010話 飲み物はデートの基本
まだクラスの男の半分はコンテンツの海に遭難している夜の9時過ぎに、水岡希更は自室で一人で苛立っている。
別に理不尽な事があるわけでも、嫌なことを我慢してもいない。苛立っている原因は素直になれない自分と、素直になりたい自分の心の中のぶつかり合いだ。
告白されたいけど、早く彼女になりたい。恥ずかいけど、独占したい。言えないけど、特別になりたい。
「あーもう!!素直に遊ぼうとか言えるわけが無いじゃん!!そうだ!まだボコって無いし、そうたまたま、たまたま近くのコンビニにいて、真治をボコるためなんだらね」
自分的に完璧な言い訳を思いついたので、自室を出て家族にコンビニに行くと言って出ていく。父親は300人ほどの会社の中堅管理職サラリーマン。母親は短時間パートという普通の家庭だ。親父はたまに飲み会や追い込み残業もあるけど、まともな時間にだいたい帰ってくる。
両親にコンビニへ行くと伝えて、気をつけてと送り出される。
自転車でファミレスへ向かいながら赤信号で余裕と分かってても時間をチラチラと確認しながら漕いで、目的手前の用事ないコンビニに到着する。中には入らずにWi-Fiを利用してスマホをいじる。
ふと悪いな、と思いコンビニへWi-Fi利用料として買い物にに入る。そこで差し入れを買おうとして困る。だってあいつの好みが分からない。
この前イチゴパック貰ったからイチゴオレ?いや食べ物と飲み物は違うし夜だし思ったよりも寒いしホットかな?
「うー、どうしよう?マジで困った」
時間の猶予はまだあるけど、のんびり悩むほどはない。ここは友人にイジられるか、真治への差し入れを失敗するか。
ノータイムで決断して、スマホからグループレインを起動する。仲の良い女の子だけのグループレインだ。真治を除いたお姉ちゃんになり隊の中枢グループレインである。
きさら『あいつのバイト先の近くのコンビニにたまたまいる。差し入れって何がいいと思う?』
マー『きさら出待ちしてる?』
ゆなちー『それどころか、下校ならぬバイト帰りデートしようとしてるぞよ』
「うぐっ、デートになるのか気が付かなかった。帰ろうかな?いやここまで来たし、ボコってないし、そうボコりに来たからデートじゃないし」
素直になれないで告白も出来ないのに、デートはレベルが高すぎる。
きさら『たまたま近くにいるだけなんだからね。あとまだボコってないし』
マー『そういう事にしよう。ケッ、ちょっとブラックコーヒー淹れてくる』
ゆきゆき『肉まんかあんまんでしょ?夜はまだ寒いし話しながら食べる夜食は格別。脂肪はおっぱいに集まるよ。ストレート紅茶を飲まなきゃ』
ゆなちー『おかしい。食べても二の腕とお腹にしか脂肪は増えんよ。神は理不尽なことをする。フライドチキンも男の子は好きそう。緑茶の濃いのにする』
マー『ただいま。きさらが飲みたい飲み物を二本。そして真ちゃんにどちらかを選ばせる。どっち選ばれても美味しく飲めて、二択ながら真ちゃんの好みが分かる』
きさら『あいつバイト先がファミレスだから、まかない食べてるかも?飲み物だよね?』
ゆきゆき『チェーン店なら飲食出来ないかも?マスク外して厨房に入れないくらい厳しい衛生管理のとこあるよ。バイトテロ対策でスマホも持ち込めないしね』
ゆなちー『安いテキトーな店なら賄いは失敗して破棄する料理が出たら、まかないあるかもくらいじゃね?』
マー『高校男子の胃袋はブラックホール心配無用』
ゆきゆき『マーの恋愛スキルが高すぎる!元彼氏持ちは違うな』
きさら『そういえば真治はいつもエナジードリンク飲むらしい』
ゆなちー『それはない。色気がない。寝かさないつもり?』
ゆきゆき『ゆなちー、エナジードリンクは精力剤違うぞ』
マー『悪くないけど、真ちゃんがエナジードリンクを好きなん?』
「えっと、疲れたら頑張れるとか、飲まないと宿題出来ずに寝ちゃうとか言ってたけ?そんな感じだったはず」
きさら『このあと宿題するために、寝ないように飲むらしい』
ゆきゆき『真ちゃんサラリーマンより大変なん?お父さんでもそこまでやるは、繁忙期だけだよ』
ゆなちー『それ好きとは違わん?眠気覚ましや』
マー『実用品だし、飲まなくていいなら飲まない方が良さげ、ならコーヒーも避けた方がいいかも。にしてもブラックコーヒーが甘くなってきた気がする』
ゆきゆき『それは初恋の甘さや。砂糖ちがう。でも無糖紅茶が旨い』
ゆなちー『緑茶の甘みを感じる気がする。きさらの乙女力で真ちゃんメロメロやな』
きさら『ホットの緑茶と紅茶?』
マー『お茶系とジュース系にすべき。甘いのか、そうじゃないのか、だけでも真ちゃんの好みが分かる。ホットとアイスもきさらが飲めるなら分けたほうがいい。温度にも好みがあるかも』
ゆなちー『マーの気遣い力どんだけレベル高いん?そしてさり気ない情報収集力!なぜ振られる?』
ゆきゆき『これがモテ戦闘力なのか!?なぜ浮気されたし』
マー『二人目だった。真ちゃん癒やして、早くマーを口説いて!!』
ゆなちー『モテ戦闘力と見る目は違うらしな。真ちゃん用だけど膝枕にやり来るか?あと元カレはどうした?』
ゆきゆき『ぱふぱふはマーにも無料開放やぞ。元カレ隣の高校じゃなかったか?』
マー『膝枕にする。明日に予約させて。ぱふぱふは敗北感しかないからいらん。元カレは、隣の高校でテニス部。そしてきさらに練習試合で対戦した。股間に3発直撃した。途中から内股で試合してボロ負けした』
ゆきゆき『きらさやるなー。癒やし力が足りないか。真ちゃん用にぱふぱふ力上げとこ。お湯沸かさないと』
きさら『二股野郎は成敗した。でもダイレクトショットを股間で受けるやつが悪い。狙ったけど』
ゆなちー『きさらの本気とか、マーの元カレかわいそうやん。しかも公衆の面前で、合法的にボコられてるし。てかマッサージもブラも効果ないけど?
ゆきゆき『きさらはマーの元カレ知ってたん?なんで??えっ?夜食に辛子明太子焼きそばを、毎晩食べるだけで十分じゃん。あと炭酸飲料忘れないこと』
マー『きさらが練習試合するって言うから、復讐を頼んだ。あれは不能になるやつ。特に3発目は、ラブゲーム達成の最後の最後でサービスエース股間ショットやった。ちょっと同情した。あんなクズ元カレよりも、焼きそばの育乳はありえんて、贅肉しか増えないし、てか焼きそばの増乳効果よりさ、きさら時間ヤバない?ファミレス近いん?』
きさら『ホット緑茶は決まった。イチゴオレとフ○○タオレンジで悩んでる』
ゆきゆき『炭酸飲料のオレンジやろ』
ゆなちー『オレンジが良くない?果汁ほぼ入ってないけど』
きさら『なんで?』
マー『サイズが一緒だから量の差で選ばれない、果汁炭酸系とお茶系で真ちゃんの好みが分かりやすい。あと炭酸飲料は嫌われにくい飲み物だし。ペットボトルなら飲みかけでも蓋できて持ち歩きもしやすい。ほらきさら遅れるよ』
きさら『ありがとう助かった』
『『『お礼はどうなったか教えてくれたらいい』』』
きさら『またま近くにいたからだから、デートとかじゃないから!勘違いしないでよ』
『『『分かってるから、キスしたかと真ちゃんの趣味を教えて下さい』』』
きさら『真治をボコるだけだから(#^ω^)』
まだ通知の鳴りまくるスマホをしまって会計する。急いでファミレスの裏口が見えるところに待機する。後10分もしないうちに真治が出て来るかな。
あーもう、早く出てこないか気になるけど、なんて言えばいいのか分からない。どしたものか・・・。
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