃん!!」」

 

 熊尾龍太とハモってしまう。

 

「ようこそ!!フリー放おるスーパーへ♪ここは日夜第2宇宙速度で、放おり投げるための研究をしております。それでは〜安全ベルトを装着しましたら、空の彼方へいってらっしゃーい」

 

「Sはスーパーって意味だったのね」

 

「希更さん!!そんなに余裕羨ま、うぎゃーーーー」

 

 俺達の座った座席が、物凄い加速しながら真上へ上がっていく。軽く150メーターを数秒で上がるとタワーの、頂上で停止する。物凄いGを、感じたあとのこの間が怖すぎる。眺めは良いけどさ。

 

「おお〜、このスリルいいわね」

 

「希更さん!!怖いからスリル違う!!うぎゃーーーー」

 

 今度は真下へ自由落下の速度を超えて落下していく。一瞬の浮遊感と今度は浮き上がる浮遊感、そして急ブレーキによる真下へのGとなんかめちゃくちゃにされる。

 

「フリーフォールじゃ、なくてスペースショットじゃん。サイコーキャ~」

 

 希更さんは楽しそうだけど、熊尾龍太は喋る事も出来なくてただただ耐えてる。

 

「あれ〜?実験失敗してしまいました〜。次こそ性能上げて地球の重力を振り切り放り投げますから、遊びに来てねー♪隣のフリー放おるロングタイムもよろしくね」

 

 係員さんが終わりまで楽しそうに対応してくれる。

 

「それで“フリー放おる”なんだ。ダジャレだったんだ」

 

 

「ちょっとロングタイムも惹かれるわ」

 

「希更さんは絶叫マシン好きなの?」

 

「ケガしないくらいには安全なんだし、楽しいわ」

 

「そういう問題なのかなぁ?あっこれはどう?『魚と一緒』ってやつ」

 

 ウォーターライド系だけど、この名前ならスリルとは違うと思う。

 

「同志候補安倍真治よ、それにしよう」

 

 青い顔の熊尾龍太は賛成らしい。

 

「うーん、まぁいいか」

 

 ギリギリ希更さんの許可を得て、魚と一緒に並ぶ。乗り込みは建物内でパイプの中みたいなコースを船で進む感じだ。

 

「それではお三人様搭乗〜♪海のお魚と一緒に、鮫を楽しんで下さいね」

 

 ん?係員さんなんて言った??

 

 ゆっくりと船が進み始めると、暗くなり壁面にプロジェクションマッピングで色とりどりの魚が映し出される。

 

「わぁキレイ」

 

 希更さんが感動しながらプロジェクションマッピングを見てる。これなら俺も楽しめそうだ。

 

 そこへ突如後ろからパイプコースギリギリくらい大きな鮫が現れる。

 

 船と魚がスピードを急に上げるけど、一部の魚は鮫に食われて血が流れて鮫の口が赤くなる。プロジェクションマッピングの真骨頂だろうけど、マジで恐い。

 

「サメじゃん皆逃げろー」

 

 希更さんは楽しそうだけど、これ子供はトラウマになるぞ。

 

「こんなの聞いてないって!!」

 

「真治!!楽しいから良いのよ」

 

「同志候補安倍真治よ!前みろ!!落ちるーー!!」

 

 パイプがほぼ垂直に見える様な角度で真下へ曲がってる。

 

「「うぎゃーーー」」「あ〜お魚食べられちゃった」

 

 希更さん余裕で後ろの様子を見てるらしい。

 

「あれれ?サメ速くない?」

 

 サメが急降下で加速して僕達の乗ってる船に体当たりしてくる。加速というか制御を失ってパイプ内をグルングルンする。

 

「だからなんでこうなるの!!」

 

 俺は魚と一緒がこうなる意味が分からない。そして熊尾龍太は酔ったのか口を押さえて青い顔をしている。

 

「きゃー!サメ速!お魚も速!私達も速!!きゃー」

 

 希更さんは楽しそうだ。

 

 死にかけの熊尾龍太が前を指差すので、俺と希更さんが見ると、そこには壁がある。

 

「「!?ぶつかる!!」」

 

 なんと目壁をぶち破り二匹目の鮫が目の前に現れる。

 

「「!?挟まれた!!」」

 

 希更さんでも焦るらしくなんか抱きつかれる。女の子に抱きつかれて嬉しいよりも、希更さんの締め付ける力が強くて苦しい。

 

 俺が圧迫に耐えてる間に魚達が少し右往左往して、抜け道を見つけたらしくそこへ一斉に逃げて行く。

 

 希更さんの圧迫で若干意識が怪しくなり始めた頃、ついに両側から挟まれた結果、鮫にガンガン体当たりを船にされても、転覆せずに耐えきり横道へなんとか抜ける。

 

「ビックリしたぁ。あれ?なんで真治が?」

 

 これはヤバい。希更さんは男が嫌いみたいだし失言したらボコられるやつじゃん。

 

「あはは、鮫に驚いたらなんか、希更さんに守られてたみたいな?」

 

「あっ、えっと、その、次は真治が私を守りなさいよ」

 

 希更さんをどうやって守れば良いだろうか?頼もしいというか強くて、希更さんが負けるイメージないんだよね。

 

「出来るだけやってみるよ」

 

 ホッとしているのも束の間、魚の血まみれ鮫が後ろから、追い付いてくる。

 

「「げっ」」

 

 もう次の守るターン来たんだけど!!どうする俺!!

 

 そうだ!!天使ちゃんと思えば良いんだ。とりあえず希更さんの手を握る。すると希更さんがギュゥッと握り返してくる。いやいやいや力強すぎだって、顔も赤いし怒ってるよね?これやっぱり嫌われてる?

 

 鮫がまたしても体当たりしてきて船が大揺れする。さらに噛みつかれて、沈没しそうなくらい船を、振り回される。

 

「きゃー濡れちゃったじゃん」

 

 希更さんは楽しそうだし気にするとこが違うと思う。もう限界というところでパイプが狭くなりギリギリ船とお魚は抜けるけど鮫は引っ掛かり、助かったらしい。

 

 そして再び暗くなり、スタート地点へ帰って来れたのだった。

 

「おかえりなさい。また鮫と遊びたくなったら来てくださいね♪いつでもお魚と一緒に遊べますからね♪」

 

 係員さんが楽しそうに、迎えてくれるけども希更さんは真っ赤だし熊尾龍太は真っ青だし、俺は手が握り潰されそうだし、どうすれば良いんだろうか?


 降りるのかここで熊尾龍太が動き出したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る