第18話 準備と告白
2週間後だった婚約式を急遽取り止め、結婚式に切り替えると、それの準備でさらに城内は慌ただしくなった。
今日は結婚式の衣装合わせだ。
いくつか持ち寄った衣装に袖を通し、直し部分や装飾の付け足しなどを皇室専用の服飾担当と相談していた。
元々楓は、派手な装飾を好まず、ロイドの国に来て作った服も全て質素な物ばかりだった。
楓も男なのでドレスを着るわけではないから、装飾も控えめで仕上げる予定だ。
衣装が決まると、次は晩餐会の衣装決め・・と何度も服を着たり脱いだり・・・衣装が終わるとブーケだの身につける装飾品だので、終わる頃にはどっと疲れが押し寄せてきた。
部屋に戻り、汗をかいたからと早めに湯あみを済ませ、長椅子にもたれ掛かると急に睡魔がきてうとうとし始める。
(寝ちゃダメ。今日は、今日こそはロイドに話しなくちゃ・・・)
頭はそう思うのに、瞼が重くてたまらない。
心地よい感覚に楓は吸い込まれていった。
ギシ…
軋む音に気づき、ふっと目を開けるとロイドと目があった。
どうやら、ロイドにベットまで運んでもらったらしい。
「すまない。起こしたか?」
ベットに入りながらロイドが訪ねる。
楓は目を擦りながら、首を振りロイドを見つめる。
「ごめんね、寝ちゃって」
「かまわない。今日は疲れただろう。すまないな。勉学も忙しいのにあれこれと準備に駆り出してしまって」
「ううん。僕たちの結婚式だもん。多少無理してもやりたい」
「そうか」
楓の言葉にロイドは嬉しそうに微笑み、髪を撫でる。
「それにね、本当はロイドに話があって・・・」
そういうとゆっくりとベットから降りる。
「どうした?」
顔を赤めたり、暗くなったりする楓をロイドは心配そうに見つめる。
「あのね、あの・・・本当はもっと早く話すべきだったんだけど、タイミングがわからなくて・・・」
楓はモジモジとローブの紐をいじりながら、ボソボソと話し始めた。
「あのね、結婚したら、その、初夜があるでしょ?」
急な話に無言になるロイド。体を起こし座ると少し悲しそうに楓を見る。
「嫌なのか?」
「ち、違うよ!そうじゃなくてね、ロイドと一緒に寝るようになって、プロポーズもしてもらって、そう言う事も踏まえて気持ちを決めてたんだけどね、今日衣装に袖を通して実感したら、やっぱりちゃんと言わなきゃって思って」
「・・・・」
「あのね、ロイドも知ってるけど、僕、小さい頃はよく怪我してたでしょ?その傷がまだいくつか残ってるんだ。見ての通り、僕、ひ弱な体型でしょ?それなのに、傷まであったらロイドが嫌になるんじゃないかと思って・・・」
俯きながら話す楓に、ロイドはため息を吐く。
ロイドの吐いたため息に、楓の体がびくっと反応する。
「やっぱり、嫌だよね・・・」
「・・・楓、こっちにおいで」
ロイドの差し伸べる手に楓がそっと触れ、ベットの上に上がる。
「楓、俺はどんな楓でも好きだ」
「でも・・・」
「そんなに信じられないか?」
「・・・・」
「楓、今見せてくれないか?見たい・・・」
ロイドの言葉に真っ赤になるが、いつかは見せなくてはいけないからと意を決してローブの紐を解く。そして、ゆっくりと肩から外した。
明かりに照らされた楓の体には、幾つもの傷跡が残っていた。
そして、右の脇腹には一際大きな傷・・・あの日の傷だ・・
ロイドはそっと近寄り、傷に触れる。
そのまま楓の体を倒し、優しく傷の一つ一つにキスをする。
キスをされる度に楓の体はほんのり甘美に見舞われる。
腕から始まり、胸、太もも、足、余すとこなくキスの雨を降らす。
そして、最後に脇腹の大きな傷に触れる。
「楓、俺は引いたりなんかしない。でも、こんなに白くて綺麗な肌に傷があるのが許せない。何より守れなかった事が悔しい」
「ロイド・・・」
ロイドは大きな傷にキスをして、楓の顔を見つめる。
そして楓の唇にゆっくりとキスを落とす。
それは今までに様な軽いキスではなく、欲情交じりのキスだった。
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