第299話 張遼と高順

「張遼、あの馬鹿の首は繋がっているか?」

領地に戻った張遼は高順と酒を呑みながら、陳宮の話をしていた。

「まあ大丈夫だろ。」

「まったくアイツは自分の立場を考えていない、帰ったら一発殴らないと気がすまん。」

「それは自由にすればいい、多少痛い目を見たほうがあのポンコツにはいい薬だろう。」

張遼は落ち着いた様子で酒を呑む。


「張遼その様子だと、何か安全に配慮しているのだろう?俺にも教えろ。」

「大した事はない、ただ陳宮が男に襲われる前に女に襲われるだけだ。」

「あーなるほど、孫香に喰わせる気だな。」

張遼の画策が高順にもわかる、同盟関係であり、一族ともなれば早々手出しをされるものでもない。

まして孫家には主家を重んじる家臣が多くいるのだ、下手に護衛を増やすより賢明な策だろう。


「ふっ、据え膳喰わねばなんとやらだな・・・

まったくさっさと手を出しておけばいいものを。」

「情勢もあっただろ、俺達が曹操軍に残るか、独立するかの瀬戸際の時に来た娘だからな。」

「俺としては独立も面白かったと思うがな。」

「おいおい、怖いことを言うなよ。

今やお前は陳宮軍一の将だからな。お前の言葉で世間が動くと思え。」

「何を言う、陳宮軍一はお前だろ?

完全に別働隊を任されているじゃないか。」

「お前こそ何を言っている、瞬く間に新野、襄陽を落とした事は天下に知れ渡っている、そしてその軍を差配したのは天下無双の張遼だとな。」

「あれは陸遜の策が成功しただけだ、俺は全く何もしていない。

全く武人の出番を取っていくのが我軍の軍師の悪い所だな。」

張遼と高順は互いに酒を酌み交わし、冗談を交え大きく笑う。


「張遼、北のゴミ掃除を開始するぞ。

領内と曹家への警戒は任せる。」

「わかった、だが出陣は陳宮に言ってからにしろよ。」

「当然だな、あいつが戻り次第出陣しようか。」

高順と張遼は曹操陣営に対して油断することはない、互いに兵を温存することでいざという時に救援に迎えるよう備えをしていた。


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