第19話 告白の先

「ふっ・・ん・・」

静まりかえった部屋に楓の吐息だけが響く。

角度を変えて何度も唇を重ね、ふとロイドの舌が楓の唇を舐める。

おずおずと口を開ける楓の中に、ロイドは容赦なく舌をねじ込む。

そして、奥に逃げる楓の舌を絡め取り愛撫する。

ゆっくりと唇を離し楓を見つめると、恍惚に満ちた楓の顔がロイドを更に駆り立てるが、ロイドはぎゅっと楓を抱きしめた。

「楓、わかるか?」

そう言いながら、楓の体に自身の硬くなったものを押し当てる。

それを感じとった楓は顔を赤らめる。

「楓がどんな姿でもこうなるんだ。俺はいつでも楓に欲情している。愛しい人が側にいるんだ。我慢できるはずがない」

「ロイド・・・」

真っ直ぐに見つめるロイドの目を見て、楓は嬉しさに涙する。

そして、ロイドの首に腕を回し、楓からキスをした。

何度か啄む様なキスを繰り返し、ロイドは体を引き離す。

「その、我慢できないが、楓の気持ちもあるし、無理に進めるつもりはないから・・ただ、初夜だけは覚悟して欲しい」

「うん・・・。早く僕もロイドと結ばれたい」

楓の言葉にロイドから自然と笑みが溢れる。

ロイドは楓にローブを着せ、腕に抱きながら布団を引き上げ、楓にかける。

すると、モジモジと顔を赤らめる楓。

「どうした?」

「あの・・その・・それはどうするの?」

どうやらローブから見えるロイドのものが、気になる様子だった。

その様子にふっと笑みが溢れ、ロイドは楓のおでこにキスをする。

「寝てればその内治るだろう」

「あの・・僕ね、その・・・もしかしたらって思って、ここに来る前に男同士の仕方を調べてきたんだ。だから、その・・大丈夫だよ」

楓の一言に固まるロイド。しばらく沈黙が流れた後、深いため息をこぼす。

「楓、前にも言ったが俺を煽らないでくれ」

「そんなつもりは・・・」

「今すぐにでも抱きたいが、初夜まで楽しみは取っておく。今日は楓も疲れているだろう?」

「でも・・・」

心配そうに見つめる楓の髪を撫で、軽くキスをして抱きしめる。

「本当に大丈夫だ。その変わり初夜は本当に覚悟しておけ」

ロイドの言葉に楓は茹蛸みたいに赤くなり、小さく頷いた。



翌日、ロイドは山の様に積んである書類に目を通しながら、ふっと昨日の事を思い出していた。

湯浴みを介助しているメイドから傷の事は聞いていたが、あれほどの傷があるとは思わなかった。楓は同じ部屋を使っていても、目の前で着替えた事がなく、いつも別室に服を持って行き、そこで着替えていた。

最初は恥ずかしいのかと思っていたが、あれだけの傷だ。余程気にしていただろう・・・。あれほどの傷が残ったままと言う事は、きっとその都度十分な手当もされてなかったはずだ。

特にあの日の傷、あんなに濃く残っていたとは・・・あの日の事が脳裏に浮かぶ。

赤く染まった服、血の気のない楓の顔、途切れ途切れのか細い声、大丈夫だと笑う痛ましい笑み、何もできず叫ぶことしか出来なかった時間・・・どれもが鮮明に思い出され自然と拳に力が入る。そして強く楓を想う。

全部癒す事はできないだろう。だが、痛みを覆い尽くして消してしまう事はできるはず。これからもっと楓を慈しもう。恥ずかしがる事なく、真っ直ぐに、そしてずっと側に寄り添おう。楓・・・俺はこんなにも楓を愛している・・・

ロイドは左手に光るリングにキスをする。求婚のあと、楓にリングは2人で付けるものだと教わり、急遽仕上げた物だ。

楓の国では紅葉という葉があり、同じ種類で葉の形が違う物をカエデと呼んでいる。その葉がもしかしたら名前の由来かも知れないと、昔楓が話してくれた。

(オレンジと黄色が混ざった葉っぱで、とても綺麗なんだよ)

そう言って嬉しそうに話していた楓を思い出し、それに似た宝石を探しリングにつけると、満面の笑みで喜んでくれた。

(あの笑顔をずっと守ってやりたい・・)

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