オマケアフターその8 強制連行カラオケパフェ 後編

 会計時に『無理に連れ込んだのは自分たちだから奢る』と言われたのを丁重に断って、金を払い店を出た。

 流石に、年下に奢らせるのはなんかアレだしな。


 そして、親睦も深まった(アレで本当に深まったかは疑問だが)ということで、今度こそ相談とやらの為に場所を移すことになった。


 近所に学生が通いやすい感じのリーズナブルな喫茶店があるといって連れていかれたんだが、到着したのは個人経営であろうちょっとレトロな雰囲気がする店だ。

 レトロといっても古くさいわけじゃなくて、ちゃんとお洒落な感じに纏まっている。

 うん、良い店かもしれない。今度、華恋やエリカと来てもいいかもな。


「――で、何だ、これは?」

「加々美さんは食べたことないかしら? 俗に言う、パフェね。パルフェともいうわね」


 パフェは分かる。分かるが。


「デカくないか……?」

「店に入る前に聞いたでしょ~? 甘い物は好きですかー? って」


 確かに聞かれたし、まぁ好きだよと答えたけれども。

 バケツサイズのパフェ食うほどじゃねぇんだわ。


「いや~、一度これ挑戦してみたかったんだけどさぁ。流石に私らだけだときっついじゃん? でもにーちゃんなら男だし、いけるっしょ?」


 いけません。

 いや、頑張ればいけるかもしれないけど、なんでいきなりこんなことを頑張ることになっとんだ。


「制限時間もあるし、食べましょうか」

「そうだね~。時間切れになるとすっごくお金取られちゃうからね~」

「ヨシ! がんばろうな皆!」


 マジかよ。


「あ~、まー、頼んじまったもんはしゃーない。なんとか食うか」

「その前にー、写真とろ~?」

「お、いいな。ナイスアイディア加奈」

「じゃあ一度こっちの席に集りましょうか。加々美さん中心に集合ね」

「ちょっ!?」


 あんまり密着されると……困るんですけど!?

 エリカのせいで接触には多少慣れているとはいえ、囲むな!


 ――えらい気まずい思いをしつつ写真を撮られて、やっと食べ始まったわけだが。


「ん! 美味いな! けど量食べると、さ、寒くね? これ……」

「生クリームって、この量になるとちょっとした暴力よね」

「ん~。明日の体重怖いから、これくらいが限界かな~」


 全然ダメじゃねーか。


「よし! にーちゃん頑張って!」

「加々美先輩って凄く頼りになりますよね」

「カー君はとってもかっこいいって前から思ってました~」

「お前ら実は性格悪いだろう?」


 ちくしょうっ。なんでいきなり大食いチャレンジしないといけないんだ。


「あーもうっ。食えばいいんだろ食えば」


 これ、帰ったら飯食えるんだろうか?

 もし食えなかった場合、エリカに理由を何と言ったものかなぁ。




 カラン。と音がして、パフェ用のスプーンがバケツの中に転がった。


「く、食った。もう無理」

「お~!! 凄いぞにーちゃん! 流石男子だな!」

「頑張ったわね。偉いわ先輩。頭とか撫でましょうか?」

「じゃ~わたしはほっぺにチュってしてあげよっかー?」

「いらん。なんもするな」


 あ~……ちょっと気持ち悪い。

 でもまぁ、なんとか食べ終えたな。


「じゃ、次はゲーセンでも行く? あ、でも流石に暗くなっちゃうとまじぃかな?」

「ちょっと待て。食休みさせてくれ。じゃなくて、お前らいい加減に本題に入れよ本題に」


 なんでゲーセンに行く話しになってんだ。


「本題? って何だっけ? 時に、にーちゃんはゲームとか好きなん?」

「おぃこら」


 相談はどうした相談は!


「加々美さんにしたい相談というのは、私達に纏わる問題なんです。特に理恵のが深刻ね」

「そうだね~。そろそろちゃんと直視しないとだよね~」

「え? ウチなんかマズった? なんも知らないんだけど?」


 おぉ? ついに何の問題なのか分かるのか。何故か理恵は自覚がないらしいが。

 まぁ、理恵はそういうヤツなのもしれない。今日の短い時間の中でも多少この子らのキャラは分かってきた。


「その問題ってのは?」

「えぇ、実は私達……誰も、彼氏がいないのよ」


 ――――なぬ?


「特に理恵ちゃんは男ほしい! って最近よく言ってるしー。いつ変な男に捕まるか心配で心配で~」

「そこまで言ってなくね!? ただちょっと、金持ちで優しくてイケメンで遊んでくれる彼氏いたらいーな~ほしーな~、って言ってただけじゃん!?」


 あぁ、これは確かにちょっと心配ですねぇ。


 じゃなくて。


「おぃ、相談ってのは、まさか彼氏欲しいとかそういう類いの話なのか?」

「概ねそんな話~。カー君なら相談相手に適任だと思って~」

「なんで俺が!?」


 全く役に立たないと思うけどっ?

 っていうかそういう話題なら今すぐ帰りたいんだけど!?


「何しろ加々美さんはあのエリカと、そのお姉さんである華恋さんとも同棲なさっている強者でしょう? 並の男とは人生経験が違うはずだわ」

「確かになー。あの二人に気に入られてる男ってだけですげーよなぁ。なるほど、にーちゃんの話しを参考にすれば男選びもバッチリってことだな!?」


 俺の話は多分どこも参考にならないし、俺の人生経験は殆ど初対面のヤツらにできるもんではない。


 ただ、この子らのしたいことってようするに……。


「お前ら、実はただ単に恋バナ的なものがしたいだけなんじゃねーのか?」

「そうとも言うわね」

「男の子の遊び相手もほしかったんだよね~」


 つまり、ただ遊び相手に連れてこられただけじゃねーか!

 だったらとっと俺は帰らせて――。


「確かに! 結構今日楽しかったかも! なんか新鮮でっ」


 ――ぐっ……こうイイ顔で言われると、なんか文句も言いにくいなぁくそぅっ。


「そうなのよね。やっぱり男で先輩の加々美さんが居ると空気が変わるのは感じるわ」

「だよな~。男子いた方が盛り上がることもあるよな! ゲームとかもさ、最近はエリカもよくやってるらしいし、にーちゃんも一緒に皆でゲームとかもいいよねっ」

「あら、そっちにいくのー? 恋の話題は~?」

「やっぱり理恵には無理なんじゃないかしら?」

「そ、そんなことないし!? え~っと、ほら、にーちゃんはエリカと付き合ってたりすんの? てか、ぶっちゃけどれくらい進んでる?」

「話しの振り方が雑ね」

「最低だよね~」

「うるさいよ!?」


 じょ、女子が三人寄るとなんとかって聞いたことはあるが、ホントだなこれは。

 ついていけなくなってきた。


「あのなぁ。まずエリカと俺は恋人とかじゃないよ。あと俺に恋とかその辺の話題振っても無駄だ。全然分からんからアテにすんな」

「えぇえ!? まだ付き合ってないの!?」

「理恵より加々美さんの方が問題あったようね」

「カー君、実はチキン野郎だったりするー?」

「お前らなぁ……」


 いや、ある意味こういう奴らだからエリカと心底友達やれてるんだろうな。

 なんか実感できてきた。エリカ、友達は大切にするんだぞ。


「あ、分かった。にーちゃんの本命は華恋さんの方ってことか?」

「だとして、もしもエリカが振られたら前代未聞ね」

「姉妹の修羅場レースになってるのかもよー? 或いは両手に華ねらいとかー」


 そして俺もエリカの友達だからといって遠慮しない方がいい気がしてきた。

 もう収集つかなくなってきたし、なんとか帰るタイミングを見つけなければ。


 などと言ってる間に一時間以上経ってしまった。

 女子たちの会話に巻き込まれるの、マジで怖い。次は気をつけよう……。







「おはよ~。昨日はゴメンね、皆。今度はちゃんと予定確認しとくから」

「いや、いいよ。結構楽しかったから!」

「そうね。新鮮な楽しさがあってよかったわね」

「新鮮? なんの話し?」

「エリカちゃんこれこれ~」

「ん? なに? 写真――――って、誠おにーさん!? これ、まさか、えぇ!? ちょっとどういうこと!?」

「理恵ちゃんの恋を応援する為に~、カー君に来てもらった、みたいな~?」

「恋!? カー君!?」

「いや、ウチはまだ誰にも恋はしてねーからっ。でも、エリカと付き合ってないなら、確かに加々美のにーちゃんいいかもな。遊んでみたら結構好きだったわ」

「すっ――」

「エリカ、落着きなさい。今にも理恵の首絞めそうな手つきになってるわよ?」

「だ、だって、好きって! あたしは付き合ってないって!」

「カー君と付き合ってるの~?」

「ないけどぉ! てかカー君言うなっ」

「こんな事で動揺するくらいなら、加々美さんとイくところまでヤってしまえばいいじゃない」

「簡単に言わないでよ!? あの人落とすのどれだけ大変か皆が知らないだけだからっ」

「お、そこのところ聞いてみたい! 男落とすテクニック覚えたいし!」

「私も後学の為に聞いてみたいわね。興味あるわ」

「じゃあ、エリカちゃん……っていうかカー君のお家に集合して、お姉さんも含めて相談してみよっか~」

「あんた達、絶対面白がってるだけでしょ!?」

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