008話 変態は紳士ぽくしても変態である
阿部真治はバイトへ遅れないように、学校をすぐ下校する。もちろん放課後なので、クラスメートはバラバラに部活や下校などに別れる。
普段は集団行動をしないはずの帰宅部である、お兄ちゃんになり隊は教室に残り、欲望を叶える為の作戦を練っている。
「同士諸君、我らの悲願カワイイ妹を持つために作戦会議を行う」
熊尾龍太が宣言する。彼のカリスマにより自由人なオタク達も統率が取れるのだ。
「同士熊尾よ、闘争も悪くない。でもてんしちゃんにお近づきにならなくては、意味がない!!」
控えめそうな一人が、声こそ大きくないが意見を熱い思いで語る。
「正にそうなのだ!あの極上の母性と儚さを感じさせる笑み、それでいながらにしてお兄ちゃんを蔑ろにしない優しさと愛情!!大変に素晴らしい。我らは、お兄ちゃんにならなくてはならない」
熊尾龍太は恍惚としながら、割とヤバメなことを言う。
「同士熊尾よ、流石にマザコンは引く」
陰キャぽい一人が呟く。それを聞き逃さない熊尾龍太の演説は続く。
「同士よ何を言うか!マザコン?甘いわ実に甘い!!シスコンとマザコンとロリコンとブラコン、ケモナー!!ゲイ!!レズ!!ありとあらゆる全ての性癖を内包出来なくて、何が押しキャラか!!何が愛か!!一面のみを評価するなど下の下だ!!」
無茶苦茶である。多様性を認めるといえば聞こえはいいが、全てを顕在させるのとは違うだろう。ちなみに人外を超えて、触手同士でもイケる男それが、熊尾龍太である。
「「「同士熊尾はレベル高けぇ」」」
「この程度で納得するな!!BLから百合、スプラッターまでありとあらゆるサブカルチャーを愛する者!!それが熊尾龍太だ!!」
それは人としての3大欲求の1つが狂ってないだろうか?レベルとか違うが気が付かない。
「「「くっ百合が限界の我らを同士熊尾龍太よ!お導き下さい!」」」
言っている内容は残念だがカリスマは本物だ。闘争に不安を覚えていたお兄ちゃんになり隊を心一つにまとめ上げる。
「我らの選びうる作戦は3つだ!!」
「「「おおぉ〜3つもありがたや~ありがたや~」」」
熊尾龍太のカリスマ性は、天元突破し神のように崇められ始める。新興宗教の開祖になれそうだ。入信したら虫の交尾とかでイケる熊尾龍太にドン引きしないで耐える修行とかやりそうだ。
「そのためには耐えねばならん。そう母性に包まれ、ついには胎児に帰れるほどの時をだ!」
「「「なんだと!?」」」
赤ちゃんを通り過ぎて胎児とは意味不明すぎるが誰も強力過ぎるカリスマの前に疑問は持たない。あと胎児になるとか進む方ではなく退化だぞ。
「一つ、お姉ちゃんになり隊と同じく安倍真治を仲間に引き入れる。そして我らと、てんしちゃんを共有する」
熊尾龍太は性癖は終わってるが、頭は悪くないのだ。変態を極めてるだけである。
「二つ、クラス敵を全て下し支配下におき、てんしちゃんを保護する」
要は力でねじ伏せる脳筋戦法である。
「三つ、てんしちゃんは常和中なのだ。登下校時に張り込めば会えるが、一歩間違えば長く獄中だぞ」
ストーカー行為が危険なのは最強の変態も理解しているらしい。
「同士熊尾よ!我ら1のイケメンを利用して、てんしちゃんと仲良くなれば良いのでは?」
世の中ストーカー行為もイケメンは何故か許される。相手が不快で無ければ良いのだ。そして熊尾龍太には類稀なるイケメンが備わっている。見た目と頭脳だけはいいのだ。
「全く分かっておらん!違うのだ!なぜ気が付かない!それは妹ではない!!それでは彼女なのだぞ!」
熊尾龍太は彼女と彼氏ではない、妹と兄になりたいのだ。イケメンで仲良くなってもそれは彼女になってしまう。
「「「なんだと!それは認められない!」」」
「そうだ!我らは紳士なのだ!彼氏になり隊などという野獣とは違うのだ!!紳士による紳士のためのお兄ちゃんになり隊!!同士諸君は紳士なのだ!同士よ。紳士たれ!!」
水岡希更ならストーカー行為を検討してる時点で紳士ではないと切って捨てるだろう。だが生憎ここにツッコミ役は不在だ。
そもそも実の兄になりたい時点で変態集団であるのだが、それは紳士に含まれるらしい。
「ならばもっとも現実的なのは、安倍真治を同士にか?」
そんなことして、変態になったら水岡希更により太平洋へ沈められるのでは?
おそらく、てんしちゃんと芦屋陽子はどんな趣味も許容して溺愛するから問題ないと思われる。
「しかしリスキー過ぎるぞ、サブカルチャーで擬装していても魔法がバレたら・・・担任の先生にどんな目に合わされるのか想像もつかないぞ」
その人普通に脳をドロドロにされて死ぬより酷いことするかもね。
「Sランクの魔法使いに勝てるわけがない。リスキーすぎないか?」
震え上がるオタク達である。
「同士熊尾よ、現状は最も安全策を採用していたのは分かった。だが同士諸君!!負けれない戦いにおいて、リスク回避優先ではでは勝てないのではないか?」
「そうだな、バレたらその時考えれば・・・いやなんとしても隠し通すしかなかろう」
なぜか背筋が凍る殺気を感じて修整する同士である。
「同士が増えることは歓迎だ」
どうやらオタクに安倍真治をする計画を練るらしい。
「では今後はまず安倍真治の同士への覚醒と、クラスを支配下に置く。この2つの計画をじっくりと進めるぞ!」
「同士化のため勧めるべきは型○ではないかね?」「銀河○雄伝説こそバイブル」「セ○ラー月も素晴らしいぞ」「テンプレの王者、水戸黄○は外せんだろ?」
「同士諸君!なぜそんなにヘヴィな物を選ぶのかね!ライトな入口を選びたまえよ!」
熊尾龍太は頭は悪くないのだ。おかしいのは性癖である。
「エヴ○か?」「スタ○○ォー○シリーズだろう?100時間視聴だ」「○マ○ガ3の音楽は価値があるぞ」「ウマ○くらいか?」「ドラ○○んとか名作」「艦○○とかやり込めるぞ」「マ○○ラには勝てんな」「SF機の難易度そこやり込みゲーぞ?」
「同士よ大差ないぞ?素人には無理すぎする」
まさかの熊尾龍太が引いているだと!?
「「「では同士熊尾よ!何が良いと思われますか!!」」」
「○○○とか、○○○○○○○、とかアニメ、マンガ化されて、無料で読めるしライトなの沢山あるだろ?初心忘れるべからずだ」
「そうであるな」「よし、安倍真治の好みの作品を探しに行くぞ」「新刊は今日だろ?」「初版と改訂版の違いを解説してやらねばならない!!再チェックだ」
「マニアックすぎるぞ!!一般人には簡単に楽しんで貰いたまえよ。そこから、愛について知ってもらうのだぞ?分かるか?」
熊尾龍太のカリスマも素晴らしいが、その統率力を超えてしまうサブカルチャー愛は強すぎるようだ。
「紳士、熊尾龍太よ!!それこそ段違い過ぎて我らも理解しきれないことだぞ!?」
「同士よ!!なぜだ!!簡単である!!愛あるがゆえに興奮する!!興奮するがゆえに愛ある!!好きなものに興奮し語る!!行動する!!だからイケる!!なぜ分からん?」
「まさか○戸○門もイケるのか?」
「あの、素晴らしきストーリーと殺陣、ハァハァ、イケる!!実に愛するべき作品ではないか!!」
「「「そんなバカな!?」」」
もちろん視線は男のシンボルに向けられている。確かその作品はお色気シーンも無かった?そこを抜いてるあたりに、熊尾龍太のヤバさがある。
「同士よ!!愛を語るのであれば、まずは自身の愛を見つめ直すのだ!!中途半端な想いなど誰にも届きはしないのだ!!同士の愛は語るに足りるのか?」
こうして計画は、先ず変態度を上げるところから実行に移されるのだった。
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