第304話 出陣

「先生!お願いがあるんです!」

「曹彰来ると思ったよ。

何処を攻めたい?」

「わかっていたんですか!」

「一万の兵を預けたんだ、独立遊軍として動く事も可能だからね。」

「お見通しでしたか・・・

僕はこの楽成を攻めたいと思っています。」

「ふむ、なんでそこを選んだのかな?」

「南皮は僕の一万の兵では簡単に落とせません、ですが先生の本隊が南皮に迫れば袁尚は周囲から兵を集めるはずです。

楽成は大きな街ですが防備はそれほど堅く無く、兵を抜かれた状態なら落とすことも可能と考えました。」

「充分だ、ただ一つ付けさせてもらっていいかな?」

「先生、何か足りませんか!」

「そうじゃないよ、いいかいくれぐれも兵達に略奪させないようにしてほしいんだ。」

「略奪させないようにですか?」

「そうだ、楽成は大きな街だ、もしそこでの略奪を周囲が聞けば他の街も降伏しにくくなるだろう、それに曹操の後継者の君が略奪をすれば今後の国の運用にも関わる。

くれぐれも徹底させるように。」

「わかりました!」


「あと一つ間違いがあるとしたら袁尚は南皮に籠城出来ないかも知れないよ。」

「えっ?籠城しない?」

「南皮に籠もられたら面倒だからね。

まあ曹彰は楽成攻略に集中しなさい。

いいかい、失敗してもいいけど絶対に死なないように、負けたとしても命があれば再起出来るからね。」

「はい!」

曹彰は元気よく帰っていく。


「さて高順、司馬懿作戦を話し合おうか。」

「陳宮様もお人が悪いですね、狙いは南皮ではないでしょう。」

「南皮も落とす事に違いは無いよ。」

「曹彰様は勘違いなされていましたよ。」

「正攻法を覚えるのは大事だからね。

今は仲間と色々考えて軍を動かす事を学ぶべきかな。」

「では、手筈通り、高順殿の本隊は初手で幽州の薊県を落とさせていただきます。」

「南皮から出てきた軍を趙雲と甘寧に迎撃してもらう、夏侯覇と俺は遊軍として二人の後詰めに入る。

高順、司馬懿、気をつけて頼むぞ。」

「了解だ、袁熙達はどうする?」

「南皮方面に居てもらう、そちらの方が目を欺けるだろう。」

「わかった、ならば私達は先に出る。」

「頼んだ。」

高順達は密かに出陣していく。


「これより南皮にいる袁尚を討つ!」

翌日、高順の旗を靡かせ俺は意気揚々と出陣する、目指すは南皮だと喧伝しながら進軍を開始するのだった。

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