第298話 密会

「太史慈、話がある。」

夜もふけているというのに周瑜が面会を求めて来たことに太史慈は驚いていた。

「周瑜がこの時間に急に来るとは、火急の要件か?」

「ああ、孫家の未来に関わる事だ。

お前にも思うところはあるかも知れんがまずは俺の話を聞いてくれ。」

「わかった、まずは聞くとしよう。」

太史慈も孫家を憂う気持ちは周瑜と同じであり、現状の後継者争いが良いものでないことも理解している、主張は違えど良案があるなら受け入れる気持ちは持っていた。


「なるほど・・・

天下に覇を唱えれないというところは受け入れたく無い気持ちはあるが・・・」

太史慈とて現状が見えない訳では無い、今の孫家が曹操を倒し天下を得る事が難しい事を理解していた。

「そうだ、ならばこそ陳宮殿の後見を得て中央で地位を得るのは良い案だと思うのだ。」

「つまり家を分けどちらかが中央に行くという話だな。」

「そうだ、どちらの家が大きくなるかはわからないが孫家が滅びる事は無くなるはずだ。」


「・・・となると私が行くべきだな。

私の力で国政を担う事は出来ない、だが一軍の指揮なら充分に手柄を立てる事は出来るだろう。

その手柄を持って孫紹様の立場を固める事にする。」

「太史慈、すまない。」

「いや、国を思えばこそ互いに主張するしか無かったのだ。

周瑜はよく考えたものだ。」

「これは陳宮殿の提案なのだ。

太史慈、陳宮殿と孫家の距離を縮めるようにしてくれないか?」

「わかっている、孫香様の事であろう。

これまで孫家は独立勢力だったから関係を持ちづらかったのだろうが、これから下に入ることになる以上、孫香様が嫁入りするのに問題は無くなったはずだ。」

「そうだ、何としても結びつきを強くする必要がある。」

周瑜と太史慈はキーマンとなる陳宮への結びつき強化を第一に検討し始めるのであった。


「クシュン!」

俺は何故かクシャミがでた。

「陳宮様、お風邪をめされたのではないですか?」

俺と一緒に弔問に戻ってきていた孫香が気遣いの声をかけてくる。

「いや、そんな事は無いとは思うが今日は暖かくして寝ようと思う。」

「そうですね、暖かくしてお休み・・・寝れるようにしておきます。」

「うん?何か違和感が・・・」

「大丈夫です、曹清さんが国におられるとはいえ私でも奥の事が出来ることを証明いたします。」

今回の弔問には流石に曹家である曹清、曹彰を連れてくることは出来ない。

この時大喬小喬は来ているものの身の回りの世話の多くは孫香が行っている事に俺は気付いていなかった。

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