第28話

「住職、燃えました」


「うん。払えたみたいだな」


布団はチリになった。最初、火はつかなかったのに。


「隼人は、倒れてますけど大丈夫ですか?」


河原に降りる前でよかった。ここは石ころだらけだし。


「あぁ。彼は負のエネルギーを集めしてしまっていたんだな。もう大丈夫」


「店にいるあれが隼人に影響したんですか?」


「あれは、害はない。勝手に成仏する。彼は辛さを誰にも言えなかったんだ。ため込んだエネルギーは、この布団によってさらに増幅された」


「俺の布団にはそれはなかった?」


「そう」


「隼人は、もう死のうとしない?」


「さぁ。雪見が守ってあげなさい」


「…はい」


布団の灰を川に流す。隼人のこと、もっと知っていたらよかった。深く聞いたらいけないかと思ってた。


「あ!目が覚めた!」


「は…なに、雪見?ここどこだよ」


自分で起き上がった。元気そうだ。


「川」


「なんで?」


「気分転換だし」


「いや、お前なにその変な服」


「そんなのいいから。隼人、これからも友達でいてくれる?」


「気持ち悪ぃこと言うな。なんなんだよ」


記憶が抜けているようだ。


「隼人って、彼女いたんだ?」


「…は?それ昔。騙されてたけど」


「でもさぁ、付き合ってたとか大人じゃん。俺なんてさぁ、女と付き合ったこともないし」


「まじかよ!雪見モテるくせに」


「きもいんだって」


「はー?お前どんだけ美人なんだよ!ってな」


夢の話なんて誰も信じてくれなかったのに。隼人は信じた。みんなには牢屋から出たい言い訳だろって言われてたのに。


「をい、なにすんだ」


「抱きついた」


「いや、まじきもいことすんな!離れろ。うわ、てめー筋肉ついてんじゃん」


「隼人と捕まってよかった」


「あー?よかねーわ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る