第32話

裏の路地で、変な道を曲がりくねって。


「よく覚えているね」


「ずっと、夢に出てきて。毎日のように、姉が助けてって言ってました。なのに、夢だと思ったし見たくないし、忘れたいのに。忘れられないくらい脳裏に焼き付いていて。姉は逃げようとしてもつかまって、何度もこの道を通りました」


薄暗いお店で、姉はお客を待っていた。こんなの見たくなくて暴れて大騒ぎして目が覚めて。また寝ると同じ夢を見る。苦しかった。なるべく寝ないようにして、いつも以上に仕事をしたら夢をあまり見なくなった。


「…え」


目的の場所なはずなのに。


「店はなくなったみたいだな」


空き地になってる。そんな。


「じゃあ、…姉はどこに?」


「さて」


捕まってしまったかも。わからない。


「俺が…俺のせいだ。助けてって言ってたのに」


「心配するな。雪見はまだ自分がうまく扱えてない。だから、余計な情報も入る。その扱いができるようになると、夢は安定してくるだろう。だからこそ、日々鍛錬をしなさい」


「…はい」


はぁ。仕事も休んだのに、なんの収穫もない。


「住職、俺は本当に跡取りになれますか?」


「なれる」


「え、そんなはっきりとわかるんですか?」

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