014話 混沌天使降臨

 希更さんが自転車に乗って学校へ行こうとしてるときに、我が家から妹の典子のりこが出てくる。

 

「お兄ちゃん、一緒に学校行く?」

 

「天使ちゃん?体調悪いって言ってたのに学校行くの?」

 

「我が妹の天使ちゃん!?」

 

 ガバッっと起き上がり、何事も無かったかのように熊尾龍太が声をかけてくる。

 

「体調というか気分が悪くてね。やっぱり学校休むのは良くないじゃん?真面目なのもたまにはいいかなって思ってさ。原因はボコられたし。でも復活したからなぁ」

 

「他人をいきなり妹にしたいとか言う家の前で待ってる人には、会いたくないよね」

 

「ぐふっ」「あうっ」

 

 なぜか、熊尾と希更さんにクリティカルヒットする。

 

「お兄ちゃん、そうそう土曜日に買い物行かない?」

 

「さっき希更さんと遊園地の約束しちゃったからなぁ」

 

「えー、お隣の水岡さん!!お兄ちゃんを譲ってよ!!」

 

 天使ちゃんが容赦なく俺の予定を奪い取ろうとする。顎砕く希更さんより天使ちゃんの方が嬉しいけどさ。

 

「嫌よ!!私が先に約束したのよ。そしてこいつと大差ないのもムカつくわ」

 

 なんか理不尽な理由で起き上がった、熊尾龍太をママチャリで轢く希更さんに、ドン引きする。完全に交通事故なんだけど許されるの?

 

「ならば、この熊尾龍太が荷物持ちいたします!!ぜひともお買い物に連れて行って下さい。いざとなれば、無くならい財布としてプラチナカードもあります(^_-)-☆」

 

 顔にさっき希更さんに轢かれた時の、タイヤ痕があるけど何事も無かったかのようにウインクしてくる無駄にイケメンな熊尾龍太にも、ドン引きするんだけど・・・。

 

「えー、荷物持ちはいらなーい。プラチナカードだけ欲しいかな」

 

 上目遣いで、少し首を傾げてお願いをする天使ちゃんはやっぱり儚くてかわいいと思う。

 

「それなら私は、その安倍と遊園地に行くから、熊尾龍太のクレジットカード持って買い物行きなさいよ」

 

 希更さんの提案は無いと思うなぁ~。

 

「えー、私はお兄ちゃんと遊びに行きたいの。ね、お兄ちゃん、お隣さんいいでしょ?」

 

「嫌よ。あいつと遊園地に行くのよ」

 

 笑顔だけど目が笑ってない女の子の会話って怖っ!!希更さんがそこまで俺との遊園地に拘る理由が分からないなぁ??

 

「えー、お兄ちゃんお隣さんとデートにいくの?」

 

 希更さんが顔を真っ赤にして怒る。

 

「デ、デートじゃないわよ!!えっと、そう、たまたま、遊園地のペアチケットがあるから遊びに行くの!!ペアチケットだから仕方ないのよ!!」

 

「ならそこのイケメンぽいのと行きなさいよ」

 

 ここで勇者なのか笑顔で争う女子に熊尾龍太が割り込む。

 

「そんな暴力女こっちから断る!!」

 

「うっさい!!黙れ」

 

 熊尾龍太の後方へ回り込んだ希更さんの自転車が跳び上がり、再び熊尾龍太の後頭部へ前輪がアタックすると、倒れた熊尾龍太の真上に自転車に乗ったまま着地する。

 

「ぐぇー」

 

 そのまま自転車を走行して熊尾龍太を轢いたら俺の前で停車する。

 

「あっ髪巻き込んでる!!痛いから!!ガクッ」

 

「希更さん?目の前で交通事故が起こったけど、大丈夫じゃないよね?」

 

「ふん、交通事故じゃないわ。制裁よ」

 

「そんな暴力行為する人をお兄ちゃんと二人デ遊びに行くとか心配じゃん。やっぱり天使ちゃんとお買い物行こうよ」

 

「そこの安倍だけには、何もしてないわよ!!」

 

「えっと、その凶器な自転車に乗ったら死ぬかと思ったかな、あははは~」

 

 正直ジェットコースターよりもスリルヤバかったです。

 

「あうっ、でもでも、怪我も痛い思いもさせてないもん!!セーフだもん!!私悪くないもん」

 

「でもぉ〜、あっ!!じゃあ私も遊園地にするからお隣さん連れて行ってよ」

 

 天使ちゃんが同伴したいらしい。お兄ちゃんとしては、絶叫マシンとかで天使ちゃんの発作とか心配だけど、過保護過ぎてもダメだし悩むな。

 

「ペアチケットだから二人分しかないのごめんなさいね」

 

「私の分くらい追加してくれたら嬉しいよね?お兄ちゃん?」

 

 天使ちゃんの笑顔と希更さんのジト目に挟まれる俺にどうしろと?希更さんはなんで嫌いな俺と遊園地に行きたきのか、分からない。ん?何かクラスメートからのサプライズ的な?それで希更さんと熊尾龍太が来たとか?

 

 この推理的に正解は・・・人が多い方がいいな

 

「えっと、遊園地だし皆で行ったほうが楽しくない?」

 

 キッと希更さんに睨まれる。あれ?推理外したのかな?

 

「その日はフェスティバルデー人気でチケットは売り切れておりますな」

 

 自転車事故から熊尾龍太は復活して、スマホで調べたらしい。顔面と後頭部に背中までタイヤ痕がなければ普通の人だ。

 

「あら残念ね。なら安倍真治と行くわ」

 

「お待ち下さい!!この熊尾龍太にかかればチケット手に入れて・・・・・・手に入りましたぞ!!1枚我が愛すべき天使ちゃんに献上いたします」

 

「うーんと」

 

 何やら珍しく天使ちゃんが思案顔になる。

 

「やっぱり、土曜日はいいや。お兄ちゃんとお隣さんとそこのイケメンな人で遊んで来たら?逆ハーだしいいよね?」

 

「かしこまりました!!この熊尾龍太にお任せあれ。必ずや暴力女の毒牙から、級友を守り抜きましょう」

 

 なんか熊尾龍太が天使ちゃんに急に敬礼してるけど何があった?

 

「よろしい。それでお兄ちゃんもいいよね?」

 

 あっ!!俺の推理をミスったのを、天使ちゃんがカバーしてくれたのか。何とか頑張って遊園地のお土産くらいは用意しよう。

 

「ちょっと残念だけど、チケットあるなら使わないと勿体ないし、いいよ」

 

「お隣さん、お兄ちゃんこう言ってるしいいよね?」

 

「はぁ〜、最悪だけど仕方ないわ。熊尾ならまだましだし」

 

 少し遠い目をする希更さんだけど悪くないらしい。

 

「そうそう安倍典子ちゃん、私はお隣さんじゃなくて、水岡希更だからね。名前で呼びなさいよ」

 

「わざわざありがとうございます。私のことは天使ちゃんって呼んで下さいね。水岡さんの事はこれから、きーちゃんって呼びます」

 

 だから女の子が笑顔なのに目が笑ってないのは怖い。女子トークって恐ろしすぎる。

 

「あれ?きーちゃんって誰に聞いたのかな?」

 

「なんか、顔の引き攣りがどんどん酷くなるお隣のおじさんとおばさんに聞きました」

 

「「「・・・」」」

 

 天使ちゃんが何を話したのか気になるけど、は入院生活が長くてちょっと非常識な発言してしまうからさ。頑張って話を合わせてくれたのだと思う。

 

「マジか」

 

 なんだか希更さんが、仇敵を見るような目を天使ちゃんに向ける。

 

「マジです」

 

 逆に天使ちゃんはすっごく良い笑顔をしている。なのに、強大で最強な天使の試練に挑む、ちっぽけな人が背景に見える気がするのはなんでだろう?

 

「ところでさ、もう走っても学校間に合わなくない?」

 

 俺は時計を見て気が付く。立ち話が長くてもう間に合わなくないよね?担任の先生が余裕で俺のは揉み消すとは思うけど、天使ちゃんは困るよね?

 

「おぉ、お兄ちゃんは真面目だー♪希更さんが乗せてくれたら間に合いますよね?」

 

「チッ、仕方ないわね。天使ちゃんは後ろに乗りなさい。あんたは抱えればなんとかなるわ」

 

 天使ちゃんは希更さんの荷台に跨り、俺は小脇に抱えられる。そしてやっぱり赤くなる希更さん。

 

「お兄ちゃん落としたり、ケガさせたり、しないでね」

 

「分かってるわよ!!安心しなさい!!間に合わせるし事故らないから!!飛ばすわよ!!」

 

 

「希更さん片手運転まで危な・・・ぎゃーーーーー!!怖い速い!!」

 

「きーちゃんすごーい!!キャハハハ遊園地みたい」

 

 天使ちゃんが楽しそうなので、我慢しようと思うけども恐怖しかない。こんな酷い目に合わさせるくらいやっぱり希更さんには嫌われてるのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る