第294話 道中・・・

「張遼、大丈夫だって。」

「まったくお前というやつは・・・」

俺達はやって来た曹仁に襄陽を任せ、一度許昌に寄った後、領地に戻るつもりだったのだがその道中、張遼から小言を貰い続けている。


「張遼仕方無いだろ。

まさか孫権殿が亡くなるとは思わなかったんだ、弔問には行くしか無いだろ?」

「そんなの使者を立てればいいだけだ。

まったくお前は自分の価値をわかっていないのか?」

「いやわかってるよ。

だからこそ俺が行くことで孫家と強固な関係を築けるんじゃないか。」

「まったく・・・

護衛に張郃、趙雲、甘寧と三千の兵をつける。」

張遼は小言を言いながらも護衛の手筈を考えてくれる。

「三千は多くないか?」

「少ないぐらいだ、まあ黄蓋殿もいるし安易に仕掛けてくる馬鹿はいないと思うが・・・」

「俺に仕掛けても孫家に何の利益も無いしな。」

「くれぐれも後継争いに首を突っ込むなよ。」

「やらないって、それに後継者は周瑜殿が後押しするかどうかだろ?

争いにはならないんじゃないか?」

「それがそうでも無いようなんだ、俺が放った密偵によると、孫策の遺児、孫紹を太史慈が推し、孫権の弟、孫匡を周瑜が推しているようなんだ。」

「あれ?あと一人、上に弟の・・・

確か孫翊がいなかった?

俺の予想は孫翊だったんだけど。」

「それがな運の悪い事に、最近部下に襲われ深手を負い明日も知れぬ身のようだ。

その為に孫翊を推そうとしていた張昭、朱治が宙に浮いてしまっていてな少々混乱を起こしている。」

孫翊は兄である孫策に似て覇気があり、孫権が継ぐ際にも名前が上がった男であった、その為、孫翊が継ぐなら大きな混乱は無いと見越していたのだが・・・


「だからお前は行くべきではない。」

張遼はあくまでも反対の様子だった。

「まあまあ、後継争いが起きているとはいえ、太史慈殿も周瑜殿も分別のある人物だ、弔問者の俺に害する事は無いだろう。」

「まったく、お前は危機管理がまったく出来ていない。」

「落ち着けって。」

道中、俺は張遼のお小言を聞かされ続けるのであった・・・

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