004話 四つ巴の争い

 水岡邸では希更が彼氏を連れてきたと普通はいじられるだろう。普通とは違う事態に陥っている。

 

「なぁ、お前が誰を好きになっても止めないつもりだが真治くんは大丈夫なのか?あの安倍晴人の息子だぞ?」

 

「お父さん!好きじゃないから大丈夫!」 

 

「あの頭おかしな、お父さんと姻族なんて嫌よ。妹ちゃんもヤバそうだし」

 

「お母さんまで!?結婚なんてそもそも考えてもないから!!」

 

「すまん。きーちゃん、俺は絶縁させてくれよ。結婚式も葬式も呼ばないでくれ。俺は普通でいたい」

 

「ちょっと!?バカ兄!!カップル違うから結婚しないから!」

 

「「「だって仲良かったし、ツッコミも完璧だったし、以心伝心だったし」」」

 

「違う!!私は普通のお隣さんでクラスメートとしか思ってないから!!」

 

「「「口だけね」」」

 

「今日は最悪。もう寝る!!」

 

 こうして水岡希更は自室に籠もった。なかなか自身から好きとは素直に認められないらしい。でも好きな安倍真治のため明日の準備に明け暮れるのであった。


 クラスメートになって一目惚れしたし、家族のために頑張る姿とか、魔法が使えなくても努力する様子に、好きは上書きされてもっと好きになっている。惚れた彼の為にレインを起動した。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 深夜の安倍邸

 

 芦谷陽子、いや安倍陽子は夫の安倍 晴人あべ はるとに昼間のこともあり報告する。

 

「あなた、天使ちゃんが私の真治のクラスを引っ掻き回してるけどいいわよね?」

 

「ああ、そのくらいはいいだろ。天使ちゃんには早くお兄ちゃん離れして欲しいが、無理しても良くないだろうしな」

 

「お兄ちゃん離れしなくても天使ちゃんは平気よ。それよりも心配なのは真治よ。ケガは絶対にさせないけど、万が一バレたらどうするの?」

 

「その時はちょいっと記憶弄るから大丈夫だ。魔法を使えなくて、悩むくらいなら知らない方がいい」

 

 安倍晴人のマリオネット魔法は固有魔法だ。これは肉体の操作を奪い取るどころか生き物限定ながらあらゆる操作を可能とする。


 心臓を止めるのも記憶を消すのも作るのも思いのまま、マリオネットを掛けられた記憶を消すから解除すら不可能という対消滅とは違う次元の最強だ。しかも、コスパ最高とマジの最強候補だ。弱点は抵抗され易い事だ。

 

 魔法の身体強化も得意で一オリンピックを超える運動能力を一時的ながら得られるために時間稼ぎしながら敵の耐性を越えれば勝ちである。

 

「記憶操作の細かいのは私より上手いものね。私がやると全部無くなっちゃうし」

 

 安倍陽子も固有魔法持ちで、効果は魔法耐性無効化である。そして属性魔法はレアな状態異常だ。結果100%状態異常が通るという能力になる。晴人と組むとマリオネット魔法が100%掛かるという手に負えない強さとなる。

 

 そんな最強な二人でもら魔物がうじゃうじゃいるダンジョンマスターの異世界なら、良くて冒険者としてCランク、おそらくはDランクくらいの強さでしかない。

 

 ちなみに記憶が全部なくなるのは毒状態異常により、脳がどろどろになることをいう。それはもう死んでいる。

 

「それは記憶の操作と違うだろ?陽子はお茶目だな、ハハハ」

 

「あら、結果は同じよ。今どき心肺維持装置と点滴で生きられるんだし」

 

「それもそうか、でも真治には出来ないな」

 

「当たり前じゃない。真治を一時的にでも苦しめた奴は死ぬより後悔はさせるから、こんな簡単な状態異常使わないけどね。もっと幻覚みながらとかヤバいのあるわよ」

 

 バレたらクラスメートは楽に死ねないらしい。

 

「さすが陽子は頼もしいな」

 

「あなたも最高よ」

 

「「ハハハ」」 

 

 確かに父親はお隣さんにドン引きされる感性の持ち主なのは間違いない。


 オマケで母親兼クラスの担任もヤバいけども知らぬが仏である。

 

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 翌朝、久しぶりにぐっすり寝れただ。エナジードリンクを飲まないですんだし、歩いても遅刻しない時間に起き出し、学校に向う。それでも予鈴の5分前に教室到着だけど。

 

 教室に入るとクラスの雰囲気が違うなにかあったのかな?


 なんだか俺の机が運動部女子に囲まれてるってどういうこと?そんな事を考えてると水岡希更が荷物を整理してる俺のところにやってくる。もしかして怒られる?イジメなの?

 

「安倍真治!あんたの妹のお義姉さんになるから!困ったら言いなさい。ほら宿題今出てるやつ全部あるから泣いて喜びなさいよ!」

 

「ありがとう。でも俳優じゃないし泣けないけど許して。てんしちゃん入院してたり体育出来なかったりするからお姉ちゃんが増えたら喜ぶと思うな」

 

「なんなのよ!なんで微妙に伝わらないのよ!!あんた空気読みなさいよ!バカは死んでしまえ!!」

 

「それはいい。いつでも我らお兄ちゃんになり隊は安倍真治と交代する協力をフデブッ」

 

 どうやらお兄ちゃんになり隊は、肉親になりたいらしい。

 

「熊尾龍太は熊の尻尾か龍の尾でも踏んで殺されてしまえ!」

 

 水岡希更が熊尾龍太を殴り飛ばす。今男が1メートルくらいパンチで飛ばなかった!?昨日ケンカしなくて良かったぁ。あとなにか言うよりも手が出る方が早いよ水岡さん。

 

「チッ周りから固めるとは小賢しい昨日は参加しなかった癖に、百合百合し隊は水岡希更を排除します」

 

 えっ兎田友梨さんってそんなキャラなの!?

 

「うさぎのクセになんで部下ばかりで、友達いないとかおかしいのよ!!廊下に放り出すわよ!」

 

 本当に廊下に兎田友梨さんを放り出して、締める水岡希更さん。マジで怖いんですけど!?その締めてる兎田友梨さんの実家知ってます?

 

「なぁ安倍よ、俺達友達だろ?天使ちゃんを俺達に紹介してくれね?彼氏になり隊んだよ」

 

 虎井遥輝が馴れ馴れしく彼氏になりたいと言ってる。カワイイ妹は金持ちじゃないと交際も認めんよ。お前貧乏だろ?だめに決まってる。

 

「それはちょっと聞いてみないと」

 

「てりゃー!!なによ『俺達って』複数系とかキモい死んでしまえ!!あと邪魔するな!さり気なく彼氏になり隊って言ってる!キモい死ね!虎の威を借るザコは遥か彼方で輝く星になれや!!」

 

 どうやら兎田友梨さんを廊下で締め終えたらしい水岡希更さんが帰ってくると虎井遥輝をドロップキックで排除する。なんだか頼もしいお姉ちゃんになってくれそうだなぁ。

 

 キラーンとなるほどは飛ばないけど数メートルは吹き飛ぶ虎井遥輝。

 

「妹のために怒ってくれてありがとう」

 

「そうだけど、あんたはいい加減に気付けよ!!」

 

「なにを?俺常識には自信あるし、あっカルシウム足りてない?それとも女の子の日?あっ3人とも名前を面白くイジったことだよね?希更さん天才だったんだね」

 

「カルシウム不足なら骨粗鬆症で骨ボロボロ状態だからね!!あとそれはセクハラ!ちゃんと安全日です!!面白いのはどうでもいいから!!」

 

「水岡さんにそこまでは聞いてないみたいな、あははは」

 

 水岡さんがどんどん赤くなる。

 

「ええいやけよ!希更よ、キ・サ・ラ!!あんたのこと真治って呼ぶから希更って呼びなさい」

 

「えっ恥ずかしいし、告白もしてないし、されてないしオッケイもしてないし」

 

「あーも!!お義姉ちゃんになりたいって言ったでしょ!!分かりなさいよ!!」

 

「それなら付き合ってなくても良いのかなぁ?」

 

「我は不死身なり!!お姉ちゃんなど不要!!お兄ちゃんは我らのみで十分だ!!」

 

「てめーらは血も繋がってないし家族には成れんだろうが!!お姉ちゃんじゃないお義姉ちゃんなの!!」

 

 水岡さんが復活した熊尾龍太にハイキックを打ち込む。


 そんなところに足上げたら制服はスカートだから熊尾龍太にパンツ見えるよ?あと水岡さんも血も繋がってないし、家族には成れないよね?恐いから言わないけど。

 

 こうして僕のクラスは、お姉ちゃんになり隊と、彼氏になり隊と、お友達になって百合百合する隊と、お兄ちゃんになり隊の派閥が四つ巴の争いに発展したのだった。

 

 僕のクラスは変なやつばかりらしい。どうしてこうなった!?

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