第9話

恥をかかせるな。私の息子らしくしろ。人と同じことをしろ。そんなことばかり言われていた。

俺は特になにもしてないのに、責められることが多い。


「雪見、ぼーっとしてんぞ」


「あ。隼人、お前借金まみれとか言いふらしただろ」


オーダーが来るまで立って待ってる。特にすることない。


「いや?」


「俺話してないのに」


「オーナーに兄貴がチクったんだろ?」


えーもう。ひどい。


「あ、客だ。雪見行け」


「いらっしゃいませ、女の子は誰にしますか?」


…あ。これは人じゃない。まずった。


「おい雪見、どこ見て言ってんだよ!…すみません」


「君は、新人かな?」


あ、今度は人間だ。丸坊主?和服?


「はい」


じーっと見つめられた。


「あ。女の子は誰にしますか?」


「君のおすすめの女の子は?」


「あの、俺のおすすめはわからなくて…店のおすすめなら…」


「おい、変なこと言うな!すみません、天野様こちらへどうぞ」


隼人から頭ぶたれたんだけど。あ、この人お得意様か。そーか、そういえばお坊さんの人はお得意様だからと言われてたのに。


「君、飲み物を持ってきてくれないかな。ウーロンハイ」


「は、はい!」


指定された飲み物をお持ちすることに。気分を害してないといいな。


「お待たせしました」


「ありがとう。君はなかなかいい子だな」


「この子、親に捨てられて借金まみれなんですって。健気に働いてんのよ?」


女の子をはべらかしてるお坊さん。ありなんだなぁ。


「ほう?」


お坊さんの視線が熱い。こんなキャバクラに堂々と来ちゃうお坊さんなんだなぁ。

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