第310話 北の片付け

「趙雲状況はどう?」

南皮周辺を落とした俺は再合流していた。

「陳宮様、袁尚に動きはございません。」

「動きが無い?周囲が落ちている報せは入るようにしているよね?」

「はい、御命令通り、報せは入っております。」

「思いのほか我慢強いのか?」

「成す術が無いだけかと。」

「しかし、このまま籠城も出来ないはず、俺なら全軍で一戦挑むか、北に逃げるかすると思うが・・・」


「陳宮様、高順様が薊県を落としました。」

趙雲と話している最中報せが入る。


「先に落ちたか、これで行く道も無くなったはず、さてどうするか?」

追い詰められ、立て籠もっている者を相手にするのはこちらにも被害が出る、真正面からの攻城戦なんかはしたくは無いのだが、出てこない以上、打つ手は少ない。


「趙雲、暫く袁尚の相手は任せるよ。」

「陳宮様はどうなされるのですか?」

「北に向かい、高順と合流して公孫康の様子を確認してくる。

公孫康が状況の見える男なら曹操に降ってくるだろう。」

「わかりました、ですがお気をつけください。」

「わかってるよ、趙雲も南皮を頼んだよ、くれぐれも無理な戦はしないように。」

「はっ!」

俺は趙雲に南皮を任せて高順が落とした薊に向かう。


「高順、おつかれさま。

相変わらず見事な攻めだね。」

「のこのこ出てきた馬鹿を叩いただけだ、大した戦じゃ無い。」

「それをサラッとできるのが凄い所だよ。

さて、司馬懿、公孫康の様子はどうかな?」

「はい、公孫康からこちらに降りたいとの打診が来ております、条件としては領地の安堵を願い出ております。」

「ふむ、それなら幽州刺史として任命されるように朝廷に上奏しようか。」

「認めるだけでは無いのですか?」

「ついでだよ、それに正式に認められたということになるだろ?」

「それと幽州刺史だと今回落とした薊の辺りも公孫康の物になってしまいますが?」

「司馬懿、この辺りを治める苦労をくれてやれないかい?」

「・・・陳宮様まさか!」

「この辺りは匈奴や烏桓族との関係を保たなければならない難しい土地でもある、現在それなりにやっていて状況の見えている公孫康に任せるのは悪くないと思うんだ。」

「しかし、こちらには袁煕の妻、冒白の伝手で交渉出来るのでは?」

「短期間なら良いと思うが袁煕の妻なんて少々遠いだろ?

それに袁煕には南皮を任せようと思っている、幽州の公孫康、南皮の袁煕、それと烏桓族互いに牽制し合えば中央の厄介にはならないだろう。」


幽州を治めるようになる公孫康と烏桓族が仲良くする事は難しいだろう、それに加え、烏桓族と繋がりのある袁煕が南皮に入れば公孫康も容易く反旗を翻す事も出来ないと思われる。

そしてそれは袁煕にも言える、公孫康は幽州を広く治める事になる、その戦力を倒す為には南皮だけでは足りない互いに動きたくても動けない状況になる。


「まあ多大な褒美には違いないからね。

心苦しいのはみんなへの報酬が金銭だけになることかな?」

「それこそ問題ありません、こんな北の地に領地を貰ってものちのち大変になることが目に見えております。」

「まあね、それじゃ幽州刺史に奏上する事を公孫康に伝えてもらえる。」

「しかし、貰えない場合があるのでは?」

「たぶん大丈夫だよ、遠いとはいえ幽州に曹操の直接支配されていない勢力が残ることになるからね、公孫康に恩を売る意味でも朝廷は反対できないはずだ。」

「慧眼恐れ入ります。」

「司馬懿もわかっていただろ?

それよりさっさと片付けて帰ろう、この地は少し寒くて駄目だね。」

「陳宮様風邪をひかれぬようにお気をつけください。」

「わかっているよ。」

俺は高順、司馬懿と今後の事を少し話、早めに休む事にしたのだった。

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