第295話 劉備軍の寄生先

俺が弔問に向かおうとしていた頃、劉備は・・・


江夏から抜け出した、一路江陵を目指していた。

「諸葛亮、我らが江夏から離れれば孫家から守れぬのではないか?」

「劉備様、それは些末な問題にございます。

劉表様亡き今、江陵におられる劉琦殿が後継となり、その身を守る事こそ最重要にございます。」

「しかし、蔡瑁殿は劉琮殿を跡継ぎにすると言っていたではないか。」

「それこそ、劉表様の御意志に背く事にございます。

幸い蔡瑁殿は江夏から離れる事ができぬ身、これを機に我らが劉琦様を守り立て荊州の統治を行いましょう。」

「・・・諸葛亮、それは荊州を乗っ取るという話か?」

「劉性を持つ劉備様が劉琦殿の後見をするのに何の支障がございましょう。

それと劉備様の御息女、劉舞様と劉琦殿の婚姻を進言させていただきます。」

「劉舞を劉琦殿に娶らせるのか。」

「如何にも結びつきが強くなればなるほど安定することになるでしょう。」

「・・・悪くはない考えだ、劉琦殿には私からお勧めしよう。」

劉備が江陵に着くと劉琦は喜んで出迎える、一族と言われ、歴戦の勇士を抱える劉備が自分の元に来てくれた事は劉琦にとって望ましいものであった。


「劉備殿よくお越しくださった。

今後未熟な私を支えてもらいたい。」

「お任せあれ。」

劉琦が劉備の娘、劉舞を娶るまで時間はかからなかった、劉琦としても劉琮を後継者として認める訳にはいかない、劉備のチカラを借りて劉表の後を継ぐ、その為の政略結婚であった。


「関羽殿、よくぞ劉備様のご家族を守ってくだされた、これで劉備様の天下への道は開けました。」

諸葛亮は関羽と二人で酒を酌み交わす。

「諸葛亮殿のお陰で某は面目がたちました。

この御恩、生涯忘れぬと誓いましょう。」

「しかし、ご家族は残念な事に・・・」

「それは大丈夫、この関羽の妻であり、子である以上、如何なる時も覚悟を持って生きている。

まあその死に様ぐらいはどこかで聞きたい物ではあるが・・・」

「それならば、新野を調べるついでに情報を集めてみましょう。」

「かたじけない。」

関羽は諸葛亮に頭を下げる。

諸葛亮は一連の戦で関羽を従える事に成功していた。

これは居城の新野を失いこそすれ、諸葛亮にとって大きな利となる。


負けたとはいえ、陳宮が劉表を討ってくれたお陰で、劉表の領地を乗っ取りやすくなった。

曹操との最前線である新野を守るより、南荊州に拠点を置いた方が何かと都合がいい。


劉備の飛躍は始まろうとしていた。

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