第312話 動揺

「すぐに曽清様をお呼びするのだ!

それと曹彰様、高順、趙雲、張遼に使者を出せ。」

夏侯覇はすぐに陳宮軍の主だった者達に連絡を入れる。


「先生がご病気だと!」

一番最初に報せを聞いたのは曹彰だった。

「お兄様、今私達は遊軍となっております、すぐに陳宮様と合流して御身をお守りに参りましょう。

趙雲、高順に曹彰軍が護衛に入る事を報せるのです。」

「わかった、すぐに使者を出せ、俺達も動ける軍から先行しろ。」

曹憲の進言を曹彰は取り入れすぐに陳宮の下に軍を進める。

現在陳宮は薊と南皮の間に滞在しており、八千の兵がいるとは言え、仮に公孫康が全軍で陳宮を狙うと危険な場所であった。


「なっ!陳宮様が病だと!」

趙雲の下に入った報せに表情が曇る。

「陳宮の体調はどうなんだ?」

偶然来ていた甘寧も趙雲の言葉を聞くことになっていた。

「今すぐどうということは無いみたいだ、だが大事をとって進軍を止めたとある。」

「ったく陳宮は働き過ぎなんだよ、それで俺達はどうしろと?」

「命令に変わりは無い。」


「申し上げます、曹彰様より書状が届いております。」

「曹彰様から、すぐに持ってくるのだ。」

趙雲の下に届いた書状を読むと中には陳宮の護衛の為に南皮に来ず北に向かうと書かれてある。

「曹彰様が護衛をなされるなら大丈夫だろう。

甘寧、軍に動揺が出ないようにこの事は内密に頼む。」

「徐盛と臧覇はどうする?」

「それは軍議として二人を集め話そうと思う、その間甘寧は南皮への警戒を頼む。」

「わかった、任せておけ。」

「くれぐれも袁尚を北に向かわすな、陳宮様が動けぬ今何が起きるかわからない。油断だけはするなよ。」

「わかってる。」

甘寧は軍に戻り警戒を密にするのだった。


「あの馬鹿は自分の体を軽く見過ぎだ!」

高順は陳宮が倒れた事に怒りを露わにする、それは城を出る前に止めなかった自分への怒りでもあった。

「申しわけありません、私がもっと強くお引き止めするべきでした。」

「司馬懿、お前のせいじゃない、あいつは元々自分を軽く見過ぎている、くそっ!魏越は三千の兵で陳宮が滞在している文安辺りの治安維持に向かえ、成廉は七千で陳宮に合流しろ。」

「高順は一万で大丈夫か?」

「俺は大丈夫だ、州の把握は少し遅れるが陳宮の安全が最優先だ。」

「わかった、すぐに向かう。」

陳宮が倒れたことにより、陳宮軍全体に変化が見られるのであった。

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