011話 王道ツンデレ??

 ファミレスのバイトで厨房アシスタントな皿洗いを今日も頑張った。暇が出来たから少し解凍とか、盛り付けも手伝った。

 

 セントラルキッチン方式だからそこまで調理スキルがなくても、解凍か温めるかして盛り付ければ、なんとかなる。

 

 でもあんなファミレス内でも、キッチンとか厨房ってなぜ呼ぶのだろうか?野菜すら切らないから包丁も使ってないし。

 

 ともかく無事にバイトが終わり、残るは帰るだけとなり店の裏口から出ると、自転車を椅子にしてる希更さんがいる。昨日よりもオシャレな気がする。

 

「希更さん?どうして今日もいるの?」

 

「たまたま近くに来たから、えっと・・・そう!!約束通りにボコりに来たの!!」

 

「えー、なんか悪い事したかなぁ?お昼休みも俺ってイジられてただけだし?」

 

「あんたバカなの?空気読みなさいよ!」

 

「えー空気も読めるし常識もあるよ。ちゃんと今朝も希更さんの英語だけ間違いだらけ、なのもちゃんとフォローしたし」

 

「何でそうなるの!!ムカつくわね!やっぱりボコらせなさい」

 

 言い終わる前に希更さんのアイアンクローが俺に炸裂する。何を間違えたのだろう?

 

「いだい!!指が頭にめり込んでる!あだだだ、持ち上げないで首抜ける!痛いってば、もげる!!」

 

 希更さんの握力と腕力どうなってるの?高校生男子を持ち上げるって強すぎない?見た目は女の子の細腕なんだし謎だ。

 

「ふん、これくらいで私は優しいから許してあげる。あっそうそう、これどっちか飲む?」

 

 なんか物凄く理不尽だけど許されて、ホット緑茶とオレンジ味の炭酸飲料フ○ン○のペットボトルが希更さんのバックから出てくる。

 

「いいの?貰ったら返さないよ?飲んだら返せないよ?」

 

 ジュース飲むなんて久しぶりな気がする。お義母さんは健康に気を使ってジュースは家に常備しないし、買うお金ないからだけど。

 

「いいわよ返さなくて、あんたの飲みかけなんて返されても困るだけでしょ?」

 

「じゃあ、○○ンタで」

 

「ふーん、そっちなんだ。じゃあ私はお茶飲もっと」

 

「俺はお小遣いが無いからジュースってなかなか飲めなくてさ。レ○ドブルはお父さんの常備がたくさんあるから飲めるけど」

 

 希更さんに取られないようにプシュとフタ開けて口をつける。

 

「そう、もし返して欲しくなったら、腹パンで吐かせるから気にしないで飲まなさい」

 

 希更さんは自信あり気に言い放つ。

 

「ゴホッ!?ゴホッゴホッ絶対に吐かないよ、だから腹パンはやめて」

 

 今朝の熊尾龍太や虎井遥輝への威力からして可能そうだし。マジ恐怖じゃん。

 

「あんたが飲んだのを奪うほどお金に困ってないわよ。それよりそんな貧乏性で、ご飯はまともに食べてるの?」

 

「最近はいろいろ食べてるよ。親父が再婚するまでは、天使ちゃんの栄養になるようにバランス良く一緒に食べてたし。天使ちゃんが入院してるときは、もやし麺のもやし乗せうどんとか、もやし具のもやし焼き飯とか。美味しそうでしょう?」

 

「あんたねぇ、それ全部もやしじゃない?味付け変えてるとかのレベル超えてるし」

 

「もやしの煮物ともやしサラダともやし炒めとか美味しいよ?」

 

「もやし麺うどんともやしの煮物何が違うのよ?なんか私が悲しくなってきたわ」

 

 希更さんがどんどん暗くなっていく。おかしいぞ。美味しい物の話なのにどうしてだ?

 

「そう?もやしめっちゃ美味しいじゃん。安いし最高な食材だし。そう、もやし最高なんだぜ」

 

 なぜかちょっと涙が、俺の瞳から流れる。なんで??

 

「はぁ、あんたのお父さんが再婚した母親はいい人なの?」

 

「うーん、なんというか、若いし共働きなのに家事もしっかり出来てる。なんか凄くとてつもなく優しいすぎるけどさ」

 

「なんか凄い人なのね。想像つかないなぁ」

 

 俺を甘やかすを行き過ぎてヒモにしたいのかと思うくらい、親バカな義理の母です。お弁当にハートを仕込むくらいに親バカです。言えないけど。何よりクラスの担任だし。

 

「そうかなぁ?」

 

 だって知ってる人だよ?お互いの担任の先生だもん。

 

「お隣だしそのうち会うでしょ。まっあんたがまともなもの食べてるならいいわ」

 

「なんか、もやしで数年は暮らしてて、ごめん」

 

「なんで謝るのよ?バカなの?あんたはバカだったわ!もう私の心の平穏のために、何か奢らせなさいよ」

 

 なんでバカだと奢られるの?後で請求される新手のイジメか?

 

「えっお返しギフトとかないよ?それともタダより高いものはないっていう詐欺なの?」

 

「あーもう!ムカつくわね!何よ!!素直にラーメンとかステーキとか食べたいって言いなさいよ」

 

「えっとじゃあ遠慮なく、気になってたのあるんだ。あれ、プレミアムう○○棒ってどんだけ美味しいのかな?プレミアムってどんな味なんだろね?」

 

「あんた、マジで・・・言ってるわ、ちょっと待ちなさいよ」

 

 俺の顔を見て、ドン引きしてから納得してスマホで電話する希更さん。

 

「えっなんか酷くない?」

 

「ちょっと待ちなさい。あっ!!店長、今大丈夫ですか?えっとプレミアムう○○棒ってあります?・・・注文?んー、味が三種類なら4ダースづつで合計12ダースなら2880円ですよね?それで給料天引きでいけます?・・・じゃおねがいします」

 

 電話を終えた希更さんが教えてくれる。

 

「バイト先のコンビニで手配したから明後日には、あんた食べれるわよ144本」

 

「ありがとうございます!!神様!仏様!!希更様!!酷いとか言ってごめんなさい!!」

 

「どんだけ嬉しいのよ?」

 

「だってお菓子は超絶贅沢品なのに、プレミアムだよ?嬉しいに決まってるじゃん!!」

 

「そう?う○○棒くらいならいつでも買ってあげるわ」

 

「ありがとうございます!!希更様」

 

「希更様はキモいやめろ」

 

 再び決まる怪力アイアンクローは言葉よりも早い。

 

「いだい!!ごめんなさい希更様!!あっ指が、あそこに指が入ってる!!そんなとこに指入れちゃだめーー!!痛いすぎ!頭割れそう!!希更さん?ねぇ希更さん?そろそろ頭と首がヤバ・・・」

 

「変なこと言うからよ」

 

 希更さんの指が頭蓋骨にずんずん入ってくるの怖すぎる。

 

「イテテ、もう歩いて帰れない」

 

 半分冗談だけど、ちょっと休憩して帰ろうと思うくらい痛い。

 

「仕方ないわね。自転車の後ろ乗る?すっかり遅くなったしさ」

 

「しがみついたらセクハラとか言わない?それと俺が重くない?」

 

 希更さんが物凄く優しい。うーん、急に怒ったり暗くなったり、優しくなったり情緒不安定なのかな?これはやっぱり女の子の日かもしれない。

 

「言わないわよ。乗せたげるって言ってるから遠慮しなくていいの」

 

「おじゃましま~す。ニケツは違法だから捕まらないでよ?」

 

 希更さんの自転車の荷台にまたがる。

 

「ふん、警察くらいブチッ切ってやるから安心しなさい」

 

「大人しく謝ろうよ」

 

「はいはい、何よその変な常識。そんなもの捨ててしまいなさいよ」

 

 そうは言いつつも女の子だし、ゆっくりになるかなと思う。そして希更さんの腰に手を回すとみるみる希更さんの顔が赤くなる。

 

「!?!うんん、ええい、しっかり捕まりなさいよ!車道をかっ飛ばすわよ!自転車の速度は原付きと違って車の制限速度まで出せるからね!!」

 

「希更さん!?ここ制限速度50キロ!!」

 

「行くわよ!!」

 

「ぎゃーーーーー!!」

 

 車より早くて、死ぬかと思った。俺って希更さんに嫌われてる?だってママチャリで車を、抜くほど急いで帰ってすぐに、無言で降ろされた事だし、一緒にいたくないってことだろう。これは嫌われるよなぁ。

 

 これは二度と希更さんの自転車には乗らないかな。

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